プローブの持ち方・当て方

短軸像穿刺で実施するエコーガイド下CVCは、エコープローブの操作技術の比重が大きい穿刺テクニックです。そこでまず最初にプローブの持ち方を解説します。すべての面で心・腹部エコーの走査法とは対照的になります。同じ感覚でいるとうまくいきませんので、ここもピットフォールのひとつといえるでしょう。

非利き手で持つ
エコーガイド下穿刺の大きな特色のひとつは、プローブを左手(非利き手)で持ってスキャンすることです。プレスキャンの段階から左手でプローブを持ってスキャンします。心エコーでも腹部エコーでも、通常は利き手でプローブ操作するのと対照的で、十分なトレーニングが必要です。

軽く当てる
穿刺目標の静脈が虚脱しないようにごく軽く体表面にプロ―ブを当ててスキャンする必要がありますが、そのためには小指を体表に当ててそれを支点にします。これをしないと意図せずプローブが大きく動いたり滑ったりして、穿刺精度が低下します。

強くプローブを押し付けると静脈が虚脱し、穿刺の難易度が上昇します。後壁穿刺のリスクも上昇します。強すぎると静脈が完全に見えなくなり、「目標の静脈が存在しない!」と誤認することになりますので注意しましょう。なんならプローブを少し浮かせるぐらいの気持ちでスキャンします。強く押しつけてナンボの、心・腹部エコーとは真逆の当て方になることを意識してください。

微妙で正確なスキャンをする
小指を体表に当てて支え、それを支点にしてスキャンすることを前提に、それ以外の指や手関節も複雑で微妙な力加減でプローブ操作します。このあたりにハードルを感じる方もいると思います。そんなときギターやバイオリンで左手がどれだけ複雑な動きをしているかを思い浮かべてください(笑)。

エコーゼリーは少量
プローブ操作の精度が落ちる原因はもうひとつ、エコーゼリーのつけすぎです。ぬるぬる不安定になるので、体表面側はもちろんのこと、プローブカバー内もゼリーは最小限に塗布するようにしてください。体表面側は歯磨きのペースト程度かそれ以下で十分です。ここも心・腹部エコー検査で体表面をゼリーでべたべたにするのと好対照です。

プローブカバーの適切な準備方法は「プローブカバーと長軸像穿刺用ニードルガイド」の記事も参考にしてください。

皮下気腫の部位は無理
エコーは空気があると描出不可能となってしまうため、皮下気腫の部位からのエコーガイド下穿刺は困難です。ごく少量の空気があるだけならば、強くプローブを押し付けて、空気を視野から排除しながら描出し穿刺することもできなくはありませんが、かなり難しくなり事故のリスクも増大します。穿刺挿入部位の再検討が必要です。下図のような皮下気腫があれば、右鎖骨下_腋窩静脈穿刺は実施できません。この皮下気腫の部位からは実施不能ということが、エコーガイド下穿刺の大きい弱点といえます。外傷症例ではこのような皮下気腫が広範囲に生じている場合もありますので、救急領域でのライン確保はランドマーク法の技術を継承していく必要があるでしょう。

次にプローブの動かし方をトレーニングします。エコーガイド下CVCはトリプルエコー、すなわちエコーは3回使いますが、そのすべての場面で使う動かし方を解説します。

swing scan

短軸像(輪切り像)で血管を描出し、体表上のある一点を支点に、プローブを扇状に動かす動きをswing scanと呼びます。funning、扇動走査とも表現されます。

目標血管を短軸・輪切り像で描出し、画面の中心(ガイド)と血管の中央を合わせます。その状態でswing scanしたときに目標血管の中央が左右にぶれないようにプローブを当てます。swingしたときに目標の血管が左右にぶれる場合は、プローブが血管に対して直角に当たっていない、ななめの断面になっていることを示しているので修正します。画像が安定してくるまで角度の微調整を何度も繰り返します。このswing scanは、手関節だけで動かすことができます。

ななめ画像でエコーガイド下短軸像穿刺を行うと、穿刺針を進めるにしたがって血管がブレるので、ターゲットをとらえにくくなり、時間がかかったり確実性が低下したりします。

短軸像穿刺swing scan法で穿刺する際の実際のswing角度は、体表面に対して垂直から反対側に倒した場合に、最大でも45°程度の範囲です。この方法では自分の手前側に倒す必要性はあまりありません。プレスキャンでも、この穿刺中のプローブの動きを念頭に置いて動かしてください。

鎖骨下_腋窩静脈穿刺の場合、るいそうがあると鎖骨がプローブにあたりやすく、swing scanがしにくいことがあります。しかしエコービームはプローブの接地面全体から照射されているわけではなく、中心線のから狭い幅(約1mm程度ときいています)で照射されているため、鎖骨の上にプローブが載った状態になって多少プローブが浮いていても実際はよくビームが入って腋窩静脈が描出されることが多いです。最初から「こんなにプローブが浮いてしまうから無理だな」とは考えず、とにかくまず当ててみましょう。

また、鎖骨下_腋窩静脈穿刺はできるだけ鎖骨に近い中枢側から穿刺挿入することを基本としていますので、プローブが鎖骨に乗っかるくらいで走査することも珍しくありません。とにかく、プローブを動かしても静脈がきちんと描出されるかどうかだけが問題です。

なお、鎖骨下でswingするときは、腋窩静脈が上腕の方向に沿ってゆるくカーブしているため、プローブを当てる角度もかなりななめになることに注意しましょう。

sweep scan

プローブを前後にすべらし、掃くように(sweep)動かすscan法をsweep scanと呼びます。プレスキャンでは動静脈の位置関係・走行、静脈径、体表からの深さ、後壁から胸郭までの距離など、穿刺に最適な部位を探索する場合に有用です。短軸像穿刺sweep scan法でも用いる動かし方です。

sweep scanのときも小指を体表面に当てて支えるようにします。強く押しつけず、軽く当てながらプローブを体表面上で平行に移動させていくのは意外に難しいscan法です。手関節だけでなく肘や肩の関節もわずかに動き、要するに腕の力も使うことになり、そのときの荷重で動きが粗大になりやすいのです。またゼリーが多すぎると滑りすぎるので注意してください。

sweepしたときに画面上の中心ないし穿刺ガイドが常に静脈の中心に位置しているように動かします。プロ―ブを血管の走行に沿って正確にトレースします。血管が左右にぶれた場合は、血管に対してななめにトレースしていることになるので、プローブの向き・角度・動かし方を修正し、安定するまで繰り返します。

長軸像

短軸像は血管のある一点の断面を描出しているにすぎず、血管内の血栓などがあっても気づきにくい場合がありますが、長軸像では血管内のある範囲を描出できるので、血管内の異常なエコーがわかりやすくなります。このため、プレスキャンでは短軸像と長軸像の2方向でつねに評価することが大切です。

ポストスキャンにおいても、細いガイドワイヤーは短軸像では描出しにくい反面、長軸像ではきれいに描出できますので、長軸像は必須です。

長軸像穿刺を選択する際には、血管の端っこではなく、中心の最大径を通るラインで確実に穿刺をしたいわけですが、そのためにはなおさら長軸像をきれいに出すことが条件になります。長軸像穿刺では長軸像をきちんと出すということが技術的な中心課題といっても過言ではありません。しかしこれが意外に難しいです。やってみればわかりますが、きれいな長軸像を短時間で出すのはけっこうトレーニングが必要です。

一方、長軸像の欠点は、長軸になってしまうと動静脈を同時に描出しにくくなり、また、動静脈の画像上の違いが意外に小さいので、その区別がつきにくくなることです。要するに、不完全な長軸像だと、動脈誤穿刺のリスクが高くなるのです。そのためプローブを長軸に構えていきなり長軸像を出そうとするのはNGです。まず短軸像をきちんと描出して、画面の中心を静脈の中心に一致させ、その中心を外さないようにゆっくりプローブを90°回転させて長軸像を出します。このやり方で動静脈の誤認は防止できます。またこのとき、片手で正確に短時間で回転させるのは難しいので、両手で回転させたほうがいいでしょう。

長軸像で血管の中心を通るラインで描出されているかどうかはどのように判断すればいいでしょうか。簡単です。最初に短軸像で描出した時の最大径を覚えておき、それと同程度の径が長軸像でも描出できれば、その長軸像の断面は中心を通っていることになります。血管のカーブや蛇行もありますので、これも完全な直線化にこだわる必要はありません。それに、非常に厳密に中心をとらえなければ長軸像穿刺をしてはならないということでもありません。短軸像での最大径とだいたい同じ幅で長軸像が描出でき、後壁を穿刺さえしなければよいわけです。ただし左右どちらかの端が先細りになっていたら血管をななめにスキャンしていることになりますのでできるだけ修正します。また、長軸像のままプローブを血管に沿って動かして、血管の前後や内部を観察し、問題やリスクがないかどうか検索します。

スキャン法:動画

実際例の動画でスキャン法を供覧します。エコーはSonoSite S-Nerve リニアプローブL25x/13-6です。

エコーガイド下CVC_プレスキャン_sweep scanとswing scan_右内頚静脈_実際例

 

エコーガイド下CVC_プレスキャン_sweep scanとswing scan_右腋窩静脈_実際例

 

エコーガイド下CVC_プレスキャン_長軸像_右腋窩静脈_実際例