CVカテーテルキット

佐久医療センターで使用しているCVカテーテルキットは、COVIDIEN SMACプラス マイクロニードルタイプがメインです。22G穿刺針、ガイドワイヤーは外径・0.018インチ・長さ60cm・先端はアングルタイプ、カテーテル有効長20cmのものでシングル、ダブル、トリプルのフルキットをストックしています。

出典:Cardinal Health

このキットのイケてるところは

  1. 22Gの細径針で穿刺挿入が可能、しかも34mmという絶妙な長さの短針がセットされていること。
  2. 穿刺後そのままYサイトからガイドワイヤーを挿入できること。Yサイトは穿刺針とシリンジの間にセットされているので、ガイドワイヤー挿入時に固定しやすくブレが少ない。
  3. ガイドワイヤーは多条ねじり式(斜め巻)で、穿刺針にトラップされにくく切断されにくい。
  4. ダイレータは潤滑コーティングされていて水でぬらすと挿入抵抗が小さい。
  5. ダイレータに目盛りがふってあり、挿入長の目安になる。深く挿入しすぎることを防止する。

などです。

これらの特徴は安全・確実・迅速なCVCをサポートする上で非常に信頼性が高いと評価しています。東海大学麻酔科教授鈴木利保先生が開発・監修されました。

一方、イマイチかなーと思う点は、

  1. ガイドワイヤーが細くX線透視下でも見えにくい。また先端がアングルなので、先端が静脈の壁や細い枝に引っかかりやすい。この引っかかりで透視下でも修正に難渋する場合があるので、非透視下でこのガイドワイヤーの挿入操作はすすめられない。非透視下操作をせざるを得ない場合(ICU、ER)はかなり気を遣う。
  2. 同梱のドレープの大きさが全身を覆えるサイズでないため、場合によってはドレープを追加する必要がある。
  3. 穿刺針シャフトのベベル(切先)側にエコー輝度を増すためのディンプルが施してあるが、シャフトの輝度が不必要に増強してしまう。エコーガイド下穿刺では先端とシャフトの区別が重要なので、そのコントラストがつくような工夫にしてほしかった。
  4. 潤滑コーティング付きダイレータは、シングルでは皮膚のカットはたしかに不要だが、ダブル/トリプルではカテーテルが太い分、カットしないとやはり挿入は困難である。カットせずにダイレータを挿入しようとすると、無理な抵抗がかかり、ガイドワイヤーが折れ曲がるリスクが発生する。ガイドワイヤーが折れ曲がると血管損傷のリスクになり、カテーテル挿入不能の原因にもなる。
  5. カテーテルと皮膚とを縫合する固定具の装着が難しいので、慣れないと不完全な固定や外れやすい固定になる場合がある。その場合、事故抜去のリスクが高くなる。

などです。

当センターICUではこれに加えてSMACプラス クワッドルーメンを使用することがあります。このキットはガイドワイヤーが太いためマイクロニードルタイプではなく、穿刺針は18Gの有効長34mm金属針、18Gの有効長67mm金属針、18Gの有効長59mmのプラスティックカニューラ針の3本がセットされています。細径針ではありませんが通常は短針金属針にYサイトをつけて使用します。長針金属針は血管深度が深い場合または長軸像穿刺用ニードルガイドを使用する場合に選択します。細径金属針(22G,67mm)も同梱されていますが、これはガイドワイヤーが通過しないので、本穿刺には使用できません。試験穿刺用とのことです。

これら以外の日本で使用できるCVカテーテルメーカーは、Termo、Arrow、ニプロなどです。どのメーカーであってもスルー・ザ・カニュラキット(下図)は太く硬く長い穿刺針で穿刺するために合併症と合併症が発生した場合の重篤化のリスクが比較的高く、使用はすすめられません。「慣れているから」という理由だけでは、使用する正当性を主張するのは難しいでしょう。

出典:Cadinal Health

穿刺の安全性の面からは、カテーテルキットは「細径・短針」が組み込まれたものを選択するのが賢明だと自信を持って言えます!デバイス>穿刺針と持ち方の記事で詳述します。

PICC

PICC(Peripherally Inserted Central Catheter)は、当センターではArgyle PICCキットをメインに使用し、BARD グローションカテーテルもストックし使用しています。

Argyle PICCキットはセルジンガータイプ・シングルルーメン・4Fr・長さ45cm・ガイドワイヤー長さ100cm外径0.021インチのものを使用しています。

このPICCキットは耐キンク性が高く、セルジンガーキットで挿入する方式です。

シンプルな穿刺・挿入方式で使いやすいのですが、残念な点は、付属の22Gカニューラ針が短いので、上腕が太いと血管にとどかないことがあり、長い51mmサーフローを別に出して穿刺しなければならない場合があります。それとプラスチックの外套が硬く、外套留置の際に外套で血管を穿通してしまうことがしばしばあります。また、もともとカニューラ針はエコーの描出性が悪く、穿刺の確実性が低いので、個人的にはシングルのCVカテーテルキットを併用してそのなかの金属穿刺針で穿刺することをルーティーンとしています。コストアップになり手順としては煩雑になるので、おすすめとはいいにくいですが、穿刺針のエコー上の視認性が向上するので穿刺のストレスはだいぶ軽減されました。詳細は上腕_尺側皮静脈の記事をごらんください。このPICCキットはフルキットではないので、物品をバラでいろいろ出すよりもCVカテーテルのフルキットも併用した方がコスト面では案外安上がりになるかもしれません。

ガイドワイヤーは親水コーティングですが、濡らしてもすぐ乾いてとても滑りが悪く、カテーテルに通すときもギリギリのサイズなので、しばしばスタックしてしまいます。その場合はガイドワイヤーを入れたままカテーテルの接続部からロックシリンジで生食を少量、勢いよく流すと潤滑が回復します。

ドレープは上腕穿刺の場合、サイズが若干小さく手先が出てしまうこと、穴あきですがエコーガイドで穿刺するには若干穴が小さいことなどもイケていません。

こうした難点がいくつかありますが、製品自体の信頼性は高いと考えます。

PICCの最大の弱点である血栓形成の頻度が比較的高いことに関しては、抗血栓性のコーティング(SEC ONE COAT)を施したArgyle PICCキットⅡによって大きく改善する可能性があります。ただしこの導入にはコスト・ベネフィットの計算が必要になると思われます。

カテーテルの選択の仕方

カテーテルにはいくつか種類がありますが、その選択に際しては一定の基準を持っていることが必要です。

感染防御の面からは、カテーテル感染のチャンスをできるだけ低く抑えることが求められるので、カテーテルルーメン数は必要最小限にすることをこころがけます。使っていないルーメンがあると、そこは毎日ヘパリンロックか生食ロックすることになりますが、それでも輸液が常時流れていないことで血栓閉塞する確率は高くなります。血栓で閉塞したところは細菌感染の培地になり、カテーテル感染の原因となります。もし使わないルーメンが出てきたら少量の生食だけでも持続的に流しておく方が感染対策上はメリットがあるでしょう。

高カロリー輸液で使用した場合、ラインの内部それ自体はまさに細菌培地なので、より注意深く感染のチャンスを減らさなければなりません。すなわち側管にはなにも接続せず、高カロリー輸液は専用ルーメンで使用するべきです。側管から何かをつなげたりはずしたりすることが、細菌の侵入チャンスとなるからです。また、脂肪製剤はいっそう感染リスクが高いと考えられており、CVラインではなくできるだけ末梢静脈ラインから投与することがすすめられます。

こうした観点から、適応が高カロリー輸液のみ、あるいは化学療法のみといった場合はシングルルーメンCVカテーテルかシングルルーメンPICCでよいということになります。

ICUなどでマルチルーメンが必要な場合は、カテコラミン類で1ルーメン、鎮静鎮痛で1ルーメン、抗生剤などボーラス用・非持続点滴用のラインで1ルーメン、CVPを出すならそれも1ルーメンないしボーラス用と共用、その他混用したくない特殊な薬剤があればそれも専用ルートとする、などの条件をもとにルーメン数を検討するのが良いでしょう。

造影剤検査が可能な耐圧の仕様になっているカテーテルも市販されています。カテーテル自体の耐久性として高圧注入ができるというのはスペックとして間違いないと思いますが、生体にとってCVラインから急速注入する行為が安全かどうかという問題とは別次元です。というのも、CVカテーテルやPICCの先端位置は通常上大静脈内ですが、そこに急速にかなりの量の造影剤を一気に注入することで、血管の壁に対するダメージは発生しないのか、カテーテル先端が細い枝に迷入していたり、右房内にあった場合でも大丈夫なのか、という懸念があるからです。

造影CT検査では透視下で先端位置を確認しながら造影剤を注入するわけではなくブラインドでの注入になるので、過剰な懸念に見えてもこうしたリスクが除去できないのは事実です。心カテの左室造影を見たことがある方はわかると思いますが、造影剤注入時は相当勢いよく造影剤が注入され、カテーテル先端位置によってはまれに心筋内に注入されてしまう事故もあるくらいです。それくらい高圧なわけです。

高圧注入による事故の可能性について、製造メーカーの社員に質問したところ、「生体での安全性を実証した試験やデータはない」という答えでした。耐圧のCVカテーテル・PICC・CVポートは、末梢ルートを造影用に1本確保しなくてすむというだけのわずかなメリットに比べ、潜在的には深刻な事故のリスクがあると言わざるを得ません。

もし造影用の末梢ルートが取りにくいとしても、外頚静脈、内頚静脈、上腕尺側皮静脈などから短いカテーテルで一時的にでも確保することはできるはずなので、そのほうがまだリスクは少ないでしょう。疑わしい要素がある場合は、常に安全側に立つ習慣が必要です。