コンセプト

sweep scanは、プローブを掃くように、または滑らすように平行移動させて血管を描出する走査法です。

短軸像穿刺 sweep scan法はswing scan法と異なり、針先が目標の静脈に向かって進むのを連続的に描出することは困難です。なぜならば、swingがほぼ手関節の動きでプローブの角度を微調整できるのに対して、sweepは肘関節の動きも加えて平行移動させるため、動きが若干粗大になるからです。

そのかわり、穿刺針の動きとプローブの動きを別々に、順番に行うことで、断続的ではありますが目標の静脈まで誘導していくことができます。

浅い位置にある血管ではswing scanでは傾ける角度が大きくなり過ぎで描出困難になりますが、sweep scanではプローブに角度をつける必要がなく、その問題が回避できます。これはswing scan法にはない利点です。

その意味で短軸像穿刺 sweep scan法はPICC挿入時の上腕_尺側皮静脈の穿刺、浅い頚部_内頚静脈、浅い鎖骨下_腋窩静脈の穿刺で有用です。

先端の描出は断続的にはなりますが、プローブと穿刺針を同時に動かす必要がなく、交互にうごかせばよいということが大きいポイントです。深い血管の場合も実行可能ですが、交互に動かす回数が増えて混乱してくる可能性があることに注意します。swing scan法よりも確実性が感じられれば、この方法をメインにしても問題ありません。

この手法のコンセプトはまとめると下図のようになります。

手順

短軸像穿刺 sweep scan法は、技術的にはswing scan法よりも簡便に感じられるかもしれませんが、針とプローブを交互に動かす手順が途中で混乱してくる可能性があり、その点には注意が必要です。

また、シミュレータと異なり、実際の人体内部は穿刺針先端と同程度の高輝度な点や線が非常に多く、針先が断続的に見えたり消えたりするうちに見失いやすいというリスクがあります。シミュレータでうまくいったとしても実際にはそうはいかないということも、ひとつのピットフォールになります。

手順1

プローブを体表に対して垂直に立てた状態で静脈前壁上の最適な穿刺点を決定します。最終的にこのポイントに穿刺針を刺入することを計画します。すると、体表面からそのポイントに向かって斜めに刺入される穿刺針は、このエコービームからは手前側に離すことになります。

エコービームのラインからどれくらい離したところを穿刺点とするかですが、穿刺角度を体表面に対して45°とするのを基本とした場合、三角比から、目標までの距離と同距離分離せばよいことになります。

したがって、体表から目標静脈の中心までの距離(a)を画面上のガイドや目盛りを参考に測定し、エコービームが照射されているプローブ中央を起点とし、その距離と等しい点(b)を手前に延ばし、穿刺点とします。

距離(b)は、距離(a)からエコーの接地面の1/2の幅を引いて、プローブのふちから距離をとる方法でもよいです。

この刺入点の決め方が大切です。特に目測で刺入点を決めることになるので、そのトレーニングの方法を後述します。
ここのstepはswing scan法と同様です。

手順2

穿刺点を決定後、刺入する前にプローブを穿刺針ぎりぎりまでsweep scanで近づけます。このとき、穿刺針がプローブの中心と一致していること、穿刺針の軸とプローブの軸が一致していること、すなわち斜めに穿刺しそうになっていないこと、画面上のガイドと目標血管の中心とが一致していることを確認します。穿刺針の把持の仕方ですが、ごくわずかずつ穿刺針を進めるために、微妙な操作が可能なペンホルダーで把持することを推奨します。穿刺針と持ち方ページで解説します。

手順3

プローブはそのまま動かさず、また角度も変えず、穿刺針を45°の刺入角度でゆっくり刺入します。刺入点がプローブに近いので、プローブカバーを穿刺しないように注意します。
ある深さまですすめると穿刺針先端はエコービームとクロスし、画面には必ず高輝度な動く点=穿刺針先端が現れます。なかなか見えないなと思っても「絶対に」現れますのでそれを信じてください。待ちきれずにプローブを動かしてしまうと、もうわけがわからなくなりますので我慢してください。画面に穿刺針先端の高輝度の動く点が現れたところで、いったん刺入を止めます。

手順4

次に穿刺針は動かさず、プローブだけを穿刺針から遠ざかる方向へゆっくりわずかずつsweepしてずらします。すると画面では見えていた先端がゆっくり消えていきます。完全に消えたところでsweepを止めます。sweepする幅は見えていた針先が消えるまでの、ごくわずかです。

手順5

続いて穿刺針をゆっくり同じ穿刺角度で進めると、その前の画像よりは下方に穿刺針先端が現れます。このように、針を進める⇒画面に先端が現れる⇒プローブをsweepして画面から先端を消す⇒針を進める、というアルゴリズム動作を数回繰り返していくと、先端が断続的に見えたり消えたりしながら次第に深度を下げつつ、徐々に静脈に近づいていきます。

穿刺針の刺入角度は45°を保ち、途中で変えません。また通常はjiggle(細かく針を揺する動き)を加えて針先を動かす必要はありません。ただし見失いそうになったらjiggleも有用です。

手順6

先端が目標静脈の前壁に到達し、軽く圧迫すると前壁が陥凹してハート型のように変形して見える「ハートサイン」が描出されます。

この「ハートサイン」が見られれば針先が静脈壁に接しており、「あと一歩で穿刺できる」状態であることがわかります。そのため、この画像が現れたということは穿刺針を目標血管の前壁まで誘導し終わったという意味になり、誘導過程での最終局面として重要なステップになります。このサインを確認するところまでが「誘導」です。その確認なくして穿刺に移るのは「ブラインドのエコーガイド」「なんちゃってエコーガイド」になってしまいますので注意してください。ここまでくれば、あとは穿刺技術の問題です。

ここからはswing scan法での最終工程と同じです。

手順7

せっかくのエコーガイドであり、リスクをできるだけ低減したいという考えから、できるだけ前壁穿刺で成功させましょう。

静脈壁の穿刺は動脈と異なり難易度は高いです。というのも、静脈は内圧が低く壁が薄いため、細い穿刺針を使用したとしてもゆっくりじわじわ穿刺すると静脈は徐々にたわみ、いつの間にか後壁も一緒に穿刺してしまうということになりやすいからです。

前壁だけを穿刺するには、一気に素早く穿刺し、その時すぐにわずかにすぐ引き戻すようなモーションにするのがコツです。キツツキが木の幹をつつくようなイメージ、あるいはボクサーがジャブを繰り出すような動きです。

静脈壁を穿刺した「プツン」という手ごたえ、変形の回復、静脈腔内の先端の描出(bull’s eye or target sign)、シリンジ内への血液の吸引をもって穿刺成功の指標とします。ただし、ペンホルダーで穿刺をした場合、片手では血液が吸引できませんので、①プローブを置く⇒その手でプランジャーを引く、か、②プローブを置く⇒左手にシリンジを持ち替える⇒右手でプランジャーを引く、のどちらかの動作が必要になります。このあと、ガイドワイヤーの挿入を容易にする目的で針先が抜けていないか画像で監視しながら穿刺針を少し倒してもよいでしょう。

手順のまとめ

  1. 刺入点を決定し、刺入前にプローブを穿刺針ぎりぎりまで近づける。
  2. プローブを動かさず穿刺針をゆっくり刺入すると、ある深さで先端が画面上に現れる。そこでいったん刺入を止める。
  3. プローブを遠ざける方向にゆっくりsweepし、画面上で先端が消えたら止める。
  4. 穿刺針を再度ゆっくり刺入し先端が現れたところでまた止める。
  5. 見える⇒消す⇒見える⇒消す、と先端を断続的に描出しつつ目標の静脈に誘導していく。
  6. 静脈前壁直上まで到達すれば一気に穿刺する。

短軸像穿刺 sweep scan法の流れをGIFで示します。イメージをつくってください。

動画

穿刺シミュレータを使用した短軸像sweep scan法_右頚部_内頚静脈穿刺を、穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。

エコーはSonoSite S-Nerve リニアプローブL25x/13-6、カテーテルキットはCOVIDIEN SMACプラス、穿刺針は短針金属針(34mm)、穿刺シミュレータは京都科学 CVC穿刺挿入シミュレータ Ⅱ、穿刺パッドは超音波パッドをそれぞれ使用しています。
なお、実際の患者さんで実施した動画は穿刺部位のカテゴリからご覧ください。

エコーガイド下CVC_短軸像sweep scan法_右頚部_内頚静脈穿刺_穿刺シミュレータ

穿刺シミュレータを使用した短軸像sweep scan法_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺を、穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。条件は同じです。

エコーガイド下CVC_短軸像sweep scan法_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺_穿刺シミュレータ

長所と短所

短軸像穿刺 sweep scan法は穿刺とscanを同時にではなく交互に行うことで穿刺のプロセスが整理され、その結果確実性が向上する場合があるでしょう。swing scan法よりもやりやすいと感じられる方は、こちらの手法を中心に行うということでもOKです。

ただ、順調に順番通りプロセスが進行していくうちはいいのですが、一度先端がわからなくなるとリカバーしづらいということに注意が必要です。というのも、sweep scanのプローブ操作は微細にsweepするその操作がやや難しく、進めたものをごくわずか戻すという操作が難しいのです。そのため、いったんわからなくなると、リカバーしようとしてもできずに泥沼化する危険性があります。その場合はいさぎよくやり直しましょう。

長所

  • 穿刺とscanを交互に行うことで確実性が向上する。
  • るいそう、浅い静脈の場合、swing scan法に比べ穿刺針先端が誘導しやすい。
  • PICC、橈骨動脈ライン確保では第一選択になる。
  • swing scan法に困難を覚える場合に有用。
  • ニードルガイドなどの追加デバイスが不要で、コストパフォーマンスにすぐれる。

短所

  • 穿刺針先端を断続的に描出するため見失うリスクがある。特に高輝度な繊維・脂肪層内では見失いやすい。また見失った場合にリカバーするのが(手順をもどすのが)難しい。
  • 微妙な操作の難易度がやや高い。
  • 断続的な描出を繰り返すためswing scan法にくらべ時間を要する。
  • ペンホルダーで穿刺した場合、穿刺成功後にシリンジに陰圧をかけて逆血を確認しようとすると、プローブを置く必要があり、ステップが一つ増える。逆血がなく穿刺を再試行しようとすると、プローブを持ち直す必要があり、リカバーが難しい。

トラブルシューティング

短軸像穿刺 sweep scan法は先端が見えたり消えたりしながら目標に誘導していく方法ですが、消えた時に見失いやすくなります。針先が見えなくなったときのトラブルシューティングを示します。

1.穿刺後に針先が見えない!

  • 最初の刺入深度が浅ぎませんか? →もう少し刺入してみましょう。必ず見えてきます。
  • 刺入点がプローブから遠くないですか? →プローブのヘリぎりぎりのところから穿刺してみましょう。
  • 刺入角度が大きすぎませんか? →45°の刺入角度を確認してください。角度が大きいとエコービームが針先とクロスするポイントが深くなり、描出されにくくなります。

2.針先を途中で見失った!

  • プローブをずらしすぎていませんか? →針は動かさず、プローブを針に近づけるように戻してください。どこかで先端が描出されます。そこからやりなおしてください。わかりにくければjiggleで動きを与えてください。画面上で動く点が先端になります。
  • 血管周囲組織の高輝度の構造物にまぎれていませんか? →jiggleで針に動きを与えてください。

トレーニング方法

短軸像穿刺はswing scan法、sweep scan法ともに、「適正な刺入点」と「適正な穿刺角度」で実施することが大切です。穿刺シミュレータ、定規、分度器を使って、その感覚を養うトレーニング方法を紹介します。

ただし実際の場面では距離・角度の測定はしにくく、実際は多少の誤差も許容されますので、厳密にとらえずにあくまで感覚的なずれを修正することを主眼としてください。

1. プローブの接地面の幅をあらかじめ測定しておきます。このプローブでは12mmでしたので、エコービームが照射されている中心からプローブの縁までは6mmになります。
2. 穿刺シミュレータの穿刺点を決定し、血管の中心までの深さを測定します。この場合17mmと測定しました。
3. 深さと等距離分エコービームから離れた点を刺入点にするためには、深さ17mmから6mmを引いた距離、11mmをプローブの縁から離した点を穿刺点に設定すればよいことになります。
4. 設定した刺入点が適正かどうか、パートナーに定規で測定してもらいます(プローブの中心から17mmまたはプローブの縁から11mm)。
5. 次に、刺入角度が体表面に対して45°になっているかどうか測定してもらいます。ずれていれば修正します。このとき0°は水平面ではなく体表面であることに注意してください。調整した刺入点、刺入角度で短軸像穿刺 sweep scan法を穿刺し、最初の計画通りのところに穿刺できるまで、繰り返し練習しましょう。

チェックポイント

短軸像穿刺のチェックポイントとなんちゃってな方法をまとめました。自分の手法をチェックしてみましょう。

プローブの持ち方、当て方、動かし方

チェックポイント

  • エコーゼリーを付け過ぎていませんか?
  • 小指を体表に当てプローブを安定化させていますか?
  • プローブの圧迫が強すぎませんか?
  • プレスキャンで正確なスキャンができていますか?

なんちゃって手技

  • エコーゼリーが多く滑りやすい。
  • 小指の固定と支点がないため、おおざっぱな動きになり、どんどん滑ってしまう。
  • 強く圧迫してしまい、静脈が圧迫され狭小化している。
  • プレスキャンがおざなりで、血管走行や位置関係が十分に把握できていない。血管走行とローブのスキャン方向が一致していない。
  • プローブ角度が不正確なため、ななめにスキャンされそのまま穿刺しようとする。

穿刺針のセット・持ち方

チェックポイント

  • 穿刺針は短針が初期設定になっていますか?
  • 押し子把持法がうまくできていますか?
  • ペンホルダー法ではYサイトを把持していますか?

なんちゃって手技

  • 長針金属針、長いカニューラ針をまず選択する。
  • 押し子把持法の持ち方・陰圧のかけ方ができておらず、穿刺後血液の吸引ができない。
  • ペンホルダー法でシリンジ部分を把持し、不安定になる。

刺入点・刺入角度

チェックポイント

  • 刺入点と刺入角度は適切ですか?

なんちゃって手技

  • ランドマーク法の時のくせで、かなり寝かせて穿刺している。
  • swing scan法で、刺入点がプローブに近すぎる。
  • 刺入点がプローブの中心でない。

穿刺針先端の連続的描出

チェックポイント

  • 針先とシャフトが区別できていますか?
  • 針先を見失ったときプローブ操作で見つけていますか?
  • 針先を見失ったとき、刺入点を見て深さを確認していますか?

なんちゃって手技

  • シャフトを針先と誤認し、針先を見失ってもどんどん深く刺してしまう。
  • 深く進んでいるが画面だけ見て手元と刺入点を見ていない。

静脈前壁の穿刺

チェックポイント

  • 刺してすぐ戻す動作で、前壁穿刺していますか?

なんちゃって手技

  • ゆっくりした動きで前壁を針先で押しているだけになる。

穿刺後の固定

チェックポイント

  • 穿刺成功後、穿刺針を体表に固定できてますか?

なんちゃって手技

  • 穿刺後、しっかり固定できていないため、針先が進んでしまう。

ガイドワイヤーの挿入

チェックポイント

  • Yサイトを持ってガイドワイヤーを挿入していますか?
  • Yサイトにガイドワイヤーのスライダー先端がしっかり差し込まれていますか?
  • ガイドワイヤー挿入に抵抗はありませんか?

なんちゃって手技

  • シリンジ部分を持ってガイドワイヤーを接続しようとすると不安定になり、針が進んだり抜けてしまう。
  • Yサイトにガイドワイヤーのスライダー先端がしっかり差し込まれていない。
  • ガイドワイヤー挿入に抵抗があっても力で押し込もうとする。