コンセプト

斜位像とは、短軸像と長軸像のほぼ中間の角度で目標静脈を楕円形に描出することを意味します。斜位像穿刺は、その楕円形に描出した目標静脈を、長軸像穿刺と同様にプローブの長軸方向から穿刺する手技です。

なぜわざわざこんなややこしい手法があるのでしょうか。つまりこの手法の存在意義はなんでしょうか。

現実的には短軸像穿刺2種(swing scan法sweep scan法)と長軸像穿刺ですべてのエコーガイド下穿刺をこなすことができます。しかしこれらの方法にもそれぞれ短所があります。その短所を補う手法として斜位像穿刺は位置付けられます。短軸像穿刺の、やや難しい穿刺時のプローブ操作をせず、長軸像穿刺より刺入点を内側に設定するということがその眼目です。コンセプトとしては下図のようになります。

ただし、この手法にすら短所があり、万能というわけではありません。手順のなかでそれを検討していきます。

手順

手順1

斜位像をいきなり描出することは困難です。まず穿刺予定部位で短軸像を描出します。

次に静脈の中心とガイドがずれないように両手で90°回転させ長軸像を描出します。これで短軸と長軸の角度が認識され、この間のだいたい中間が斜位だと体感できます。

ここからエコー画面を見ながら反時計回りにプローブを戻していきます。45°程度戻しますと目標静脈が楕円形(ななめ切り)に描出されます。

このとき、できるだけ動脈も同じ視野に入るように描出します。

なお、右鎖骨下_腋窩静脈穿刺の場合、画面の右側から穿刺針が現われるようにニードルガイドや画面をセットするほうがいいでしょう。

手順2

 

プローブがずれないようにしっかり固定します。穿刺経路に血管分枝などがないことを確認します。長軸像穿刺と同様にプローブ側面の中心から刺入します。

長軸像穿刺用ニードルガイドを使用する場合は長い穿刺針を使用しニードルガイドのスリットから刺入します。ニードルガイドの天井に穿刺針が接するような経路で刺入するとよいでしょう。

フリーハンドで刺入する場合は、プローブと穿刺針の軸を一致させ、プローブの側面中心から刺入します。

画面上に先端が確認できるところまで刺入します。なかなか現れなければ刺入角度が大きすぎる場合が考えられますので修正します。

手順3

穿刺針全長が描出されるように刺入していきます。先端が静脈前壁に接するとハート型に変形(indentation)します(ハートサイン)。

手順4

斜位像穿刺では、刺入方向の先に動脈がある場合が多く、後壁穿刺は即・動脈誤穿刺となるリスクが存在します。これは他の手法にはない斜位像穿刺特有のリスクといえます。そのため、静脈穿刺時はより注意が必要です。

静脈壁の穿刺は動脈と異なり難易度は高いです。というのも、静脈は内圧が低く壁が薄いため、細い穿刺針を使用したとしてもゆっくりじわじわ穿刺すると静脈は徐々にたわみ、いつの間にか後壁も一緒に穿刺してしまうということになりやすいからです。

前壁だけを穿刺するには、一気に素早く穿刺し、その時すぐにわずかにすぐ引き戻すようなモーションにするのがコツです。キツツキが木の幹をつつくようなイメージです。

静脈壁を穿刺した「プツン」という手ごたえ、変形の回復、静脈腔内の先端の描出(bull’s eye or target sign)、シリンジ内への血液の吸引をもって穿刺成功の指標とします。このあと、ガイドワイヤーの挿入を容易にする目的で針先が抜けていないか画像で監視しながら穿刺針を少し倒してもよいでしょう。

斜位像穿刺の刺入点は、長軸像穿刺の刺入点よりはやや内側下方となります。皮膚とカテーテルの固定は長軸像穿刺と比較し、肩関節と干渉しにくいため、カテーテルの固定も患者さんの負担もだいぶ楽になります。この刺入点の違いを生み出し、カテーテルの固定を患者にとってより快適なものにすることが、斜位像穿刺の眼目、存在意義となります。

自験例では短軸像穿刺が最も多く、次いでこの斜位像穿刺を多く選択しています。つまり相対的には長軸像穿刺よりもメリットを感じています。

手順5

長軸像穿刺用ニードルガイドを使用し長針で穿刺成功後、①プローブを置いて②穿刺針を左手に持ち替えて固定し③ガイドワイヤーのスライダーをYサイトから挿入していく、という操作の流れになりますが、この過程で穿刺針の固定が甘いと意図せず深く刺入されやすいことに注意します。

短針ならば深く針が進んでも後壁穿刺にはなりにくいのですが、長針だと容易に後壁穿刺から胸腔穿刺や動脈穿刺になります。

長針は穿刺成功後にリスクとピットフォールがあることを認識し、確実に固定してガイドワイヤーを挿入してください。またその分、短針よりも気を遣うことになります。

手順のまとめ

  1. 短軸像で目標静脈を描出した後、90°回転させて長軸像を描出する。
  2. 長軸像から45°程度もどして斜位像を描出する。
  3. プローブ短辺の中心、エコービームが照射されているところから穿刺針を挿入する。長軸像穿刺用ニードルガイドを使用した場合はスリットから針を刺入する。
  4. 画面上に針が少し現れたところで、刺入角度がイメージ通りか確認し、必要なら角度調整する。
  5. 先端からシャフトまでの穿刺針全長が、連続的に描出される。
  6. 先端を目標点に近づけるように誘導していく。
  7. 静脈前壁直上まで到達すれば一気に穿刺する。

動画

穿刺シミュレータを使用した斜位像_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺(長針と長軸像穿刺用ニードルガイド使用)を、穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。

エコーはSonoSite S-Nerve リニアプローブL25x/13-6、カテーテルキットはCOVIDIEN SMACプラス、穿刺針は長針金属針、穿刺シミュレータは京都科学 CVC穿刺挿入シミュレータ Ⅱ、穿刺パッドはCVCカテーテル挿入パッド、長軸穿刺用ニードルガイドはCIVCO Needle Guide BracketとInfiniti Plus Needle Guideをそれぞれ使用しています。

エコーガイド下CVC_斜位像_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺_穿刺シミュレータ

なお、実際の患者さんで実施した動画は穿刺部位のカテゴリからご覧いただけます。

長所と短所

長所


  • 短軸像穿刺の欠点である穿刺時のプローブ操作が不要。これにより短軸像穿刺に習熟していない場合や穿刺時のプローブ操作が困難なるいそう患者で有用。
  • 長軸像穿刺の欠点のひとつに、隣接する動脈が同一画面に描出できないことによる動脈誤穿刺のリスクがあるが、斜位像穿刺では動脈も同一画像視野に入れることで誤穿刺が回避しやすい。
  • 短軸像穿刺もしくは長軸像穿刺で、動静脈の分枝を回避しにくい場合の代替案となる。
  • 長軸像穿刺では刺入点がプローブの長辺の分だけ遠位にずれこむため、鎖骨下穿刺では肩関節に近くなり過ぎで固定が困難であったり関節可動域に干渉するケースがしばしばみられるが、斜位像穿刺ではやや体幹中心寄りに刺入点を設定できるので、こうした問題が起きにくい。
  • 鎖骨下_腋窩静脈穿刺で有用な場合がある。大腿_大腿静脈穿刺でも適用できる場合がある。
  • 鎖骨下からCVポートを留置する際に、長軸像穿刺だと刺入点が肩関節に近接し、鋭な角度でカテーテルとポートを接続することになり、カテーテルの折れ曲がりや劣化が気になるが、斜位像穿刺だとその角度が緩和される。

短所


  • 斜位像は通常見慣れない画像なので立体的位置関係がイメージしにくい。
  • 斜位像を描出することに習熟が必要。
  • 長軸像穿刺用ニードルガイドを使用した場合、長軸像穿刺と同様の短所が存在する、長針を使用することで後壁穿刺の合併症リスクが上昇する、ニードルガイドの丈が高いため深いところの穿刺が難しい、コストアップの要因となる、などの短所がある。
  • 穿刺方向に動脈が位置していることが多く、後壁穿刺が動脈誤穿刺のリスクとなるため慎重な刺入経路の検討や穿刺時の注意が必要。
  • ななめに血管に入るため、ガイドワイヤーが壁当たりしやすい。そのため透視下操作が強く推奨される。
  • 鎖骨下穿刺以外に有用性が乏しい。