ポイント:CVCの目的を明確化し、適応を厳密化することにより、不要なCVCと合併症の絶対数を減らす。

有害事象が実際に発生した場合、まず問われるのは「そのCVCは本当に必要であったのかどうか」です。必要性が乏しい医療処置を実施し、おまけに合併症が発生すれば言い訳が難しいですね。万が一係争に発展した場合にも非常に不利になることが予想されます。事故った時に、「やんなきゃよかった・・・」になると悔いが残ります。患者さんも家族もつらいことになり、術者のダメージもmaxです。

まず目的と適応を明確にし、必要のないCVCは実施しないこと、CVC以外の他の代替手段がないかどうか検討することが大切です。それでCVCの実施総数が適正になり、CVC関連の有害事象の絶対数を入り口で抑制する、簡便で実効性の高い安全対策とすることもできるわけです。

医療事故調の提言にもありますが、CVCの目的・適応について、対象患者ごとに適応に合致しているかどうか、複数の医師やチーム内、あるいは多職種で検討・合議しコンセンサスを形成しましょう。CVCを実施することが決定した時にも、「なにがどうなったら抜去できるのか、抜去までに大体どのくらいの日数を要するのか」というところまであらかじめ予測し計画できれば、それだけ留置期間は短くなり、その分リスクを減らすことができます。こうした先読みは、より洗練されたCVC管理計画になります。

CVカテーテルの必要性が消失した段階で、抜去できるものは直ちに抜去することが重要な安全管理ですから、毎日その評価を行うことが大切です。「CVが入っているから安心」「せっかく入れたからもう少し入れとこう」とは思ってはいけません。逆です。CVカテーテルそのものが感染その他の「重大リスク」なわけですから。「今日、これ抜いていいか?抜けるのか?抜くためには何をしたらいいか?」という目でわたしは自分が入れたCVカテーテルをいつも眺めています。また、そういう文化を自施設に定着させるように活動してきました。

CVCは、その手技と手順、発生しうる合併症の類似性から、頚部、鎖骨下、鼡径などから静脈を穿刺し、中心静脈(上大静脈または下大静脈)ないしその近辺までカテーテルや医療器具を挿入留置するということが共通している手技は、すべて広義のCVCの範疇、すなわちCVC類似処置としてとらえるべきでしょう。“central venous” に “catheterization”するなら、それはすべてCVCと呼んでも不都合はありません。むしろこれらはすべて同じようなリスクを抱えた処置であると再認識することが、患者安全に寄与することになります。このようにして、CVCの適応とは、1.薬剤投与ルートと2.治療・診断器具の挿入・留置に大別されます。

薬剤投与ルート

末梢静脈からの投与が不適当で、中心静脈からの投与が必要な場合とは、血管傷害性が強い薬剤・血管外に漏出すると組織のダメージが大きい薬剤の投与、血管外漏出により持続投与が中断されると生命維持に支障がある場合、です。また末梢静脈路が確保できない場合、蘇生時など末梢静脈路の確保に時間がかかる場合も適応になります。まとめると以下の場合が薬剤投与ルートにおけるCVCの適応になります。

  1. 化学療法
  2. 多量の昇圧剤
  3. 刺激性・腐食性・高浸透圧性薬剤
  4. 高カロリー輸液;TPN;Total Parenteral Nutrition
  5. 末梢静脈確保困難時
  6. 蘇生時

5.の場合は他に代替手段がないか十分検討し、安易にCVカテーテルを導入するような考えが習慣化しないように注意しましょう。エコーガイド下末梢静脈ライン留置の方法もあります。

参考:漏出性障害を生じる薬剤(田村敦志:Medicina 40: 1002. 2003 一部改)

  • 抗がん剤:発泡性薬剤(壊死起因性抗がん剤;vesicant drug)、刺激性薬剤(炎症性抗がん剤;irritant drug)※「抗がん剤の血管外漏出の予防と対応ガイド」が詳しい
  • 電解質補正用製剤:カルシウム塩、カリウム塩
  • 高浸透圧性毒性:高張性ブドウ糖(>10%)、造影剤 D-マンニトール ※浸透圧比約3(浸透圧800~1000mOsm/kgH2O)の輸液が末梢静脈から投与できる限界とされている
  • 非生理的pH:フェニトイン、チオペンタール、重炭酸ナトリウム、カンレノ酸カリウム、フロセミド
  • 血管収縮作用:ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ネオシネジン、エホチール
  • その他:アシクロビル、メシル酸ガベキサート※、ジアゼパム、ジゴキシン、プロポフォール、塩酸バンコマイシン

※メシル酸ガベキサート:①投与速度と重症度が相関する、②投与中や直後のみではなく、3~4週後、あるいは数か月後に発症することがある、③投与中に血管外漏出がなくても発症することがある(吉崎ら. 皮膚病診療, 27:1297, 2005)

蘇生時の適応は、急速輸液/輸血目的で内頚静脈などにS-Gカテーテル用の太いシースや太い静脈留置針を挿入する必要があるような場合、胸骨圧迫と並行して大腿静脈からCVカテーテルや静脈留置針を挿入する場合などが挙げられます。こうした緊急時では、ランドマーク法での穿刺挿入が一般的ですが、意外に時間がかかることも多く、Quick look法穿刺も有用です。

 


治療・診断器具の挿入・留置

治療・診断器具の挿入・留置における適応は、以下のようになります。

①CVポート埋め込み

 

② Swan-Ganzカテーテル(肺動脈カテーテル)挿入

 

③一時ペーシングリード挿入

④ペースメーカー類の植込み(永久ペースメーカー、ICD;埋め込み型除細動器、CRT-P;両心室ペースメーカー、CRT-D;両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器)

⑤透析用カテーテル挿入(非カフ型ブラッドアクセスカテーテル;ショルドンカテーテル、カフ型ブラッドアクセスカテーテル;テシオカテーテル、パリンドローム)

 

⑥電気生理学的検査用リード挿入

⑦ECMO(Extracorporeal membrane oxygenation);体外式膜型人工肺、PCPS(Percutaneous Cardio-Pulmonary Support);経皮的心肺補助法

⑧IVCフィルター挿入

⑨CVP(中心静脈圧)測定、ScvO2測定目的のCVカテーテル挿入

 

これらの治療・診断器具の挿入・留置処置すべてを記録し、手技や安全対策を統制することは現実的には困難ですが、すべてCVCと同類の「危険手技」である、ということは銘記しておきたいです。

また、適応を明確化する過程で、原則として適応外と考えられる状態でないかどうか、あわせて検討することが必要です。適応外であれば当然実施することは不合理であり、メリットはなくリスクの上昇という負の側面だけが残ります。特に栄養に関しては、経腸栄養の重要性が近年強調されてきており、栄養目的でのCVCは限定的・補助的になりつつあります。そのように他に代替手段がないかどうか常に考え、不要なCVCを避ける心構えが必要です。

 

適応外;

  1. 明らかに腸管の使用が可能な場合(脳出血、脳梗塞後遺症、痴呆、植物状態、各種神経疾患、頭頸部癌など)の栄養目的
  2. 5~7日以内に腸管栄養を開始することが可能な場合の栄養目的
  3. ほかに方法があるにもかかわらず単に水分補給のためのラインとしての挿入
  4. 治療不能な状態にある患者

 

TPNの実施基準;

  1. 消化管の完全閉塞(腸閉塞、腹膜炎)
  2. 消化吸収障害をともなう病態(短腸症候群、クローン病、放射線腸炎、重症下痢など)
  3. 腸管の安静を必要とする病態(消化管縫合不全、急性膵炎など)
  4. 積極的な代謝管理を必要とする病態(肝不全、腎不全、敗血症、熱傷、大手術後など)

CVCの適応とリスク評価:チェックリスト

適応とリスク評価を洗い出すのはちょっと煩雑な作業かもしれません。簡便にチェックするためのチェックリストを作成しましたので、ご参照ください。

CVC check list