コンセプト

Quick look法穿刺よりも緊急性が高くない場合、比較的簡便な静的エコーガイド下穿刺の方法として、Marking法穿刺があります。通常、内頚静脈穿刺で用います。

これはエコーで観察後、体表面上にマジックペンなどで内頚静脈の位置をMarkingして、それを目印に穿刺をする一種のランドマーク法ともいえる手法です。ランドマークをひとつ増やした、というような意味になります。

静脈の平面的な位置情報は与えられますが深度の情報がなく穿刺するために、確実性は若干低く、後壁穿刺のリスクは上昇します。

穿刺時のエコー操作が不要で簡便であることとプローブカバーのコストが削減できることが利点ですが、ランドマーク法に習熟している必要があること、Marking法特有のピットフォールを認識していることが必要です。

ICUや手術室などの安全な環境(スタッフが多い、緊急資機材・モニター完備)で、強い肥満がない、静脈の虚脱がない、anomalyがない、動静脈の過度の重なりがない、完全に鎮静されているかまたは指示に確実に従う、術者が熟練者、などの条件がそろっていれば、比較的安全確実に実施でき、有用性は高いと思います。

手順

手順1

患者の頭頚部が動かないようにテープなどで固定します。Markingしたあと、穿刺までに頭頚部が動くと、Markingがずれて穿刺が失敗するリスクが高くなります。

手順2

プローブは体表面に対して垂直にあてます。
通常のプレスキャン同様、内頚静脈とその周囲を検索し大きなリスクがないことを確認します。

手順3

ゼリーをふいて静脈直上の体表面にマジックペンなどで刺入点のMarkingを行います。
Markingは線を引いてもいいですが、内頚静脈直上の体表面に点を2つ打つシンプルな方法でも刺入点のMarkingになります。二つの点を結んだライン上に内頚静脈が位置することになりますので、その仮想の線上のどこかを刺入点とします。

 

手順4

消毒、MBPを実施します。
Markingした二点を結んだ線上を試験穿刺し、試験穿刺で血液の吸引が得られれば本穿刺に移ります。COVIDIEN SMACプラス マイクロニードルタイプの22Gマイクロニードルであれば試験穿刺を省略してもよいでしょう。試験穿刺が23Gなどの金属針で本穿刺がサーフローなどのカニューラ針であった場合、穿刺抵抗に大きい差があるので、必ずしも同じ穿刺の手ごたえにはなりません。カニューラ針のほうが穿刺抵抗が大きい分、血管がたわみやすく、穿刺までの深度が深くなる傾向があります。「試験穿刺と違う。なかなか当たらない」と感じることが多いのですが、穿刺方向・穿刺角度が間違っているというわけでもないので、落ち着いて穿刺しましょう。
総頚動脈や胸鎖乳突筋などほかのランドマークを参考にしてもよいです。

 

ピットフォール

Marking法にはリアルタイムエコーガイドにはない特異的なピットフォールが存在します。それは簡単に言えば「Markingしたその下には必ず静脈があるはず」という思い込みです。具体的には下記のような状況です。

ピットフォール1

  1. 内頚静脈を描出し刺入点を決定する。
  2. 刺入点にMarkingする。
  3. プローブを置いて消毒などの穿刺準備に入る。
  4. 穿刺時はプローブ操作は行わないので、ついランドマーク法と同様の手法を踏襲し、同側乳頭に向けて穿刺してしまう。
  5. プローブを当てた方向と異なるため内頚静脈が穿刺できなくなる。
  • ランドマーク法とごっちゃになるとかえって穿刺が難しくなります。
  • Marking法はランドマーク法とは穿刺方向が異なり、最初にプローブを当てた方向に刺すことを再確認することで解決します。

ピットフォール2

  1. 内頚静脈を描出し刺入点を決定する。
  2. 刺入点にMarkingする。
  3. プローブを置いて消毒などの穿刺準備に入る。穿刺までの間に、皮膚のたるみが戻る、または体動がでる⇒Markingがずれる。
  4. Markingを信用し、ずれたMarkingから穿刺してしまう。
  5. 内頚静脈が穿刺できない。動脈誤穿刺などの合併症の原因になる。
  • 高齢者は特に皮膚がたるみやすく、Markingの信頼性はそれに比例して低下します。
  • Markingは体表上の印にすぎず、真下に静脈があることを保証するものではありません。あまり頼りすぎないことが肝心です。
  • 動脈触知や体表ランドマークを確認するなど、ランドマーク法の基本手技も併用することで解決します。ランドマークとMarkingでずれが大きい場合、Markingがずれたことのほうが確率が高いと考えましょう。
  • Markingは目安と考え、スムーズに穿刺できないときはそれにこだわらず、深みにはまらないよう、次の手、リアルタイム法などへ移ることを考えましょう。

Marking法の長所と短所

長所

  • 穿刺時のプローブ操作が不要。
  • エコープローブカバーのコストが削減できる。
  • 比較的簡便・迅速に実施できる。

短所

  • 特有のピットフォールを理解していないと失敗するリスクが高くなる。
  • Markingを過信して誤穿刺するリスクが生じる。
  • Markingからきちんと穿刺したにもかかわらず失敗した場合、原因の特定が困難でリカバリーが難しく、結局リアルタイム穿刺に変更するなどで時間のロスになる。