コンセプト

エコーガイド下穿刺は、2通りの短軸像穿刺でたいていの血管穿刺に適用できますが、不適当な場合もあります。極度な“るいそう” で後壁穿刺のリスクが高い場合、目標静脈の前面に血管分枝が多くかぶさっている場合、短軸像穿刺に習熟していない場合などです。その際、長軸像穿刺は代替手段になります。

長軸像穿刺では穿刺針全長が描出でき、先端を目標の静脈まで確実に誘導することができる手法のひとつです。ただし、フリーハンドでは狭いエコービームの中を体表面から静脈までズレずに正確に穿刺していくのは技術的にかなり難しいので、長軸像穿刺用ニードルガイドを使用することがすすめられます。

長軸像穿刺用ニードルガイドは専用のアタッチメント(ブラケット)と消耗品(ニードルガイド入りプローブカバー)が必要で、そのコストは無視できませんが、安全性・確実性などをトータルに考えて選択肢に入れることは可能でしょう。

問題は、長軸像穿刺用ニードルガイドは長針の穿刺針を使用する必要があり、穿刺成功後のガイドワイヤーの挿入時などに後壁穿刺となってしまうリスクが短針と比べ高くなることです。この点で、この手技は安易には勧められません。

また、プローブ接地面の長辺の分だけ、要するにプローブの大きさに比例して、刺入点が遠位方向にずれこむことになり、刺入点の設定にジレンマが発生する場面があります。要するに、「遠いところ、変なところからカテが入っている」感じになってしまうことがあるわけです。この刺入点の問題と長針のリスクの問題から、特に内頚静脈の場合は長軸像穿刺用ニードルガイドを使用して穿刺するのはかなり不具合が生じてしまうため、なおさらおすすめできません。

ニードルガイドを使わないフリーハンドの長軸像穿刺では長針ではなく短針を使用することができます。その点、リスクは軽減されます。ところがこの手法では、実際にやってみると、まっすぐに刺入してどう見てもエコービームの中を針が進んでいるはずなのに、画像上なぜかうまく穿刺針全長が描出されないということがしばしば発生します。これはごくわずかでもエコービームからずれると針は描出されないということを示しており、長軸像穿刺の難しさを表すとともにひとつのピットフォールになります。エコービームはそれぐらい薄く照射されているのです。

なお、長軸像穿刺を「平行法」と呼ぶ場合がありますが、エコービームと平行というよりもエコービームの中をずれないように刺入していくので、平行ということばはあまり適当ではないように思います。

この手法のコンセプトは下図のようになります。長軸像で描出し、穿刺針の進入ライン上に血管の分枝が存在していなければ安全に穿刺できると考えていいでしょう。つまり、うまく長軸像を描出できるかどうかが成功のカギになります。

手順

手順1


まず穿刺予定部位で短軸像を描出し、静脈の中心とガイドがずれないようにしながら90°回転させます。この際、片手だと不安定になり時間がかかるので、両手で回転させます。

短軸像で描出した際の直径と大体同じ径になるように長軸像を描出します。それが静脈のほぼ中心を通る最大径と考えられます。

長軸像では動静脈の区別がつきにくくなるので、動静脈の位置関係をあらかじめ把握しておきます。刺入経路に血管分枝などのリスクがないか確認します。

手順2


プローブがずれないようにしっかり体表面と固定します。

長軸像穿刺用ニードルガイドを使用する場合は長い穿刺針を使用し、ニードルガイドのスリットから刺入します。45°の刺入角度を基本としますが、そのイメージと実際に画面に現れる角度にずれが生じることがあります。具体的には刺入している角度よりも大きい角度で画面に現れることがしばしばあります。そのため、刺入角度を最初に正確に決めようとするのではなく、先端が画面に現れたところでいったん刺入を止め、刺入角度が適切かどうか判断し、イメージと異なるようであれば刺入角度を修正します。

先端が画面上になかなか現れなければ刺入角度が大きすぎて画面の枠から外れている場合が考えられますので修正します。ニードルガイドの天井に穿刺針が接するような経路で刺入するとイメージに近い刺入角度で画面から現れると思います。

フリーハンドで刺入する場合は、プローブと穿刺針の軸を一致させ、プローブの側面中心から刺入します。わずかなずれが穿刺針の描出不良の原因になりますので注意してください。

手順3

穿刺針全長が描出されるように刺入していきます。描出されなければ深く穿刺する前に抜いて、角度調整して再試行します。穿刺針先端で前壁が陥凹するのを確認します。

手順4

せっかくのエコーガイドであり、リスクをできるだけ低減したいという考えから、できるだけ前壁穿刺で成功させましょう。

静脈壁の穿刺は動脈と異なり難易度は高いです。というのも、静脈は内圧が低く壁が薄いため、細い穿刺針を使用したとしてもゆっくりじわじわ穿刺すると静脈は徐々にたわみ、いつの間にか後壁も一緒に穿刺してしまうということになりやすいからです。

前壁だけを穿刺するには、一気に素早く穿刺し、その時すぐにわずかにすぐ引き戻すようなモーションにするのがコツです。キツツキが木の幹をつつくようなイメージ、あるいはボクサーがジャブを繰り出すような動きです。

静脈壁を穿刺した「プツン」という手ごたえ、変形の回復、静脈腔内の先端の描出(bull’s eye or target sign)、シリンジ内への血液の吸引をもって穿刺成功の指標とします。

このあと、ガイドワイヤーの挿入を容易にする目的で針先が抜けていないか画像で監視しながら穿刺針を少し倒してもよいでしょう。

手順5

長軸像穿刺用ニードルガイドを使用し長針で穿刺成功後、①プローブを置いて②穿刺針を左手に持ち替えて固定し③ガイドワイヤーのスライダーをYサイトから挿入していく、という操作の流れになりますが、この過程で穿刺針の固定が甘いと意図せず深く刺入されやすくなることに注意します。

短針ならば深く針が進んでも後壁穿刺にはなりにくいのですが、長針だと容易に後壁穿刺から胸腔穿刺や動脈穿刺になります。

長針は穿刺成功後にリスクとピットフォールがあることを認識し、確実に固定してガイドワイヤーを挿入してください。またその分、短針よりも気を遣うことになります。

このように手技のバリエーションごとに一長一短があるので、すべての手技に精通し使い分けられるようになるのが理想といえます。

手順のまとめ

  1. 短軸像で目標静脈を描出した後、90°回転させて長軸像を描出する。
  2. 挿入経路に血管分枝がないことを確認する。
  3. プローブ短辺の中心から穿刺針を挿入する。長軸像穿刺用ニードルガイドを使用した場合はスリットから針を刺入する。
  4. 画面上に針が少し現れたところで、刺入角度がイメージ通りか確認し、必要なら角度調整して刺し直す。
  5. 先端からシャフトまでの穿刺針全長が、連続的に描出される。
  6. 先端を目標点に近づけるように誘導していく。
  7. 静脈前壁直上まで到達すれば一気に穿刺する。

動画

穿刺シミュレータによる長軸像_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺(長針と長軸像穿刺用ニードルガイド使用)を、穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。

エコーはSonoSite S-Nerve リニアプローブL25x/13-6、カテーテルキットはCOVIDIEN SMACプラス、穿刺針は長針金属針、穿刺シミュレータは京都科学 CVC穿刺挿入シミュレータ Ⅱ、穿刺パッドはCVCカテーテル挿入パッド、長軸像穿刺用ニードルガイドはCIVCO Needle Guide BracketとInfiniti Plus Needle Guideをそれぞれ使用しています。

なお、実際の患者さんで実施した動画は穿刺部位のカテゴリからご覧いただけます。

長所・短所・適応

長軸像穿刺の最大の利点は穿刺時のプローブ操作が不要ということです。ただし、確実な長軸像穿刺はフリーハンドでは技術的に難しく、長軸像穿刺用ニードルガイドを常用することになりますが、コストや解剖学的個体差が問題になりやすい欠点があります。

この手法でオールマイティにエコーガイド下穿刺を実施するというスタンスよりも、適応をしぼって実施するオプションの技法のひとつとして位置づける方がリーズナブルと思います。

長所

  • 穿刺時のプローブ操作が不要。これにより短軸像穿刺に習熟していない場合や穿刺時のプローブ操作が困難なるいそう患者で有用。
  • 長軸像穿刺用ニードルガイドを使用すれば穿刺過程の描出と血管穿刺の確実が高い。
  • 短軸像穿刺だと動静脈の分枝を回避しにくい場合、長軸像穿刺が代替案となる。
  • 穿刺針先端と後壁との距離がつかみやすく、血管径が細い場合の選択肢になる。

短所

  • 最大径の長軸像を描出すること自体が意外に難しい。
  • フリーハンドでは狭いエコービームの中を正確に刺入していくことが技術的に難しい。そのため多数回穿刺になりやすい。
  • 長軸像穿刺は長軸像穿刺用ニードルガイドの使用がすすめられるが、その場合、長針を使用しなければならず、機械的合併症のリスク(後壁穿刺、動脈穿刺、血気胸)が相対的に上昇すること、長針は先端が血管後壁に当たりやすく、ガイドワイヤー挿入困難になりやすいこと、ニードルガイド自体に高さがあり、そこにつかえて長針でも実際はあまり深く穿刺できないため、肥満/高度浮腫患者では針が届かず穿刺できない場合があること、ブラケット(高価)がディスポ部品と誤認され過って廃棄されやすいこと、専用のニードルガイドセット(比較的高価)が必要であること、ニードルガイドの装着がやや煩雑なこと、などが挙げられる。
  • 動静脈を同一画面で描出できないので、画像上、静脈を穿刺しているように見えても動脈穿刺となるリスクがある。
  • 穿刺に成功してもわずかな角度のずれでビームから針が外れてしまい、見えていないところで後壁穿刺になっても気づきにくい(下図)。

  • 刺入点がプローブの長さの分、遠位に寄るため、刺入点の選択やカテーテルの固定に支障が出る場合がある。

適応

  • 動静脈の分枝が目標静脈にかぶさり、短軸像穿刺では動脈穿刺などのリスクが高いとき。
  • 短軸での血管描出が不良の時(長軸像の方が明瞭化する)。
  • るいそうが強く、短軸像でのプローブ操作が困難なとき。