コンセプト

エコー画像を見ながら穿刺する動的な手法=リアルタイムエコーガイド下穿刺ではなく、穿刺前にエコーで確認し穿刺時はエコーを使用しない静的な手法のひとつにQuick look法と呼んでいる手法があります。

蘇生時、重傷外傷などおもに緊急時に、エコーでぱっと穿刺部をスキャンし、大きなリスクや問題がないことを瞬時に判断したあと、エコープローブは置いてすぐに穿刺する手法です。一瞬のプレスキャンを行って、あとはほぼランドマーク法のような穿刺法になるイメージです。ということは、ランドマーク法にあらかじめ習熟していることが前提となります。CVカテーテルでなくとも静脈路確保・急速輸液目的に太めの末梢静脈留置針(18Gサーフローなど)や、心カテ用のシースを留置する時に応用できます。

穿刺部位は頚部_内頚静脈か、鼡径_大腿静脈に限定されるでしょう。鎖骨下穿刺はリスクが高くなると考えられ、あえて実施するだけのメリットはないと思われます。ただし、鎖骨下静脈は鎖骨と線維性に結合しており循環血液量減少性ショックでも虚脱しにくいという特徴があるので、内頚静脈も大腿静脈も虚脱してぺったんこな場合には、残された穿刺ポイントになりえます。

Quick look法は、多数回穿刺を防ぎ、リアルタイムエコーガイドに費やす時間を節約することを狙っています。確実性の向上と時間短縮の両方の条件を満足させる意図です。救急医療領域では「エコーを使わないと静脈ラインがとれないとか、鈍くさい。そんなへぼいヤツはいらん」という文化が現代まで根強く継承されています。たしかにスピード勝負の面はありますが、ブラインド穿刺にこだわって、結局なかなかラインが取れないという状況も何度となく目撃してきました。

ブラインド穿刺技術は救急領域では継承されていく価値はありますが、一方で多数回穿刺こそがもっとも時間を浪費し、そして多数回穿刺こそが、合併症の発生率を上昇させることがわかっています。ブラインドで何度も刺しまくってでもラインが取れればいいのか、ぱっとエコーを当ててスマートに1回でラインが取れるほうがいいのか。プライドを取るのか、実利を取るのか。このあたりが考えどころです!

手順

手順1

エコーは穿刺用リニアプローブでなくとも、腹部用コンベックスや場合によっては心臓用セクタでも使用できます。要するに汎用エコーがあればよいわけです。
頚部_内頚静脈穿刺、または鼡径_大腿静脈穿刺で実施します。穿刺針はCVカテーテルでもよいですが、ガイドワイヤーなどの清潔操作が難しい場合gあるので、末梢静脈留置針(サーフローなど)でもよいでしょう。いずれにしても、「とりあえず」の静脈ラインと考えてください。エコーを当てる段階ですでに穿刺針をすぐ穿刺できる状態に準備しておきます。

左手でエコープローブを持ち、右手には静脈留置針を持つぐらいの勢いでもよいです。ちなみにサーフローは、末端のプラスチックのフィルターキャップを外して、2.5mlのシリンジに接続して穿刺すると、陰圧をかけて逆血を確認しやすくなります。

手順2

エコープローブを穿刺部位にあて、十分な血管径があるか、anomalyがないかなど、穿刺可否のみを数秒で評価します。
静脈の直上、エコープローブを当てたところを刺入点として見ておきます。体表に印はつけないのでそこから目を離さないようにします。

手順3

プローブを置いて、プローブを当てた位置ですばやく穿刺します。
緊急時なので消毒・感染防御の優先度は低く、状況によっては酒精綿消毒程度でも許容されます。
無菌操作で実施できない場合、カテーテルは48時間以内に入れ替えるようにしましょう。

応用例

  1. 肥満者の多発外傷と出血性ショックで救急搬送、末梢静脈確保が困難、外頚静脈も見えない。Quick look法で18G静脈留置針を内頚静脈に留置した。
  2. 急性心不全と肺うっ血で救急搬送された患者、救急外来でNPPVによる陽圧換気を開始した。緊急透析と除水を行うためにブラッドアクセスカテーテルを挿入したいが、起坐呼吸で臥位になれない。気管挿管はできれば避けたい。半座位のままQuick look法で右内頚静脈を穿刺しブラッドアクセスカテーテルを挿入、ただちに除水を開始した。(このようなケースでは半座位で内頚静脈から穿刺挿入すると空気塞栓のリスクが大きくなるのでエキスパート以外は安易に実施するべきではない。)
  3. 目撃のある院外心肺停止患者が救急外来に搬送され、V-A ECMO(PCPS)導入によるextracorporeal CPR(ECPR)の適応と判断した。血管虚脱と高度肥満であったため、Quick look法で鼡径の動静脈を確認後に穿刺を行い、送脱血管を短時間で導入した。