コンセプト

ペースメーカー類(ペースメーカー、ICD<植え込み型除細動器>、CRT-P<両心室ペースメーカー>、CRT-D<両心室ペーシング機能付き埋め込み型除細動器>)の植え込み処置に対して、エコーガイドはどのように応用できるでしょうか。
ペースメーカー類は、通常、鎖骨下_鎖骨下静脈穿刺をしてリードを心臓まで挿入していきます。

穿刺挿入手技は、長いカニューラ針で穿刺針を使用し、ランドマーク法やX線透視下での胸郭外穿刺などで行われてきました。こうした手法のため、気胸などの合併症が発生するリスクを抱えているのが問題でした。

短針使用_エコーガイド下_鎖骨下_腋窩静脈穿刺ではそのリスクは十分低く抑えられるはずですが、実のところ、このペースメーカー類リードの穿刺挿入過程には特有の問題があって、その対応策を検討する必要があります。

ペースメーカー類の植え込み処置の特色

①通常、左鎖骨下穿刺が多い。
→シミュレータは右側穿刺用なので、左鎖骨下穿刺のシミュレータトレーニングができない。右側穿刺のシミュレータと実際の左鎖骨下穿刺とでは勝手が違うことに注意が必要。

②リードを2本入れることが多い。そのため親水コーティングのガイドワイヤーを先行して2本入れることになる。
→2回目の穿刺時は1本目のガイドワイヤーが障害となり、エコー操作と描出がしにくくなる。

③親水コーティングのガイドワイヤー挿入には、金属針は使用できず、カニュ-ラ針を使用することになる。
→金属針に親水コーティングのガイドワイヤーを通すと、針の先端、顎でガイドワイヤーが削れてしまう恐れがあるため禁忌である。そのためカニューラ針を使用せざるを得ないが、カニューラ針による穿刺の不利な点は、穿刺抵抗が大きい、外套部分はエコーでの描出が不良になる、またはアコースティックシャドウが強く出て、穿刺針の裏側が見えにくくなる、針を戻す動きをすると外套がずれやすいため短軸像穿刺ではjiggle操作が難しい、穿刺は成功しても外套を確実に送り込んで留置する操作が難しい、長い外套式針は血気胸のリスク要因となる、など非常に多い。そのためテクニック的には難易度が高くなる。それを回避するために金属針と金属コイルガイドワイヤーを使用することも検討できる。

④2本目のガイドワイヤーを挿入する際、1本目のガイドワイヤーを傷つけるおそれがある。
→2回目の刺入部は1回目と近接させる必要があり、1本目のガイドワイヤーを穿刺針で損傷する懸念が生じる。1回目と2回目で穿刺方法を変えることが有効と考えられる。

穿刺方法

こうした特色をふまえて、穿刺方法のアイデアをいくつか提示したいと思います。下のPDFの一覧表をご覧ください。

pacemaker implantation

FAQ

Q: 永久ペースメーカーが植え込まれている患者さんで、CVカテーテルや透析用カテーテルが必要になった時、どこからアプローチするのが最適でしょうか。

A: 永久ペースメーカーが植えこまれている場合、下記のようにいくつか注意しなければならないことがあり、穿刺挿入部位の選択には難渋することが予想されます。

  1. ペースメーカーが植え込まれている側の鎖骨下からのアプローチは原則禁忌。理由は①カテーテル挿入部に感染が生じ、それが近傍のペースメーカーのポケットに波及した場合、ペースメーカーの摘出などが必要になる。リードが摘除できなかった場合、持続的な血流感染から致命的になるおそれがある。②穿刺時にペースメーカーのリードを損傷するリスクがある。③ペースメーカー本体が障害となり、エコーガイド下穿刺が実際には困難になる、などである。
  2. カテーテル穿刺挿入の候補となるのは両側頚部、ペースメーカー植え込み部と反対側の鎖骨下、両上腕(PICC)となるが、ペースメーカーのリードが特にDDDなどで2本あると、カテーテルの追加により血管内腔がさらに狭小化し、血栓形成(→肺塞栓)、血管の狭小化・閉塞(→血流障害)、血管壁のダメージ(カテーテル先端・サイドホールと血管壁が近くなることによる障害→穿孔)などのリスクが高くなる。特にペースメーカーリードは左鎖骨下静脈→左腕頭静脈→上大静脈→心臓という経路で挿入されているが、左腕頭静脈は大動脈などで圧排され狭小化していることもあり(参照:カテーテル挿入)、前述の有害事象のリスクは高くなる。径が太い透析用カテーテルの場合はさらにリスクが上昇する。こうして左内頚静脈アプローチによるCVカテーテルと透析用カテーテルの挿入、左上腕からのPICCは、できれば避けたほうが良いということになる。
  3. こうして右内頚静脈、右鎖骨下、右上腕PICCが穿刺挿入の候補の上位に浮上することになるが、いずれにしても上大静脈の領域内ではペースメーカーリードとカテーテルとでかなり狭小化し血流障害のリスクが高くなる。透析用カテーテルではそのリスクがさらに上昇する。ガイドワイヤーの挿入時、特にJ tipのガイドワイヤーでは、ペースメーカーリードに絡んで脱落するなどの重大事故につながる懸念もある。PICCの長いガイドワイヤーが右心室まで挿入された場合もリードに障害を与える可能性がある。したがって透視下での穿刺挿入が原則として必須ということになる。
  4. 上半身からのアプローチは上記のようなリスクがあるため、大腿静脈アプローチも選択肢に上がってくる。大腿静脈からの穿刺挿入は血栓・感染リスクが相対的に高く、原則として選択すべきではないが、上記のようなリスクがある場合は検討せざるをえない。留置した場合、カテーテル管理には十分な感染対策を施す必要がある。オプションとして大腿_大腿静脈穿刺を検討してもよい。

このようなことをふまえ、個人としてはペースメーカー植え込み側(通常左鎖骨下)と反対側の右鎖骨下_腋窩静脈アプローチを第一選択と考え、そこに問題があれば別なサイトを検討するというスタンスです。