CVCを実施する際、ランドマーク法であってもエコーガイドであっても内頚静脈は非常によく選択されます。内頚静脈は一般的に体表面から浅く血管径が太いため、アクセスが容易なのがその理由でしょう。だからといって内頚静脈が、「最も安全な穿刺血管」、なのでしょうか?だとしたら最も事故報告が少ないはずですが実際は?医療事故調の提言で分析されたように、エコーガイド下穿刺であっても頚部_内頚静脈穿刺で重大事故が発生しています。ほかにも事故の報道事例が多数あります。内頚静脈穿刺であれば安全というわけではなく、しかもランドマーク法だとよりリスクが高く、エコーガイド下だと安全、でもなかったのです。

では、どのような手法であれば内頚静脈穿刺は安全確実に実施できるのでしょうか。その手順を解説していきます。

体位、資機材の配置

まず体位や資機材の配置を整えます。安静仰臥位で頚部を穿刺側とは反対側にやや傾けます。傾けすぎると動静脈の重なりが大きくなる可能性があり、無理のない程度でよいでしょう。頭頚部の下には消毒や血液を受ける吸水性シートを敷きます。右内頚静脈穿刺の場合、術者は頭側に立ち、エコーは右腕付近に配置しましょう。

上半身からのCVCは、血管の拡張と空気塞栓予防目的で頭低位・骨盤高位のTrendelenburg体位が基本体位といわれています。ですが、鎮静されていない患者にとっては苦痛を伴う体位であること、体位が不安定になること、脳圧亢進時や心不全・肺うっ血患者では適用できないこと、嘔吐を誘発する懸念がある、この体位を取れるベッドが限定されていることなど、ネガティブ要素も無視できません。ope前や手術室でのCVC実施時以外ではなかなかこの体位で行うことは難しいと思います。

太い外套を挿入する方式であるスルー・ザ・カニュラキットによるCVCでは、穿刺時の空気塞栓のリスクが高く、虚脱血管の穿刺が難しかったので、この体位は重要だったでしょう。
しかしエコーガイド下穿刺では、画像上極端な血管虚脱でなければ無理に血管拡張を図る必要がないこと、セルジンガーキットで細い穿刺針を使用する手法では穿刺時の空気塞栓のリスクは大きくないと考えられることから、がんばってTrendelenburg体位にする意義は乏しいと考えられます。やるとしてもベッドの足側を上げる程度でよいと思います。現在でもこの体位が標準化されているのは、過去の手法の残滓に過ぎないのではないかと勘繰っております。

プレスキャン、穿刺点の決定

穿刺点付近をプレスキャンし、リスクの洗い出しと最適な穿刺点を決定します。

最適な穿刺点はどのように決定すればいいでしょうか。内頚静脈自体は顎下部から鎖骨上まで、蛇行や径の違いはみられるとしても、エコーでの描出は一貫して良好な場合が多いです。どこを穿刺してもよさそうですが・・・。となると、リスクの低減、管理のしやすさ、患者の快適度などの観点から穿刺点を検討することになります。リスク面でいえば、動脈や臓器との関連を検討します。

両側鎖骨下動脈は解剖学的には鎖骨よりもかなり頚部側にとび出たような走行となっています。しかも鎖骨下動静脈は並走しておらず、鎖骨下動脈は「鎖骨の下にはほとんど存在しない」という困惑する状況が正常解剖です。ここは内頚静脈穿刺をする際の非常に重要な知識であり、大きいピットフォールになりえるところです。つまり、「長針で浅い刺入角度で深く穿刺すると鎖骨下動脈を誤穿刺する可能性が高くなる」ということです。ここを誤穿刺したり、動脈カニュレーションすると、止血処置が非常に難しく、重大アクシデントになる可能性があり、非常におそろしい状況です。絶対に回避しなければなりません。

出典:解剖学カラ―アトラス 第3版 J.W.Rohen/横地千仭 共著 1994年 医学書院 p176,178

それのみならず、両側肺尖も実際は鎖骨よりかなり頚部側に張り出しているので深く穿刺すると気胸になります。合併症の頻度で、内頚静脈穿刺からの気胸の合併症が集計されるのは、このような理由からです。

穿刺点が体幹に近いということ、長針を使用するということでこれらの合併症、すなわち動脈穿刺⇒血種形成⇒気道閉塞や、血気胸を発生させる要因になります。頚部_内頚静脈穿刺は「イージー」にとらえがちですが、解剖学的には実はこうした特徴やリスクがあり、それを知らないとピットフォールに早変わりします。

その一方で、刺入点があまりに体幹から遠く、顎下部や耳朶に近すぎると、今度はカテーテルの固定やドレシングが難しくなってしまいます。これは看護・管理上の問題にもなり、また患者にとってただでさえ不快な頚部からのCVCが、さらに不快感を増強させることにつながります。

こうした観点から、最適な穿刺点とは、体格・体型にもよりますが、体幹より遠すぎず近すぎず、目安としては甲状軟骨のレベルを基準とすればよいのではないかと個人的には考えます。

ただし高度肥満や高度浮腫症例では刺入ポイントの選定や、カテーテル管理に難渋することがあり、頚部からのアプローチ自体、避けた方がよい場合があります。また、もともと可動性が高くしわやたるみが多い部位なので感染対策上は管理が難しい部位であることはたしかでしょう。

気管切開後では、気切孔と刺入点が近いこととカニューレホルダー(気切チューブの固定用バンド)が刺入点とかぶりやすいことから、観察や清潔維持が難しく、可能であれば頚部からのCVCは避けた方がよいでしょう。

穿刺側は左右のどちらを第一選択とすべきでしょうか。上大静脈まで直線的にカテーテル挿入ができ、カテーテル位置異常や迷入が起きにくいので右側が第一選択となります。左側は上大静脈まで曲がり角が2か所あり、カテーテル先端も上大静脈の壁に当たりやすく穿通するリスクあるので、できるだけ避けた方がいいでしょう。

内頚静脈は一般的に右より左の方が細いと言われ、穿刺の容易さという点からも右を第一選択とすべきでしょう。血管径は太く、ブラッドアクセスカテーテルの挿入や複数のカテーテル挿入(CVカテーテルとSwan-Ganzカテーテルなど)も可能です。

穿刺方向の確認

エコーガイド下_頚部_内頚静脈穿刺では穿刺方向に特別な注意が必要です。ランドマーク法だと総頚動脈誤穿刺の回避を目的として「同側乳頭の方向に穿刺針を向ける」ことを基本的な穿刺方向としていました。しかしエコーガイド下_頚部_内頚静脈穿刺は頚部に当てたエコービームの軸と穿刺針の軸を一致させて穿刺します。このふたつの軸が一致していないと、穿刺過程を明確に連続的に描出することが困難になるからです。これはランドマーク法とは真逆の穿刺方法、すなわち内側に向けて穿刺することになります。

その際注意することは、画面上の水平線は真の水平面ではなく体表面と一致しているということです。画面の水平面を真の水平面と思い込むと、穿刺針は静脈の長軸に対してななめに刺入されていくことになります。この画像と実体の関係が混乱すると、穿刺針が画面上の予想したところに現れず、目標静脈には正確に誘導できなくなります。

また、穿刺針を内側に向けて穿刺する手法に問題はないでしょうか。注意することとしてひとつには、椎骨動脈の誤穿刺があります。体格や年齢にもよりますが内頚静脈の後壁から椎骨動脈までの間隔は実は想像以上に近接しています。そして椎骨動脈はC6ないしC5から横突孔を上行しますが、椎間には誤穿刺を許す十分な間隙があります。ということは、内頚静脈の後壁を穿刺すると椎骨動脈を誤穿刺する可能性があるということであり、実際そうした事例の報告もいくつもあり珍しくはないのです。このリスクは、エコーガイド下_頚部_内頚静脈穿刺の隠れたリスクです。このリスク回避のためにできる簡単な方策は、下段に示すように、長針を使用しないことです。

椎骨動脈以外にもさまざまな動脈とその分枝、神経が内頚静脈の後壁側を近接して走っており、それらの誤穿刺からの合併症も報告されています。つまり、内頚静脈穿刺時の後壁穿刺は総じてなんらかの合併症のリスク要因になるということです。

CCA: common carotid artery; TT: thyrocervical trunk; SA: subclavian artery; ITA: internal thoracic artery; IA: inferior thyroid artery;CST: cervicoscapular trunk; SCA: superficial cervical artery; ACA: ascending cervical artery; VA: vertebral artery; PN: phrenic nerve;VN: vagus nerve; RLN: recurrent laryngeal nerve; ASM: anterior scalene muscle.

出典:Manik Chandra et al. Arterial vessels behind the right internal jugular vein with relevance to central venous catheterisation. Journal of the Intensive Care Society 2015, Vol. 16(3) 202–207

迷走神経は内頚静脈と総頚動脈の間を通常は走行しており、エコーではhypoechoicな円形の構造として描出され、一見、脈管のように見えます。ドプラを当ててみると血流がないので、神経だということがわかります。

この動静脈の間に迷走神経が走っているということは、この神経は実のところ誤穿刺しやすい神経であることを示しています。誤穿刺した場合どうなるかというと、はっきりとした報告は見当たらないのですが、強い迷走神経刺激が与えられることになるのは間違いありません。これにより様々な運動・知覚障害を来す可能性があるとともに、徐脈、全身の血管拡張、血圧低下など、循環への大きい影響が生じる可能性があります。場合によっては外傷における神経原性ショックのような病態になるのでは?と思います。CVCの合併症の報告でときどき「心停止」という記載があり、CVC実施中にいきなり心停止?と思っていましたが、この迷走神経の損傷が原因ではないかと睨んでいます。これは頚部_内頚静脈穿刺のかくれたピットフォールかもしれません。いずれにしても、この穿刺部位からのアプローチでは迷走神経を刺激しないことに越したことはなく、そのためにもエコーガイド下穿刺を標準手技とすべきです。

また、内頚静脈と総頚動脈が重なっている例も珍しくはなく、後壁穿刺となった場合はこれも動脈誤穿刺のリスクになります。

内頚静脈穿刺から動脈穿刺となった場合、血腫形成とその圧迫による神経損傷や気道閉塞、あるいは動静脈ろうなどの重篤な合併症に進展する可能性があります。エコーガイド下穿刺では、できるだけ前壁穿刺で成功させましょう。

動静脈の重なりによる、このリスクを極力低減する方策として、プローブの角度を変え、超音波ビームの軸と穿刺軸をずらすことで重なりを外す方法もあります。頚部ではプローブの当て方で動静脈の重なりもある程度変えられます。

下の動画:重なった右内頚静脈と右総頚動脈もプローブの当てる角度で重なりが軽減され、動脈誤穿刺のリスクも軽減される

内頚静脈穿刺は、ランドマーク法では後壁まで意図的に穿刺し、穿刺針を引きながら陰圧をかけて血液が吸引できたところでカニューラやガイドワイヤーを挿入するという手法(セルジンガー法の原法、貫通法)も容認されていましたが、このような動静脈の重なりがあるということは、それは実際には危険な方法だということです。ブラインド穿刺ではそのリスクについても「ブラインド」、つまり知らんぷりで済ませていましたが、エコーガイド下穿刺ではそういうリスクが目視できたならば、原理的にそのリスクを回避できるはずだとみなされるでしょう。そのため言い訳が効かず、前壁穿刺での成功がマストといわれるようになるに違いありません。エコーガイドで穿刺は安全にはなりますが、簡単になるわけではない、というわけです。

穿刺針の選択

穿刺針の選択は重要です。内頚静脈は一般的に体表面から浅いところを走行しており、肥満者でもそれほどは深くはなりません。短い穿刺針(COVIDIEN SMACプラスのマイクロニードルキットでは34mm,22G)で45°で穿刺するならば、体型によらず、届かないということはほとんど考えなくてよいでしょう。

一方、浅い角度で穿刺したいと考えると、短針では届かず長い穿刺針を選択する傾向になります。ここがピットフォールで、長針で誤って頚部を深く穿刺すれば椎骨動脈を含めた動脈誤穿刺、気胸のリスクが跳ね上がります。長針は使用することそれ自体がリスクであって、短針でほぼ成功する手技だとすると長針を選択する合理的な理由はありません。事故調提言でも長針を使用したことが事故の遠因と分析されているケースがあります。「デバイス」のカテゴリで解説しています。

また、外套式針(カニューラ針)は、きちんと外套が血管内に留置されればガイドワイヤーの確実な留置につながる利点はありますが、エコーでの描出性が低下すること、深い位置の血管に45°で外套を血管内押し込む操作が難しいことなどから、推奨はされませんが、実施できないというほどではありません。

CVカテーテルキットによっては、あるいはCVC類似処置の穿刺キット中に同梱の穿刺針は、「長く(6~7cm以上)、太い(18G以上)」針しかないということが普通にみられます。例えば透析用カテーテル、スワン・ガンツカテーテルのシースキットなど。これは、内頚静脈穿刺の基本テクニックやリスクについて深く検討していないメーカーの怠慢としかいいようがありませんが、オペレータにとっては重大なピットフォール、罠、地雷として機能します。「穿刺キットに入っているんだからそれを使えばいい」と単純に誘導されてしまったら、それは「カロンの渡し守」の乗船券かもしれません。長針使用で事故が起きた場合、「長針しかキットに入っていなかったから」という理由では、オペレータを擁護することは難しいと思われます。短針を別に用意して使用することは簡単であったはずだからです。またメーカーは製造物責任法(PL法)に問われる可能性もあることに気づかないといけません。

穿刺針は、ガイドワイヤーの種類(金属コイルか親水コーティングか)やサイズにマッチしたものでなければいけませんが、長い穿刺針しかキットに入っていなかったら、「短い針」を別に用意して内頚静脈を穿刺すること、これが内頚静脈穿刺では基本的に必要な要件です。金属コイルのガイドワイヤーではふつうの穿刺針、親水コーティングのガイドワイヤーならばカニューラ針を使用することになります。ただしいずれの場合も、ガイドワイヤーがスムーズに通ることを事前に確認する必要があります。

穿刺方法の選択

エコーガイド下の穿刺方法はどのように選択すればいいでしょうか。動静脈をしっかり区別し誤穿刺を防ぐという観点が内頚静脈穿刺ではより重要と考えられ、その点で基本的には短軸像穿刺でよいでしょう。るいそうが強く、非常に浅い場合はsweep scan法で、そうでもなければswing scan法あるいはsweep scan法のどちらでもよいでしょう。長軸像穿刺、斜位像穿刺はニードルガイドを使用するなら長針を選択しなければならないリスクがあること、刺入点が頭側にずれやすいことなどから、あえて選択する穿刺方法とはいえないでしょう。血管のanomalyがあるとか、よほど特殊な事情がないと選択肢にははいりません。

頚部_内頚静脈穿刺:動画

まとめると、エコーガイド下_頚部_内頚静脈穿刺は、短軸像swing scan法(またはsweep scan法)、右内頚静脈優先、短針金属針使用で実施することが標準的といえます。実際例の動画を提示します。

エコーガイド下短軸像swing scan法_右頚部_内頚静脈穿刺を、実際例で穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。

エコーはSonoSite S-Nerve、プローブはリニアプローブL25x/13-6、カテーテルキットはCOVIDIEN SMACプラス、穿刺針は短針金属針、エコープローブカバーはPullUp™ Probe Cover Kit 1をそれぞれ使用しています。

次に、エコーガイド下短軸像sweep scan法_右頚部_内頚静脈穿刺を、実際例で穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。穿刺針の持ち方はペンホルダー法で行っています。sweep scan法ではこの持ち方の方が安定すると思います。条件は同じです。

エコーガイド下_頚部_内頚静脈穿刺の長所と短所

長所


  • 体表面から比較的浅い位置にあり、血管径が太く、超音波上の描出が良好で、穿刺が迅速かつ容易に施行できる。
  • 上大静脈までほぼ直線化しており、カテーテルの迷入・位置異常が起きにくい。同様の理由でブラッドアクセスカテーテルの脱血がスムーズになる。
  • 近接部位から複数のカテーテルの挿入が可能。

短所


  • 総頚動脈や周囲の動脈と近接しており、動脈穿刺のリスクがある。
  • 深く穿刺すると椎骨動脈穿刺のリスクがある。
  • 動脈穿刺から血腫形成となり、神経損傷や致死的な気道狭窄に進展するリスクがある。
  • 高度肥満/浮腫症例では穿刺点の選定が困難になり管理も難しくなる。
  • 可動性が高くしわやたるみが多い部位なのでドレシングが困難で、またはがれやすいため感染リスクがやや高くなる。
  • 気管切開後には、気切孔と刺入点が近接し感染リスクが上昇する。また気切の固定バンドとカテーテル挿入部がかぶり、挿入部の観察や清潔維持が困難になりやすい。
  • 意識のある患者では、穿刺や管理中の不快感が比較的強い。