コンセプト

短軸像とは血管を横切るようにプローブを当てて、丸く輪切りにした画像のことです。短軸像穿刺とはその輪切り画像で描出した血管を見ながら穿刺する手法です。

短軸像穿刺にはswing scan法とsweep scan法の2種を区別することができます。まずswing scan法を解説します。
swing scanとはプローブの持ち方とスキャン法で解説した通り、プローブを扇状に動かす走査法を指します。

この手法のコンセプトは下図のようになります。

swing scanで針先を描出し、針先が目標の静脈に向かって進むのを連続的に誘導する、ということがミソです。ここが「ガイド」の真意です。

この手法に慣れると、ほかの穿刺部位でも応用が利くので、エコーガイド下穿刺の基本手技と個人的には位置付けています。まずこの手法からトライしてみることをおすすめします!

  • 渡部 修 「エコーガイド下内頚静脈穿刺法」 井上善文編 CVCパーフェクトガイド. 日本医事新報社:2019. p20-37
  • 渡部 修 他 「リアルタイム超音波とX線透視を使用した腋窩静脈穿刺中心静脈カテーテル挿入法の安全性と確実性の検討」  日本集中治療医学会誌 2009;16:163-167
  • 渡部 修 他 「リアルタイム超音波ガイド下中心静脈カテーテル挿入法の技術」 ICUとCCU Vol.33(9):715~720,2009
  • 渡部 修 「エコーガイド下鎖骨下穿刺法」 井上善文編 臨床栄養別冊 JCNセレクト4 ワンステップアップ静脈栄養.  医歯薬出版株式会社:2010. p154-159

手順

短軸像穿刺 swing scan法の穿刺手順をstep by stepで説明します。これはごくシンプルな原理に基づいています。

手順1

 

プローブを体表に対して垂直に立てた状態で静脈前壁上の最適な穿刺点を決定します。血管がよく見えているからといって真上から垂直に針を刺すわけではないので、そのポイントに向かって体表面から斜めに刺入していくことになります。すると刺入点はプローブから手前のやや離れたところに設定することになります。

どれくらい離すかですが、穿刺角度を体表面に対して45°とするのを基本とした場合、三角比から「穿刺深度と同じだけ離す」ことになります。

具体的には、体表から目標静脈の中心までの距離(a)を画面上のガイドや目盛りを参考に測定し、エコービームが照射されているプローブ中央を起点とし、その距離と等しい点(b)を手前に延ばし、穿刺点とします。

プローブの中心から接地面のへりまでの長さは通常6-7mmありますので、それを(a)から引いた距離をプローブのへりから離して刺入点としてもよいです。この刺入点の決め方、距離の取り方が大切です。特に目測で刺入点を決めることになるので、そのトレーニングの方法は後述します。

穿刺針の把持の仕方は、手関節で角度の調節がしやすい押し子把持法が適しています。ベベル(切先)が必ず上を向くようにセットして把持し、穿刺します。ベベル部分はエコーの反射が強くなり、シャフトと区別しやすくなります。穿刺針と把持の仕方のページで解説します。

手順2

決定した刺入点から45°の刺入角度で、皮下まで浅く(5mm程度)刺入したところで刺入をいったん止めます。

つぎにプローブを刺入点とは反対側にゆっくりとやや大き目に倒し(swingし)、高輝度な点=穿刺針先端を見つけて同定=「ロックオン」します。このときプローブの接地面がずれないように、一点を支点としてswingするよう心掛けてください。穿刺針先端がわかりにくい場合は穿刺針を前後に軽く揺する動き=jiggleを加えるとその動きで先端位置が特定しやすくなります。

プローブから離れた点から刺入することに、はじめは不安感が生じると思いますが、プローブを倒す過程のどこかで絶対に、エコービームと先端はクロスし画面に描出されるので、それを信じてください。

エコービームはプローブの接地面全体から照射されているわけではなく、中心部の1mm幅程度のところだけから照射されています。「薄く照射されているビームの刃で、ある断面をつねに切り取っている」というイメージを持って画像を見ることが大事です。

最初にこの先端をロックオンすることなしに次のステップに進まないようにしてください。
先端が見えないと思って激しくプローブを動かしたり、穿刺針をいろいろ動かしたりするとまったく誘導できなくなるので注意してください。

手順3

 

先端をロックオンしたらそれを見失わないようにjiggleしながら少しずつ穿刺針を進め、その進めるリズムに同期するようにプローブを手前に起こす(swing scan)ようにしていくと、画面上に穿刺針先端が連続的に描出されていきます。いったん倒したプローブを「刺しながら起こしていく」動きになります。

この両手のコンビネーションがうまく合わさると、高輝度の点=穿刺針先端が上から下に向かって落ちていくような連続画像になり、目標静脈まで誘導していくことができます。

最初は先端とシャフトの画像上の区別が難しいかもしれませんが、先端はシャフトより輝度が若干高いこと、シャフトは針を進めても位置が変わらないことで区別できます。

多少断続的でもイメージの中に先端位置がどのあたりにあるか把握されていればリカバーでき誘導できます。
もし先端を見失ったり、シャフトかなと疑う場合は、先端が見えたところとぎりぎり見えないところの境界=見え切りを出して先端を再発見してください。

慣れないうちはいつの間にか深く穿刺しているということがよくありますので、画像と手元を何度も見比べて先端位置のおおよその深さを推測しながらすすめてください。

手順4

先端が目標静脈の前壁に到達し、軽く圧迫すると前壁が陥凹してハート型のように変形して見える「ハートサイン」が描出されます。

この「ハートサイン」が見られれば針先が静脈壁に接しており、「あと一歩で穿刺できる」状態であることがわかります。そのため、この画像を得たということは穿刺針を目標血管の前壁まで誘導し終わったという意味になり、誘導過程での最終局面として重要なステップになります。このサインを確認するところまでが「誘導」であり、その確認なくして穿刺に移るのは「ブラインドのエコーガイド」「なんちゃってエコーガイド」になってしまいます。ここまでくれば、あとは穿刺技術の問題です。

手順5

 


最後のステップは静脈穿刺の技術の問題になります。後壁穿刺は合併症の元であり、エコーガイド下穿刺は穿刺の全課程を目視できる技術のはずなので、できるだけ前壁穿刺で成功させることを目標としましょう。

静脈は内圧が低く壁が薄いため、ゆっくりじわじわ穿刺すると静脈前壁は徐々に陥凹するだけで穿刺できず、いつの間にか後壁も一緒に穿刺してしまいがちです。静脈前壁だけを穿刺するには、ある程度勢いをつけて穿刺し、後壁まで貫かないようにわずかにすぐ引き戻すようなモーションにするのがコツです。キツツキが木の幹をつつくようなイメージです。

静脈壁を穿刺した「プツン」という手ごたえ、変形の回復、静脈腔内の先端の描出(bull’s eye or target sign)、シリンジ内への血液の吸引をもって穿刺成功の指標とします。

このあと、ガイドワイヤーの挿入を容易にする目的で針先が抜けていないか画面で監視しながら穿刺針を少し倒してもよいでしょう。

エコー画面ではどうみても穿刺針が血管内に刺入されているのに、陰圧をかけても逆血が得られないという現象がしばしば起きます。これは、穿刺が成功しているように見えても、実は前壁がたわんでいるだけで穿刺は成功していないか、穿刺は成功しているが穿刺針が血栓や組織片などで詰まって血液が引けないか、そのどちらかと考えられます。前者を見抜くのはなかなか難しく、穿刺成功の「プツン」という手ごたえなどを頼りにすることになります。後者の場合、ガイドワイヤーを慎重に挿入し、抵抗なく進み、透視下でも血管に沿って進んでいればよしとします。それでもなんらかの懸念があれば血管内留置を再確認します(ガイドワイヤートラブルの項参照)。

手順のまとめ

  1. 深度を測定し刺入点を決定する
  2. 穿刺針を皮下に刺入したところでプローブを大きくswing scanで反対側に倒し、先端を見出す。
  3. 穿刺針を徐々に刺入するのに同調させて、プローブを徐々に起こすswing scanをする。
  4. 3次元的に刺入されていく先端が画面に連続的に描出される。
  5. 先端を目標静脈に徐々に近づけるように誘導していく。
  6. 静脈前壁直上まで到達すれば一気に穿刺する。

短軸像穿刺 swing scan法の流れをGIFで示します。イメージをつくってください。

動画

穿刺シミュレータを使用した短軸像swing scan法_右頚部_内頚静脈穿刺を、穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。

エコーはSonoSite S-Nerve リニアプローブL25x/13-6、カテーテルキットはCOVIDIEN SMACプラス、穿刺針は短針金属針(34mm)、穿刺シミュレータは京都科学 CVC穿刺挿入シミュレータ Ⅱ、穿刺パッドは超音波パッドをそれぞれ使用しています。
なお、実際の患者さんで実施した動画は穿刺部位のカテゴリからご覧ください。

穿刺シミュレータを使用した短軸像swing scan法_右鎖骨下_腋窩静脈穿刺を、穿刺部手元とエコー画面のオーバーレイの2画面の動画で示します。条件は同じです。

長所と短所

短軸像での血管描出は、ぱっと当てて画像が見えればごく短時間で血管とその周辺情報/リスクをつかむことができます。穿刺に要する時間もswing scan法では慣れれば数秒ということも可能です。一方sweep scan法では断続的な誘導になるためswing scan法に比べるとどうしても時間がかかります。

「エコーを使うと時間がかかる」と思うかもしれませんが、短軸像穿刺 swing scan法で1回で穿刺が成功するのと、ランドマーク法で何回も失敗しながら穿刺をするのとでは、どちらが時間がかかるでしょうか。多数回穿刺は合併症の元でもあり長時間を要する結果にもなります。エコーガイド下穿刺は迅速性が要求される穿刺場面でも有用だと個人的には考えています。ただ、ハードルになるのはやはり穿刺とscanの同時操作でしょう。

長所

  • 穿刺針先端が連続的に描出できる。
  • 多くの血管穿刺場面に応用できる。
  • 習熟すると短時間で穿刺できる。
  • ほとんどの部位・場面で短針による穿刺が可能で、安全性が高い。
  • ニードルガイドなどの追加デバイスが不要で、コストパフォーマンスにすぐれる。

短所

  • 描出・穿刺イメージがつかみにくい。
  • 穿刺とscanの同時操作に習熟するには時間が必要。
  • 先端を見失った場合のリカバーが難しい。
  • るいそう患者、上腕の静脈など浅い位置の血管は、プローブの傾け角度が大きくなり描出困難となるため適応できない。
  • 深い位置にある血管の描出性は悪くなり、穿刺の確実性が低下する。
  • 深い位置の血管に長針を使用した場合、距離が長い分、誘導する技術の難易度は上がる。

トラブルシューティング

習熟すればとても簡単で応用範囲も広い短軸像穿刺 swing scan法ですが、そこまで達する過程でうまくいかないことも多いと思います。よく見られるトラブルとその解決法を解説します。

1.穿刺後に針先が見えない!

  • プローブの倒し方が小さくないですか? →反対側にもう少し倒してみましょう。針先とエコービームはある段階で絶対にクロスし針先は画面上に現れます。血管が浅すぎて描出が難しいようならsweep scan法に変更しましょう。
  • 最初の刺入深度が浅すぎませんか? →もう少し刺入してみましょう。
  • 刺入点がプローブから遠くないですか? →深さを測ってそれと同じ距離離したところから穿刺してみましょう。もう少し近くから穿刺してみましょう。
  • 刺入角度が大きすぎませんか? →針先がエコービームとクロスする点が深いところになりますので、針先は描出しにくくなります。45°の刺入角度を確認してください。

2.針先を途中で見失った!

  • プローブの動かし方がおおざっぱでないですか? →微細なプローブ操作で針先を見つけてください。そのとき穿刺針をjiggleして動く対象を探すようにしてください。針とプローブを同時に動かしてください。
  • 針先とシャフトは区別できていますか? →微細なプローブ操作で針先を見つけてください。そのとき穿刺針をjiggleしてください。針先とシャフトの輝度の違いを見分けてください。「見え切り」=先端が消えて見えなくなるところまで描出して先端位置を特定してください。輝度を高めるため、ベベル(切先)は必ず上向きで穿刺してください。
  • いつの間にか深く穿刺していませんか? →手元を見て刺入深度を確認してください。見失った状態で針は進めないでください。jiggleしたとき後壁側に動きが見られれば後壁穿刺の可能性があります(下図参照)。

  • 穿刺点がプローブに近すぎてシャフトを見ていませんか? →深さを測って、プローブと穿刺点の位置を再確認してください。
  • プローブの中心から外れていたり斜めに穿刺していませんか? →正確な刺入方向・角度を確認してください。

トレーニング方法

短軸像穿刺はswing scan法、sweep scan法ともに、「適正な刺入点」と「適正な穿刺角度」で実施することが大切です。穿刺シミュレータ、定規、分度器を使って、その感覚を養うトレーニング方法を紹介します。

ただし実際の場面では距離や角度は測定しにくく、実際は多少の誤差も許容されますので、厳密にとらえずにあくまで感覚的なずれを修正することを主眼としてください。

1. プローブの接地面の幅をあらかじめ測定しておきます。このプローブでは12mmでしたので、エコービームが照射されている中心からプローブの縁までは6mmになります。

2. 穿刺シミュレータの穿刺点を決定し、血管の中心までの深さを測定します。この場合17mmと測定しました。

3. 深さと等距離分エコービームから離れた点を刺入点にするためには、深さ17mmから6mmを引いた距離、11mmをプローブの縁から離した点を穿刺点に設定すればよいことになります。

4. 設定した刺入点が適正かどうか、実習パートナーに定規で測定してもらいます(プローブの中心から17mmまたはプローブの縁から11mm)。

5. 次に、刺入角度が体表面に対して45°になっているかどうか測定してもらいます。ずれていれば修正します。このとき0°は水平面ではなく、体表面であることに注意してください。正確な刺入点、刺入角度で、短軸像穿刺 swing scan法をイメージ通りに穿刺できるまでトレーニングしましょう。

チェックポイント

短軸像穿刺のチェックポイントとなんちゃってな方法をまとめました。自分の手法をチェックしてみましょう。

プローブの持ち方、当て方、動かし方

チェックポイント

  • エコーゼリーを付け過ぎていませんか?
  • 小指を体表に当てプローブを安定化させていますか?
  • プローブの圧迫が強すぎませんか?
  • プレスキャンで正確なスキャンができていますか?

なんちゃって手技

  • エコーゼリーが多く滑りやすい。
  • 小指の固定と支点がないため、おおざっぱな動きになり、どんどん滑ってしまう。
  • 強く圧迫してしまい、静脈が圧迫され狭小化している。
  • プレスキャンがおざなりで、血管走行や位置関係が十分に把握できていない。血管走行とローブのスキャン方向が一致していない。
  • プローブ角度が不正確なため、ななめにスキャンされそのまま穿刺しようとする。

穿刺針のセット・持ち方

チェックポイント

  • 穿刺針は短針が初期設定になっていますか?
  • 押し子把持法がうまくできていますか?
  • ペンホルダー法ではYサイトを把持していますか?

なんちゃって手技

  • 長針金属針、長いカニューラ針をまず選択する。
  • 押し子把持法の持ち方・陰圧のかけ方ができておらず、穿刺後血液の吸引ができない。
  • ペンホルダー法でシリンジ部分を把持し、不安定になる。

刺入点・刺入角度

チェックポイント

  • 刺入点と刺入角度は適切ですか?

なんちゃって手技

  • ランドマーク法の時のくせで、かなり寝かせて穿刺している。
  • swing scan法で、刺入点がプローブに近すぎる。
  • 刺入点がプローブの中心でない。

穿刺針先端の連続的描出

チェックポイント

  • 針先とシャフトが区別できていますか?
  • 針先を見失ったときプローブ操作で見つけていますか?
  • 針先を見失ったとき、刺入点を見て深さを確認していますか?

なんちゃって手技

  • シャフトを針先と誤認し、針先を見失ってもどんどん深く刺してしまう。
  • 深く進んでいるが画面だけ見て手元と刺入点を見ていない。

静脈前壁の穿刺

チェックポイント

  • 刺してすぐ戻す動作で、前壁穿刺していますか?

なんちゃって手技

  • ゆっくりした動きで前壁を針先で押しているだけになる。

穿刺後の固定

チェックポイント

  • 穿刺成功後、穿刺針が動かないように体表に固定できてますか?

なんちゃって手技

  • 穿刺後、しっかり固定できていないため、針先が進んでしまう。

ガイドワイヤーの挿入

チェックポイント

  • Yサイトを持ってガイドワイヤーを挿入していますか?
  • Yサイトにガイドワイヤーのスライダー先端がしっかり差し込まれていますか?
  • ガイドワイヤー挿入に抵抗はありませんか?

なんちゃって手技

  • シリンジ部分を持ってガイドワイヤーのスライダーを接続しようとすると不安定になり、針が進んだり抜けてしまう。
  • Yサイトにスライダー先端がしっかり差し込まれていない。
  • ガイドワイヤー挿入に抵抗があっても力で押し込もうとする。