穿刺用エコー

2004年前後にコンパクトな携帯型穿刺用エコーが市販されだしたと記憶しています。それ以前は大型の汎用機を使ったり、携帯型ではあっても腹部用コンベックスプローブを使用して穿刺するとかで、なんとかエコーガイド下穿刺を実施していました。できることはできましたがだいぶ苦労しました。なので、“SonoSite iLook25”を手にしたときには、そのやりやすさに感動しました。その携帯性と小さいリニアプローブが、エコーガイド下穿刺にとてもマッチしたのです。画期的でした。これだったらエコーガイド下穿刺はCVCのゴールドスタンダードになると確信しました。iLook25はすでにメーカーの保守点検保証期限を終了していますが、当センターGICUではまだ現役で稼働しています。まだ十分に使用に堪えます。壊れたらそれまでですが。

その後現在まで多くの穿刺用エコーが市販されており、下図はその一部の例です。

 

穿刺用エコーは一般的に本体は小型で携帯性がよく、プローブは浅い部位の描出にすぐれたリニアプローブが搭載されます。画面が比較的小さいことが難点ですが、画面を術者に近づける機材配置を工夫したり、line outから別途モニター画面に出力し拡大することも機種によっては可能ですので大きい欠点でもないでしょう。

エコーガイド下穿刺はエコーのスキャン技術の比重が高いので、エコーの側の設定や調整も重要になります。

ゲインで全体の輝度を調整しますが、あまり輝度が高いと針先と組織とのコントラストがつかず、針先位置の特定に難渋するので、やや抑えめに調整する方がよいでしょう。一般的に筋組織や液体成分はhypo-echoic、脂肪識・筋膜・腱・線維はhyper-echoicに描出されますが、性差・個体差は大きいです。この差は特に鎖骨下_腋窩静脈穿刺の際の難易度と関係してきます。というのも筋肉量が多い中高年男性は筋層内では針先とのコントラストが大きいので針がよく見え、誘導と穿刺が比較的容易ですが、肥満者や中年以降の女性は脂肪識や乳腺が厚く、全体的にhyper-echoicであるため、針先がそのなかに紛れやすくなり、誘導するのが難しくなります。こうした条件も計算に入れて患者ごとにゲインを調整しましょう。

深度は、あまり深いところにフォーカスする必要はなく、浅すぎず深すぎず、標的静脈の後壁側や周辺構造が描出される深さに調整すればいいでしょう。

カラードプラで血流の有無、動静脈の区別、動静脈分枝の検索をすることがあるので使用法をあらかじめ調べておきましょう。

画面の左右とプローブの左右を一致させておくのも大切です。短軸像穿刺では自分の方から見た断面になるように左右を調整します。長軸像・斜位像穿刺では穿刺針がどちらの方から出てくることになるのかを見極めて左右を決定します。長軸像穿刺用ニードルガイドを使用した場合は、穿刺方向が限定されますので、画面のどちらから針が出るかあらかじめ把握しておくことが必要です。

その他、機種によってはシミュレータモードとバスキュラーモードが別に設定されているので、状況に応じて切り替えます。

プローブ

エコーガイド下穿刺では比較的浅い血管を穿刺することになるので、用いるプローブは基本的に浅い部位の描出が良好なリニアプローブになります。

形状やfoot print(接地面)の大きさは機種ごとに異なります。

プローブの持ちやすさ、操作のしやすさ、大きさなどの特徴は、①操作性(特に短軸像穿刺の場合)、②長軸像穿刺(特にニードルガイドを使用した場合)、に影響がでてきます。それを見越したうえで機種選択をしましょう。

リニアプローブでは目標静脈が描出しにくいまたはできない高度肥満・高度浮腫の特殊な患者さんの場合は、汎用エコーで腹部用コンベックスプローブを使用したほうが描出が相対的に良好になる場合があります。ただ深い血管を大きいプローブでエコーガイド下穿刺するのは、やれないことはないですが、手技の難易度は高くなります。この場合、穿刺針は長針を使うことになる点も難易度があがる要因になります。あくまでオプションですがいざとなれば実施できるようにしておきたい方法です。

配置

エコーの配置は、鎖骨下・腋窩静脈穿刺では、手元—穿刺部—エコー画面、のラインをなるべく一直線化して視線がぶれないようにするのがよいでしょう。一直線化できない場合、画面と穿刺部が遠くなったり、また画面と手元に角度がついて首を振ることになり手元の意識が乏しくなりがちです。これでいつの間にか深く穿刺してしまうなど穿刺の精度が低下する懸念がありますので注意してください。

内頚静脈穿刺では、画面と手元は一直線化しにくいですが患者の右肩付近に画面を置けば、術者側に近づけられるメリットはあります。できるだけ直線に近くなるように配置するということでよいでしょう。


穿刺中にはエコーケーブルの重みも馬鹿にならず、それでプローブ操作がぶれる場合もありやっかいです。どこかにフックでケーブルを吊るして重みをとるなどの工夫をするとよいでしょう。
穿刺の記録は、DVD/BDレコーダーなどを接続するかエコー内部のメモリを利用して動画を保存しておくと、処置記録、教育、レビュー、検証などさまざまに利用でき有用です。

エコーの選定

エコーを選定する際の基準は、「穿刺用エコーに求められる仕様・特徴は何か」という観点から考えることが重要です。画像から言うと、きれいにきめの細かい画像で、質的な評価・診断をする目的での、「エコーとしてできがいい」ことは、実のところ穿刺用エコーに最も要求される部分ではありません。血管内腔がきれいに無エコーで血管と周辺組織の境界がはっきりしていること、そしてより重要な点は穿刺針と組織とのコントラストがよくついていることです。

針先がよく描出できることは、エコーガイド下穿刺の中心テーマである「穿刺針先端の誘導」においては核心的な課題です。汎用機のフラッグシップモデルでも、組織の画像はきれいでも針先のエコーが組織に埋没し、かえって見えにくいものもあります。つまり最高グレードのエコーが最高にエコーガイド下穿刺に適しているわけではありません。穿刺用エコーでも率直に言って多くの機種でこうした勘違いをしている印象です。そんなエコーでは「こんなにきれいな画像なんだから穿刺もうまくいくはずだけどね」という上から目線をしばしば感じるのは私だけでしょうか。もう少しエンドユーザーの声に耳を傾けていただきたいものです。

もうひとつのポイントは、プローブの大きさです。頚部にしろ鎖骨下にしろ上腕にしろ、穿刺するスペースは特に東洋人では狭く、プローブが大きいとそれだけ穿刺の自由度が制限されてしまう傾向があります。つまりエコーガイドに穿刺はできても、必ずしも刺したい部位には刺せないということになるわけです。プローブが大きいと、ただでさえ刺入点が遠位にずれこみやすい長軸像穿刺がさらにずれていきます。ということでエコーガイド下穿刺ではできるだけ小さいプローブのほうが有利です。その点ホッケースティック型リニアプローブはよさそうですが、持ち手がななめなので、これはこれで持ち方・動かし方が難しく、万人向けとはいえず、またそれなりの習熟が必要になってきます。

さらに穿刺中は時に微妙な操作が要求されるので、画面がよく見えるようになるべく近づけたいという希望が術者にはあります。この点でエコー本体の作りが問題になります。ノートパソコンタイプで手前にキーボードが並んでいるタイプは、必然的にキーボードの分だけ画面が遠くなるので、エコーガイド下穿刺用としては不利です。

最初に紹介したエコーはすべてデモで使ってみましたが、実のところどれも一長一短で「最高におすすめできる1台」を選定することは難しいです。その機種ごとの特徴をおさえて、それが自施設にマッチしているかどうか、共用機器として使いやすいかどうか、という点で最後は決まってくるのではないでしょうか。

ちなみに、初期型穿刺用エコー“SonoSite iLook25”ですが、当センターGICUでは現役で使用していると書きましたが、更新してもらえなくて古い機械を仕方なく使っている、というわけではありません。最新機種と比べればモニター画像は小さく、画像は荒いという残念な点はたしかにありますが、血管と周辺組織の境界は明瞭に描出され、穿刺針のコントラストもよくつくので、実のところエコーガイド下穿刺はとてもやりやすいのです。初期型で荒削りですが、エコーガイド下穿刺手技が求めるひとつのかたちであると、個人的には名器認定しています。