ポイント:ガイドワイヤーを確実に挿入・留置することがセルジンガー法によるCVCの最重要ポイントである。

 

ガイドワイヤーの挿入手順

COVIDIEN SMACプラス マイクロニードルキットでは、スライダーに格納されたガイドワイヤーをYサイトから挿入します。このガイドワイヤーの挿入過程にはいくつか注意事項があります。

①穿刺後にYサイトとスライダーを接続しやすいように、あらかじめ穿刺針のベベル(切先)とYサイトの向きを決めておきます。押し子把持法の場合は、上向きのベベルに対してYサイトは右側にセットします。このようにセッティングすることで、穿刺中にYサイトの位置で間接的にベベルの向きがわかります。Yサイトが右を向いていればベベルは上向き、それ以外ならばベベルの向きもずれていることになります。ベベルはエコービームの反射が強いので、先端の画像が明瞭になり、位置がつかみやすくなります。ベベルはかならず上になるように穿刺していきます。穿刺中にYサイトの向きを時々確認し、向きが変わっていれば修正することで、常にベベルを上向きにして穿刺することができます。

ガイドワイヤーを送り込む際、スライダーとYサイトは確実に接続しなければなりませんが、Yサイト側のガイドワイヤー挿入口は膜状・弁状になっており、最初に接続するときには少し抵抗が強いという特性があります。抵抗が強い分、接続するときについ力が入ってしまい、その結果針先がわずかに進んで静脈内腔の後壁に先端が当たったり後壁穿刺になりやすいのです。こうなるとガイドワイヤーはスムーズに挿入できません。穿刺はうまくいったけど、ガイドワイヤーを入れるとき抵抗が強く、結局やり直したというようなときは、この針先のブレが原因のことがあります。せっかくうまく穿刺したのに・・・と惜しくなるわけです。

これを防止するには、穿刺前の準備の段階で、あらかじめYサイトとスライダーを2-3回接続してみて、Yサイトへの接続抵抗を減弱させておくと実際の接続時に軽くすっと接続でき、針先のぶれを防止することができます。ちょっとしたコツですがけっこう重要な準備です。

ペンホルダー法の場合はYサイトを母指と示指で持つことになりますが、Yサイトを押し子把持法と同じく上向きのベベルに対して右側にセットしておくと持ちにくくなるため、ベベルは上向き、Yサイトも上側セットするとよいでしょう。

③穿刺成功後の手順は、

  1. 左手で持っていたプローブを置く
  2. 左手に穿刺針を持ち替え、針先が動かないように患者の体表面と指を接触させ固定する。このとき必ずYサイトの部分を持つ。シリンジ部分を持つと不安定になる
  3. ガイドワイヤーを接続する直前に、スムーズに血液が吸引できるか再度確認し、穿刺針先端が静脈内腔に留置されていることを確認する
  4. 針先が不用意に進まない様に、Yサイトにガイドワイヤーのスライダーを慎重に接続する

というように行います。

プローブを置いて穿刺針を左手に持ち替えるところが不安定になりやすいので注意してください。穿刺針先端が動いて、後壁穿刺になったり抜けたりしやすいです。穿刺が成功してもカテーテルの挿入までが保証されているわけではありません。ガイドワイヤーの挿入がスムーズかどうかでカテーテル挿入の成否が決まります。ここがCVC手順のなかで最も重要なポイントと思ってください。

④このキットはYサイトの側孔の弁状の入口部にスライダーの先端を接続しガイドワイヤーを送るシステムであるため、きちんと接続した状態でガイドワイヤーを送りこむ必要があります。スライダー先端からガイドワイヤーが少しでもはみ出た状態で無理に接続すると、ガイドワイヤー先端が屈曲変形し、ガイドワイヤーが使いものにならなくなるか、思わぬ事故につながる恐れがあります。

静脈内腔は数mmしかなく、穿刺針先端が血管内腔から動かないように接続するのは非常にデリケートな操作になります。個人的にはこの接続からガイドワイヤーがある程度スムーズに送り込まれるまでのところだけは、息止めをして呼吸による手振れも起こさないように気を遣っています。血管穿刺よりも緊張する手順です。通常、母指でガイドワイヤーを送り込みます。このときも透視で確認しながら挿入してもよいですが、視線が手元から外れてしまうために、針先が動いてうまくガイドワイヤーが挿入できなくなるリスクがあります。個人的には、ガイドワイヤーが5~10cmスムーズに送り込まれるまでは、透視は確認しないようにしています。この瞬間がCVC実施プロセスの唯一のブラインドの過程になり、弱点です。

⑤スライダーにはガイドワイヤーを押さえる黄色いゴム製のストッパーがついています。ストッパーを外した状態で送ると抵抗が小さくなります。ただしオンのままでも送ることはできます。ストッパーを外した状態で送り込むと、抵抗が強くガイドワイヤーが送り込みにくいときの感触がわかりにくい気がして、個人的にはストッパーオンのまま送り込んでいます。

⑥ただ、針先をガイドワイヤーが通過する際にはガイドワイヤーが針先でこすれる「ギリギリ」とした音とともに若干の抵抗を感じるのが普通です。これを、ガイドワイヤーの通過障害の抵抗感と区別しなければなりません。通常の抵抗感以上の強い抵抗が見られた場合は、力任せに挿入するのは禁忌です。

この抵抗の強弱を見極めるのに、スライダーとYサイトを接続したままだとわかりにくいため、個人的にはYサイトを接続して送り込んで、ある程度ガイドワイヤーがすすんだら、Yサイトからスライダーを外して、ガイドワイヤーだけを送り込むようにしています。このとき母指でスライダーにガイドワイヤーを固定して、スライダーごと進めるように挿入します。

⑦このガイドワイヤー挿入過程は透視化で行うことが推奨されます。ガイドワイヤーが上大静脈に適正に留置されたかどうかはブラインドではわかりません。鎖骨下から挿入すると右内頚静脈に進む確率がそこそこありますが、透視下でもなんの抵抗もなく右内頚静脈に進むことが珍しくありません。一度透視下でCVCを実施すると、ブラインドではもうガイドワイヤー操作はしたくなくなります。

もしガイドワイヤーがどこかに引っ掛かり、正常に進まなければ、透視下では比較的容易に修正できます。戻しながら方向を変えるか、押し込みながら下に落とすか、それらを組み合わせるか。いずれにしろ、目視下で適正化できるので、この確実性に勝るものはありません。

ガイドワイヤーが適正なルートで適正に上大静脈に留置されていると思っても、縦隔が偏位している患者さんではどうも中枢側にガイドワイヤーが進んでいる、すなわち動脈内を進んでいるように見える場合があります。もし本当に動脈内ならば、この段階で修正すれば大事になりませんが、ダイレータ、カテーテルまで留置するとちょっと面倒なことになります。このときの静脈内留置の確認方法は、ポストスキャンで静脈内の留置を確認するのもよいですが、刺入点付近の情報しかないためやや不安です。ほかに方法は?ガイドワイヤーを慎重に進め、胸郭の範囲よりも下、横隔膜を越えて下大静脈まで通したら、ガイドワイヤーは上行大動脈→左心室ではないことが確実になります。その他、胸腔内でもなく、縦隔内でもない、つまり完全に確実に静脈系であることが証明できます。これもひとつの確認方法です。ただし奇静脈系に入り込んでいる可能性はわずかに残りますが・・・。いずれにしても、途中で心臓の刺激により期外収縮が頻発するようならやめましょう。

ガイドワイヤー挿入後はガイドワイヤーが抜けないように刺入点を圧迫しながら穿刺針だけを完全に抜去します。その後、下図のように挿入点を中指・環指で圧迫止血しつつガイドワイヤーを母指でループ状に上から圧迫し固定することで、その後のダイレータとカテーテルの挿入がスムーズになります。ちょっとしたコツですが、操作をスムーズに進めるうえで重要です。穿刺針を抜きながらループを作ってもよいです。

これを、中指で圧迫止血しながら示指と母指でガイドワイヤーをつまもうとするとかなり無理な指使いになり、指がつるおそれがあるのでおすすめできません。あるいは圧迫止血せずにダイレータ、カテーテルの挿入手順を続けると、内出血で血種が形成されたり、刺入点からかなり外出血し、汚染と感染の原因になるのでおすすめできません。血液が術野に多量に放出されると血液がグローブにつき、その血液でカテーテルキットの物品がグローブに付着し、意図しないところで落下したり、針を離したつもりで離れずに針刺し事故になったりと、いいことはありません。なるべく術野はクリーンな状態を維持しましょう。

穿刺針を抜去した後、ガイドワイヤーには血液が付着しますが、血栓形成が気になる場合はこの血液はふき取ったほうがよいでしょう。

ガイドワイヤートラブル

ガイドワイヤーが静脈内に正しくスムーズに挿入・留置されればカテーテルも適正に挿入されることになります。逆に言えば、ガイドワイヤーの挿入が困難であった場合や不適当であった場合は、ダイレーター挿入→カテーテル挿入と進む過程で大きい侵襲が加わり、重大な合併症を発生させる原因になります。せっかくうまく穿刺が成功しても、ガイドワイヤーの挿入に失敗すれば元も子もありません。CVCにおいては穿刺が成功すればよし、では決してなく、ガイドワイヤーの正常留置が最大の山場です。

穿刺が成功した後で穿刺針と体との固定が甘い場合や、患者の体動・呼吸運動により穿刺針が固定できない場合は、穿刺針先端が動いてしまうことでガイドワイヤートラブルが発生しやすくなります。ですが、この操作の過程は、ちょうどエコーとX線透視の「はざま」になり、唯一ブラインドの過程になります。そのため、トラブったときにその原因が特定できないことが多く、非常に厄介です。ガイドワイヤー挿入時のトラブルは、下記のような状況が考えられ、あわせてトラブルシューティングも検討します。

ガイドワイヤートラブル①:後壁穿刺になっている

  • 静脈穿刺に一度は成功したが、ガイドワイヤー挿入時までに穿刺針先端が動いて後壁まで貫通していた場合、通常は強い抵抗があってガイドワイヤーは進みにくい。しかし「穿刺は成功している」という思い込みがあると、抵抗が強くとも強引にガイドワイヤーを進めてしまいかねない。
  • 無理に進めると血管外の組織の隙間や近接した動脈内をすすむことがある。
  • 動静脈が重なっていた場合は、動脈穿刺から動静脈ろうに進展する危険性がある。
  • 浮腫が強い場合、簡単に抵抗なくガイドワイヤーが進んでしまうリスクがある。
  • 組織間をガイドワイヤーが進んでも、痛みなどの自覚症状はかならずしも出現しない。
  • PICC用の親水コーティングのガイドワイヤーだと、もともと抵抗が小さいため、容易に組織間を進んで行ってしまうリスクがある。

⇒ガイドワイヤー挿入時に通常より抵抗が強い場合は無理に進めず、一度ガイドワイヤーを抜いて再度逆流血を確認する。逆流がない場合は貫通しているか抜けている状態である。貫通している場合はゆっくり引き抜いてスムーズな逆流血が得られればそこで固定してガイドワイヤーを再挿入する。ガイドワイヤーの正常留置に今一つ確信が持てない場合、金属針を抜去した後、ダイレータの挿入前にカニューラ針のカニューラだけをガイドワイヤーから挿入し、いったんガイドワイヤーを抜いてカニューラからの逆血を確認すれば確実になる。その手順は下記に示す。

①金属針で静脈穿刺が成功

②ガイドワイヤー挿入

③金属針抜去

④カニューラ針とカニューラを分離

⑤カニューラのみ挿入、入れにくければ皮膚だけダイレータで拡張してもよい

⑥ガイドワイヤー抜去、カニューラとシリンジ接続

⑦逆血を確認

⑧シリンジを外し、再度ガイドワイヤーを挿入

⑨カニューラを抜去、ダイレータ挿入~カテーテル挿入

 

ガイドワイヤートラブル②:穿刺針先端が後壁に接している

  • 穿刺成功後、後壁を貫通しなくとも後壁に先端が接するぐらい近づくことがある。そうなると後壁にガイドワイヤーが当たって進まなくなる。
  • 無理に進めるとガイドワイヤーで後壁を穿通したり、ガイドワイヤーが末梢側に進んでしまう場合もある。
  • さらに、ガイドワイヤーに抵抗がある状態で力を加えると、ガイドワイヤーで後壁を押す反作用で穿刺針自体は逆方向の力が加わり、最終的には抜けてしまう。

⇒ガイドワイヤーを少し進めた時に抵抗があれば、穿刺針を寝かすように角度を小さくすると壁当たりは緩和される。抵抗があった時に、いったんガイドワイヤーを抜いて逆流血を再確認する。ガイドワイヤーが穿刺針先端でトラップされ抜けなくなった場合は、無理せず穿刺針ごと引き抜く。

ガイドワイヤートラブル③:穿刺針が静脈弁に接している

  • 後壁に先端が接している場合と同様、静脈弁に接しているとガイドワイヤーの挿入が困難になる。
  • 無理に進めるとガイドワイヤーが末梢側に進んだり、穿刺針先端でトラップされる可能性がある。
  • ガイドワイヤーに抵抗がある状態で力を加えると、ガイドワイヤーで後壁を押す反作用で穿刺針自体は逆方向の力が加わり、最終的には抜けてしまう。

⇒プレスキャンの際に、静脈弁に当たりそうな部位を認識し、そこからの穿刺は避ける。ガイドワイヤーが穿刺針先端でトラップされ進まなくなった場合は、無理せず穿刺針ごと引き抜く。

 

ガイドワイヤートラブル④:穿刺針先端が分枝に迷入している

  • スムーズな逆流血を認めても分枝に穿刺針先端が接しているとガイドワイヤーの挿入が困難になるか分枝に迷入する。
  • 無理に進めるとガイドワイヤーが末梢側に進んだり、穿刺針先端でトラップされる可能性がある。
  • ガイドワイヤーに抵抗がある状態で力を加えると、ガイドワイヤーで後壁を押す反作用で穿刺針自体は逆方向の力が加わり、最終的には抜けてしまう。

⇒超音波で本幹内腔に先端があるかどうか確認する。ガイドワイヤーが穿刺針先端でトラップされた場合は、無理せず穿刺針ごと引き抜く。

 

ガイドワイヤートラブル⑤:穿刺針が抜けている、前壁穿刺が不完全

  • 体表から血管まで深いような肥満例、呼吸性変動が強く、吸気で完全に虚脱するような例では、穿刺が一度は成功してもその後抜けやすい。
  • 静脈前壁を穿刺できたように画像上見えても、前壁がたわんでいるだけで完全に穿刺できていないことがある。その状態でガイドワイヤーを進めてもガイドワイヤーには抵抗があって進まず、針も抜ける方向に力がかかる。
  • ガイドワイヤー操作をやり直した場合は抜けやすい。

⇒穿刺後、針先が動かないようしっかり体表と穿刺針を固定する。肥満例ややり直し例ではガイドワイヤー挿入直前に逆流血を再確認する。逆流血を再確認した際、軽い陰圧でスムーズな逆流血が得られない場合、血管周囲にたまった血液を吸引している場合があるのでその見極めが必要。

ガイドワイヤートラブル⑥:針の刺入角度が大きい

  • 体表面では45°の刺入角度でも静脈の走行は深さが変化していることがあるので、静脈前壁レベルの穿刺点では穿刺角度が大きくなっている場合がある。特に腋窩静脈は外側から急角度で体表面方向に浮上する。
  • ガイドワイヤーが後壁に垂直に近い角度で当たれば、抵抗が強く進まないか、場合によっては末梢側へ進んでしまうこともある。

⇒穿刺部位と穿刺角度を事前に十分検討する。腋窩静脈穿刺では外側寄りからの穿刺は避ける。角度が大きい場合は穿刺後慎重に穿刺針の角度を小さくするように調整してもよい。

 

ガイドワイヤートラブル⑦:途中で進まなくなる

<例1:右鎖骨下穿刺>

<例2:右鎖骨下穿刺>

  • 穿刺は正常に成功し、ガイドワイヤーも途中までスムーズに進むが、その後強い抵抗があって進まない場合は、先端が分岐に引っかかっているか、中枢側での血栓閉塞を疑う。
  • X線透視下では、引っかかっているだけならガイドワイヤーの回転・スライドで解決する。それでも進まない場合は血栓閉塞を疑う。このとき、造影剤を流してみると、閉塞した血管と側副血行路が明確になる場合がある。
  • 無理に進めると血栓と針先でガイドワイヤーがトラップされ抜けなくなる。また無理に留置しても血栓が移動したり、増加するだけでメリットはない。

⇒抵抗が強い場合は無理にガイドワイヤーは進めないようにする。血栓閉塞の所見が得られた場合は、穿刺挿入部位を変更する。トラップされて抜けないときは穿刺針ごと抜去する。

ガイドワイヤー留置の確認

ガイドワイヤーが正常に留置されたかどうかの確認は非常に大切です。エコーを使った確認はポストスキャンを行って確認します。ただし、ポストスキャンでは刺入点付近の確認しかできず、少なくとも静脈内ではあるということは確認できても、ガイドワイヤー先端位置までは確認できない弱点があります。それでも最低限、ポストスキャンを行うべきでしょう。

X線透視下操作では、正常解剖が理解されている限り、確実にガイドワイヤーを適切に留置できます。ただし右内頚静脈からの挿入ではガイドワイヤーはほとんどまっすぐに上大静脈まで進みますが、右腋窩静脈ではなんの抵抗もなく内頚静脈方向に進んでしまうことがしばしばあります。透視下ではその修正は容易です。非透視下ではその予防や修正はかならずしもうまくいきません。非透視下でCVCを実施することのストレスのほとんどはここにあると、個人的には感じています。

鎖骨下_腋窩静脈穿刺で、非透視下での内頚静脈迷入の早期発見が可能な方法としては、ガイドワイヤーを挿入した後、頚部にエコープローブを当てて、内頚静脈内にガイドワイヤーが存在していないことを確認することです。具体的な方法としては、

  1. あらかじめ頚部方向まで広範囲に消毒しておき、頚部まであけた状態で処置を開始する。ガイドワイヤーが挿入されたところで頚部に直接プローブを当てて内頚静脈をスキャンする。
  2. ドレープの上から頚部にエコーゼリーをつけて、エアが入らないようにプローブを押し付けながら内頚静脈をスキャンする。
  3. ドレープの下から助手が頚部にプローブを当てて内頚静脈を観察する。エコーは別に用意するか、穿刺に使用したエコープローブを渡す。後者の場合、プローブが不潔になるので、再試行することになったらプローブカバーを新しくする必要がある。

などが考えられ、相応の工夫が必要になります。

また、ガイドワイヤーが深く入りすぎることで心筋を刺激し、心室細動などの致死的不整脈も場合によっては発生します。これもガイドワイヤーの留置過程を透視下で行うことで視覚的に予防できます。下図は実際にCVC実施時に発生した心室細動の例です。非透視下でしたが心電図モニター装着下であったため早期発見と早期の除細動で正常心拍に復帰したとのことです。ガイドワイヤーが心筋を穿通し、心タンポナーデを発症し死亡した例もあります(MEMO参照)。

CVCをX線透視下で実施することに対して抵抗感があるでしょうか。血管造影室に患者を移動させることに手間がかかるというのは理由にはなりませんが(患者は病院内の検査室・手術室・リハ室など頻繁に移動するのがあたりまえですから)、X線被爆の懸念があるということが抵抗感の理由に挙げられることがあります。CVCに要するX線照射量は、個人的な経験上は通常は3mGy程度です(最後の胸部レントゲン写真撮影を含めて)。この値がほかの検査と比べてどれくらいの意味を持つかというと、おおよその参考値ですが、胸部正面0.06mGy、腹部正面2.6mGy、腰椎側面5.6mGy、腹部CT25mGy、頭部CT50mGy、CAG800mGy、PCI3000mGy・・・などで、X線透視下CVCでの照射量は一言でいえば「たいしたことない」レベルです。安易に頻回にCTを撮影することのほうがよっぽど深刻です。そしてこの程度の被爆で防止できるCVCの有害事象は非常に多く、ときに救命的な最後の防潮堤にすらなります。その有益性は被爆のリスクを大きく凌駕するといって間違いないでしょう。可能な限りX線透視下で実施することをすすめます。

=MEMO=

○○病院 男性死亡、過誤認める ワイヤ挿入で心臓損傷 (2011.8.24毎日新聞)

  • ○○病院は23日、抗がん剤点滴などのため心臓につながる太い静脈にカテーテルなどを挿入された県内の70代男性が5月下旬に突然死した件に関し、調査専門委員会の調査結果を発表した。△△院長は「カテーテルを誘導するために静脈に挿入したワイヤが、心臓の内側から膜を突き破って出血し心停止に至った医療過誤だった」と説明し、病院側の過失を認めた。遺族には既に謝罪し、補償する方針という。
  • △△院長らによると、70代男性は入院患者5月31日に抗がん剤の点滴と栄養状態の改善のために、右鎖骨下から心臓につながる太い静脈にカテーテルとカテーテルを誘導するためのガイドワイヤを挿入した。約20分後に心停止状態になり、蘇生処置をしたが約1時間後に死亡した。
  • 病理解剖の結果、心臓と心臓を覆う袋「心のう」の間に400ミリリットルの血液がたまっており、心臓が血液に圧迫されて動かなくなったことが原因と分かった。また、右心室の筋肉に約15ミリの血だまりがあり、顕微鏡の観察で右心室の内側から、ごく細いものを突き通した跡と判断されたという。 △△院長は「心臓の手前までワイヤを通す施術だったが、何らかの原因で右心室までワイヤが入って、内側から突き通したと考えざるを得ない」と述べた。ワイヤは柔らかく、先端がJ字形になっており、△△院長らは「J字ワイヤで心臓を突き通す確率はきわめて低く、まれなケースだった」と説明した。