穿刺針の特徴

CVCでの機械的合併症(気胸や動脈穿刺など)は、当然、穿刺時との関連が強いので、安全性・確実性と穿刺針の選択は密接な関係があります。当センターで使用しているCOVIDIEN SMACプラスのマイクロニードルタイプを例に取り、その特徴や用途を解説していきます。

短針(金属針)は22G,有効長34mmのスペックで、短いように思いますが普通の体格の東洋人の成人では、内頚静脈、腋窩静脈、大腿静脈、上腕尺側皮静脈などオールマイティに使用することができます。すなわち、確実性が高いです。そして、深く穿刺しようとしてもそもそも深く刺せないため、合併症のリスクが物理的に小さく安全性が高いといえます。自験例での検討を後述します。

一方、欠点は、金属針のため、ガイドワイヤーの挿入過程で穿刺針先端でガイドワイヤーがトラップされるリスクがあることと、短いために長軸像穿刺用ニードルガイドは使用できないことです。

長針(金属針)は22G,有効長67mmで、体表から目標静脈まで距離が長いとき(高度の肥満・浮腫など)と、長軸像穿刺用ニードルガイド使用時に適用します。深く誤穿刺した場合、動脈穿刺・気胸などの合併症が発生するリスクがこの長針自体にあるので、使用時は十分な注意が必要です。針の部分が長いため、穿刺に成功しガイドワイヤーを挿入する際の固定が甘いと、針先が深く進んでしまい、そのあとのトラブルになりやすいことにも注意が必要です。金属針のため、短針同様先端でガイドワイヤーがトラップされるリスクはあります。

同梱のカニューラ針(外套式針)の仕様は20G,有効長59mmで、カニューラ留置後に血液の吸引を確認することで、確実な血管内留置が確認でき、ガイドワイヤー挿入・操作の確実性が高くなる利点があります。ガイドワイヤーがトラップされるリスクもほとんどありません。ニードルガイドも使用できる長さです。

ただしカニューラ針の欠点としては、

  1. カニューラ部分のエコーの反射が弱いので、穿刺中は描出が不良になるか、ほぼ描出されないため、短軸像によるエコーガイド下穿刺が困難であること
  2. 針の背後が影になって見えなくなるAcoustic shadowも出やすいこと
  3. 内針とカニューラが穿刺中ずれやすいので、動き(jiggle)を与えながらの穿刺ができず、先端位置の特定が難しいこと
  4. カニュ-ラと内針の段差部分で穿刺抵抗が大きくなり、カニューラを血管内に留置する操作が難しいこと
  5. 末梢静脈の穿刺と異なり刺入角度が大きいため、そもそもカニューラの挿入操作が難しいこと
  6. カニューラ挿入過程でカニューラが静脈後壁に当たって折れ曲がり、ガイドワイヤーが通過しないトラブルが発生する場合があること
  7. カニューラが硬いためカニューラ挿入過程で後壁を穿通する場合があること
  8. 長針のため後壁穿刺や気胸などのリスクがあること

など、多くの欠点があり、エコーガイド下穿刺では推奨できない穿刺針です。これらはPICCキットのカニューラ針についてもいえます(⑧を除く)。

 

こうした特徴から、エコーガイド下穿刺で使用する穿刺針の第一選択は短針金属針でよさそうですが、本当にそれで大丈夫?短すぎて届かないということはない?34mm短針でも深く穿刺してしまうリスクはない?そんなご心配もあろうかと思います。そこで自験例を用いて以下のような検証を行いました。

短針を使用したエコーガイドによる腋窩静脈・鎖骨下穿刺の安全性の検討

目的

エコーガイド下に右鎖骨下_腋窩静脈穿刺CVCを行った場合の、体表面から胸腔までの距離をエコー画像と胸部X線CTを用いて測定し、穿刺針の長さとの関係を解剖学的に評価する。

条件

COVIDIEN マイクロニードルタイプのカテーテルキットに梱包されている短針金属は22G,34mmであり、45°で穿刺をした場合に穿刺できる最大深度は三角比から34÷√2=24.04(mm)である。

方法

2010年11月から2015年12月までに、血管造影室でエコーガイド下_短軸像_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺でCVCを待機的に実施した一般病棟の患者を対象とした。穿刺時に記録したエコー動画から、穿刺経路に沿って、右鎖骨下の体表面から右胸郭前面までの距離(A;赤線)を測定した。測定は穿刺直前の画像をポーズして行った。穿刺点は鎖骨になるべく近づけるように設定した。エコーはすべてSonoSite iLook25を使用し、録画機器はPanasonic DIGA DMR-BR580を使用した。測定のスケールはエコー画面のスケールを利用し、1mm単位で測定した。

同一患者の胸部X線CT画像から、穿刺部付近の右第一肋骨の厚み(B;黄線)を胸郭の厚みとみなして測定した。測定には画像参照ソフトのスケールを使用した

(A)と(B)を合計した距離(C)を「右鎖骨下の体表面から胸腔に達するまでの距離」とした。

除外基準

  • エコー画像が不明瞭で測定できない場合
  • 胸郭前面までエコー画像が記録されていない場合
  • 同一患者で胸部X線CTが撮影されていない場合
  • 複数回処置歴があっても、一人につき一回だけ測定し2回目以降は除外

結果

合計264人をエントリーし集計した。

人種・国籍 黄色人種(タイ人・モンゴル人各1名、ほかすべて日本人)
年齢 67.23±12.06(21-93) 平均±標準偏差(範囲)
男女比 159:105 (男性60.2%、女性39.8%)
BMI 20.44±4.00(12.5-42.8)平均±標準偏差(範囲)
適応(複数集計) 化学療法 149(54.2%)
経静脈栄養 94(34.2%)
末梢血管確保困難 28(10.2%)
循環作動薬投与 4(1.4%)
術者 筆者1名のみ
短針使用率 99.2%(262/264) ※長針使用2例、カニューラ針使用0例
穿刺成功率 100%
平均穿刺回数 1.04回(複数回穿刺;8例)
後壁穿刺率 0%
合併症発生率:0.38% 気胸:0
血胸:0
動脈穿刺:0
一過性の末梢神経障害(右手指のしびれ):1
カテーテル留置 成功率 99.6%(263/264)
※中枢側で血栓閉塞しガイドワイヤーが挿入不能だった例が1例
距離A 体表面から右胸郭前面までの距離 29.69±4.78(15-49)
距離B 胸部X線CTで測定した穿刺部肋骨の厚さ 9.19±2.57(4-20)
距離C(A+B) 体表面から胸腔までの距離 38.85±5.99(22-61)
※24mm以下→3人(1.1%)

平均(mm)±標準偏差(範囲)

 

考察

体表面から胸腔までの距離(距離C)の平均は38.85mmで、短針金属針の最大深度の約24mmよりもかなり深かった。胸腔まで到達し気胸を発生させる可能性がある24mm以下の患者は3名(1.1%)とごく少数であった。

気胸を含む重大合併症は発生していなかった。

この手法では、仮に穿刺針を最大に刺入したとしても、ほとんどの例で物理的に胸郭まで到達しえない、すなわち気胸はほとんど発生しえないことがわかり、少なくとも鎖骨下穿刺では短針使用の安全性・確実性は非常に高いことが検証できた。

短針使用率は99.2%で長針を必要とするほど高度肥満で深かったのは2名のみであった。

穿刺成功率は100%で、短針による穿刺の確実性はきわめて高かった。

一方、長針金属針(67mm)を使用した場合、これは母集団の94%で胸腔に到達しうる長さであり、長針を使用すること自体に気胸リスクが内在していることが示唆された。

この調査方法では測定の誤差はある程度見込まれるが、エコーガイド下_短軸像_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺では34mm短針の使用を基本とするのは安全性・確実性の両面で合理的である。

その他の測定値

D 体表面から右腋窩静脈前壁までの距離 16.06±3.75(7-38)
E 体表面から右腋窩静脈中心までの距離 20.45±4.12(9-41)
F 体表面から右腋窩静脈後壁までの距離 24.88±4.57(12-45)
G 右AV血管径(FからDを引いた値) 8.80±2.03(4-15)

平均(mm) ± 標準偏差(範囲)

右腋窩静脈の血管径の平均は8.8mm、体表面から右腋窩静脈中心までの距離は平均約20mmだった。

この調査は第44回日本集中治療医学会学術集会(札幌、2017.3.9~3.11)、第12回医療の質・安全学会 学術集会 (幕張メッセ国際会議場、2017.11.25~11.26)で発表した(「短針を使用したリアルタイム超音波ガイドによる腋窩静脈・鎖骨下穿刺の安全性の検討」)。

結論

このように、エコーガイド下_短軸像_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺で34mm短針金属針を使用することは、安全性・確実性ともに非常に高い手法であると実証しました。この手法で行う限り、簡単に言えば「鎖骨下穿刺は安全で確実です!」ということです。はい、今の医療界の常識に真っ向から挑んでおります。

ちなみに、鎖骨下_腋窩静脈は穿刺する血管としては比較的体表面から深いところにあるので、ここが短針で確実に穿刺できるなら、内頚静脈大腿静脈上腕尺側皮静脈などすべての穿刺部位で、ほとんど短針でよいということになります。もちろん、例外的に高度肥満・高度浮腫の患者さんでは長針でないと届かない場合もありますが、日本人では比較的まれです。

穿刺針の太さも重要です。一般的に穿刺針は太くなればそれだけ穿刺抵抗が大きくなり穿刺が難しくなります。さらに組織傷害性も強くなり、重大合併症につながりやすいということは検証するまでもありません。ということで、22Gのような細径針が組まれたキットを採用し使用するということもCVCの重要な安全対策になります。

結論として、COVIDIENのCVカテーテル マイクロニードルタイプ 22G,34mm金属針は、穿刺部位によらずエコーガイド下CVCを実践するうえで、現在、最適な穿刺針である、といえるでしょう。

とはいうものの、わたしがエコーガイド下_鎖骨下_腋窩静脈穿刺を実践し始めた当初、実はかなり外側から長針を使って穿刺挿入していました。そうです、やっぱり気胸が怖かったからです。なんちゃってエコーガイドだったからです。あるいは、「CVは長針で穿刺するものだ」という因習に縛られていたのかもしれません。しかし、外側からの穿刺は多くのマイナス要因があることがわかり、最終的には成功したとしても多数回穿刺となる割合が増えてしまい、確実性に劣る手法でした。下表はエコーガイド下_短軸像_鎖骨下_腋窩静脈穿刺の20例ごとの平均穿刺回数を示した個人成績の表です。当初長針で胸郭外側から穿刺挿入を実施していましたが、150例程度の段階でやり方を変え、より体幹中心寄りの位置から短針で穿刺するようしました。その結果、穿刺回数が劇的に減少しました。その後はほとんど初回の穿刺で成功するようになったのです。

「CVは長い針で刺すものだ」という、危険で古い因習を打破して、安全・確実・患者第一のCVCを実践しましょう!因習に囚われていた者からのメッセージです!

穿刺針の持ち方

エコーガイド下穿刺を実践するうえで、穿刺針の選択も重要ですが、その持ち方・刺し方も重要です。微妙な動きができて、穿刺成功後の血液の逆流がすぐに確認できることが重要です。

またどのような持ち方であってもベベル(切先)は上向きになるようにセットします。ベベルはエコーの反射が強く出て、先端を見分けやすいからです。また、COVIDIEN SMACプラス マイクロニードルタイプだとベベルの側にディンプルがつけてあり、これもエコーの反射を高める工夫になっています。

押し子把持法

押し子とはシリンジの内筒のことでプランジャーともいいます。

押し子を持って、フィンガーフランジに指をかけて、穿刺成功後に押し子を引き出すようにして陰圧をかけるやりかたです。この持ち方は穿刺角度の調節が手首で容易にできること、すぐに陰圧がかけられること、のメリットがあります。

 

ただし穿刺針が宙に浮く形で穿刺をすることになりますので、最初は若干不安定に感じます。が慣れれば問題ありません。

Yサイトは右側を向くようにセットし、シリンジ内のヘパリン生食や生食はごくわずかとします(多いと静脈血と動脈血の区別が難しくなります)。

ペンホルダー法

ペンを持つように穿刺針を持つやり方です。Yサイトを持ちますが持ちやすいようにYサイトは上側にセットします。小指側を体表面につけて安定させ、またそこを支点に穿刺していきます。押し子把持法よりも微細な動きができるので、浅いところの血管で短軸像穿刺sweep scan法で実施する際には有用です。

穿刺が成功した後、そのまますぐには陰圧がかけられませんので、エコープローブを置いて、その手で押し子を引っ張って血液の吸引を確認するか、反対の手に持ち替えて陰圧をかけることになります。ここが弱点で、画像上は穿刺が成功しているように見えても、実際は血管壁がたわんでいるだけのことがあり、そのように誤認したときにいったんプローブを置いてしまうとリカバーが大変になってしまうからです。画像上、確実に穿刺したという確信が得られない場合は、なかなかプローブを置いて陰圧をかける勇気が出ません。特にPICCではやり直しがきかないことがあるので困ります。

押し子把持法による短軸像穿刺では後壁穿刺の発生率が高いとして、このペンホルダーを調査したレポートがありました。9人(麻酔科医2名、senior registers7名)で135人この手法を行ったところ、穿刺はすべて1回で成功し後壁穿刺はなく、10段階の難易度調査で中央値10(最も簡単)と術者は評価しました。ペンホルダー法は操作性に優れていると考察しています(Gupta D et al, Proximal PenHolding Method – A Variant to Enhance Safety of UltrasoundGuided Central Venous Cannulation: A Prospective Pilot Study. Ann Card Anaesth. 2019 Oct-Dec; 22(4): 379–382.)。たしかにこれはエコーガイド下穿刺を実践するにおいてはマスターしておきたい有用な手法として勧められます。ただ、このレポートで使用している穿刺針は18Gと太いので(Certofix® B. Braun Melsungen AG, Germany) 、もともと穿刺抵抗が高く、後壁穿刺しやすい特性があります。持ち方云々の前に、細径針で穿刺挿入できるカテーテルキットを選択するほうが、後壁穿刺防止には役立つだろうと個人的には思いました。

ペンホルダー法w/oシリンジ(シリンジなし穿刺)

ペンホルダー法の弱点である、「すぐに血液の吸引が確認できない」ことを改良する方法で、穿刺針とYサイトだけにしてシリンジを付けないで持つやり方です。w/o; without

奇妙に映ると思いますが、この方法の利点は、血管穿刺が成功していたら陰圧をかけなくても自然に血液が逆流してくるので、それで成功が確認できる点です。逆流が見られなければ、画像上穿刺が成功しているように見えても実際は成功していないわけです。これでやり直し・プローブの持ち直しのリスクが消滅するか非常に低下します。特に上腕PICCでは通常駆血をするのでかなり圧が高くなっており、けっこうな勢いで逆流してくることがあり、わかりやすいです。

Yサイトが大気に開放されているので、そこから空気が引き込まれて空気塞栓となるリスクが懸念されると思いますが、22G穿刺針は非常に細いので、また、上腕には胸腔の陰圧はほとんど影響しないと考えられるので、そのリスクはごく小さいと考えます。とはいっても内頚静脈穿刺腋窩静脈穿刺ではこの方法はやはり避けた方がよく、上腕PICC限定の穿刺方法と位置付けた方がいいでしょう。

ペンホルダー法同様、Yサイトを上側に向けてそこを持ち、小指側を体表面につけて安定させ、またそこを支点に穿刺していきます。欠点は、血液の逆流で手元と周辺が血まみれになることです。それは気にしなければどうということはありません。

穿刺方法、穿刺部位に応じてこの3つの持ち方のどれかを選択するということになります。

ランドマーク法ではよく見られた方法、すなわち小指・環指で押し子を持って手掌を上に向けた持ち方・穿刺方法は、穿刺角度の調整が難しく、エコーガイド下穿刺ではおすすめできません。

なお、ランドマーク法はブラインド穿刺なので、血管穿刺に成功したかどうかは、穿刺中、常にシリンジに陰圧をかけて手探りで確認しなければなりませんが、エコーガイド下穿刺では針先が見えている限り、血管穿刺の成功まで途中で穿刺針に陰圧をかける必要はありません。むしろ、血管穿刺までの過程で陰圧をかけると穿刺針内に組織片が吸引されて詰まることがあり、血管を穿刺したかどうかの判定が困難になるので行わない方がよいでしょう。

最後にちょっとしたコツがあります。このYサイトはガイドワイヤーとの接続部が弁状になって閉鎖されているのですが、最初は接続に少し抵抗があります。この接続時の抵抗があるために少し力を入れて接続することになり、それで針先がわずかに進みやすくなってしまいます。こうして、穿刺はうまく決まっても、そのあと後壁穿刺になったり、針先が後壁に当たってガイドワイヤーが挿入できなくなったり、ガイドワイヤーで血管後壁を穿通してしまったり、といったトラブルが発生しやすくなってしまいます。とても残念な状態です。なので、カテーテルキットの準備中、本穿刺前にこのYサイトとガイドワイヤーを一度接続してみて、最初の抵抗をとっておくとこうしたトラブル回避に役立ちますのでおすすめです。