ポイント:カテーテル先端の位置決めは、合併症予防において重大な意味を持つ。

 

カテーテルの挿入法とガイドワイヤー遺残の防止法

カテーテルはダイレータ同様、ガイドワイヤーをループ状にして挿入部を圧迫しながら挿入すると出血も抑えられスムーズです。

 

次にガイドワイヤーの遠位端が十分出るところまでカテーテルを通し、ガイドワイヤーの遠位端を非利き手で確実に把持します。把持した手は自分の体幹に固定し、カテーテルと一緒にガイドワイヤーが深く体内に挿入されないように注意しながらカテーテルだけを進めます。このような手順をつねに順守すれば、カテーテルの体内への遺残は回避できます。

 

カテーテル先端位置の決め方

カテーテル挿入において重要なポイントは、適切なカテーテル先端位置はどこか、ということです。先端の位置によっては重大な合併症のリスクになります。そのリスクを回避できる位置に留置するということが基本ポリシーになります。

重大な合併症の一つに心タンポナーデがあります。これは心のう内に液体が貯留することで発生します。カテーテル先端を心外膜の領域内に留置させた場合、留置直後は問題なくとも時間経過とともになんらかの原因でカテーテルが穿通したり、血管外漏出してしまうこともあり、そこから心タンポナーデとなる可能性が発生してしまいます。これは短時間で致命的になる可能性が高いためできるだけ予防することが必要です。それには、カテーテル先端を上大静脈内でかつ心外膜の領域外になるように留置すればよいことになります。これは単純レントゲン写真では気管分岐部かそれよりやや上といわれています。そこにカテーテル先端がくるように挿入長を調整すればよいわけです。

ただし横隔膜の位置は呼吸運動にともなって先端位置は数cm上下に移動し、それにともなって縦隔も上下運動します。呼気位では横隔膜が上がり縦隔は上に移動するので、気管分岐部も上に上がって相対的にはカテーテル先端が心臓方向へ進む方向に動きます。とすると、最大呼気位で気管分岐部にカテーテル先端が来るように調節すれば、日常生活上はそれよりも深くはならないので、仮にカテーテルが穿通しても心タンポナーデは発生しないことになります(縦隔か胸腔に液体は貯留する可能性はありますが)。こうした先端の位置決めは、ブラインド操作では不可能なので、ここもX線透視下の操作が強く推奨されます。

 

 

カテーテルを進めようとしてもガイドワイヤーと一緒にたわんでしまい、なかなか進められないときがあります。ブラインドではやみくもに出し入れするだけしかできませんが、透視下ならば最適な力の入れ方、進める方向がわかり、確実に挿入できます。なお、このようにたわみやすい場合は、カテーテルを進める方向に力を加えつつ、それと反対側、つまり抜く方向にガイドワイヤーを引っ張りながら、テンションをかけながらだとカテーテルが進みやすいです。下の動画のように遠位からの穿刺挿入では、カテーテルははじめ深く下に向けて進み、静脈内を中枢側に向かって浮き上がるような走行となり、つまりアップダウンの走行になります。このラインだと、カテーテルを押してもうまく力が伝わらず、たわみやすくなってしまいます。なんとかカテーテルは進んでいきましたが、いくらやってもカテーテルが進まないと、そのうちなんかしらの合併症や困ったことが起きてきます。こうしたマイナス面からも、腋窩静脈からのアプローチは遠位からでなく、なるべく鎖骨に近い近位からのほうがよいわけです。

 

この位置決め法に従うと、カテーテル留置の確認のレントゲン写真も、通常とは異なり「呼気位」で撮影することになります。なお、カテーテルキットの添付文書にも心タンポナーデ防止目的で「カテーテルを右心房又は右心室に挿入あるいは留置しないこと」と明記されていますので、慣習に従って深く留置すると事故のリスクがあるだけでなく、万が一事故が現実化した場合、「添付文書とは異なる処置をした」という点で責任追及される恐れがあります。

左側からのカテーテル留置のリスク

もうひとつのポイントは、心臓の拍動、呼吸運動、上肢帯の運動によりカテーテル先端は実際はかなり動いており、カテーテル先端が血管壁に強く押しつけられていたり接していると、その物理的刺激が血管壁を損傷する原因になりうることです。さらに、高浸透圧性薬剤、刺激性薬剤は、化学的刺激となり同様に血管壁のびらん・損傷の原因となりえます。これで最終的には静脈壁を穿孔させる可能性があります。心タンポナーデにはならなくとも、胸腔内輸液になる可能性があるわけです。

こうしたリスクを回避するためには、血管壁に対してカテーテル先端が鈍的な角度で当たっていないことが重要です。ところが、左からの挿入ではどうしても壁当たりしやすくなってしまいます。

当たってしまう場合は上大静脈の壁にパラレルになるよう留置するか、左腕頭静脈と上大静脈の合流地点程度に浅くするしかありません。下図でいうとZone Cということになります。

 

しかし、このZone C領域の血管径、すなわち左腕頭静脈の径は実際はどうかというと、ここは中心静脈狭窄好発部位の1つで胸骨と大動脈弓の圧迫が狭窄の原因の1つと考えられているぐらい、実際はかなり狭小で圧排されています。この位置にCVカテーテルの開口部を留置し、刺激性薬剤を投与するのは、血管を傷害し左腕頭静脈が閉塞するリスクになるのではないか、という懸念が発生してくるわけです。

ガイドワイヤーが通過してもカテーテルは通過しない、あるいは通過させるのに非常に強い抵抗があるといった場合は、閉塞まではしていなくとも狭窄がないかどうか疑う必要があります。禁忌でなければ造影剤を流して狭窄を証明し、その血管はカテーテル留置に不適当として抜去することになりますが、これでさらなる合併症のリスクを低下させ、安全性に寄与したことになるので、せっかくカテいれたのに・・・と、がっかりしないでください。

<左腕頭静脈狭窄>

 

一方、パラレルになるように留置するとどうしても右房の近くまで深く留置せざるを得なくなり、心タンポナーデのリスクが上昇します。こうしたジレンマが左からの挿入では発生しやすくなるので、右側からの穿刺挿入が第一選択となっています。

しかし、カテーテルが血管壁や右心房を穿通しなくとも、浸透圧の高い溶液が壁を浸透し血管外へ漏出する現象(血管外漏出)が知られており、そこから心タンポナーデ胸腔内輸液・水胸に進展することがあります。つまりカテーテルが血管壁に接しているだけでもリスクになるのです。カテーテル先端位置の決め方には十分すぎるほどの慎重さが求められます。

カテーテル留置時の空気塞栓予防

カテーテルを挿入時に、サブルーメンが解放されているとそこから空気が引き込まれて空気塞栓となるリスクが発生するため、マルチルーメンカテーテルではカテーテル挿入前にニードルレスシステムのプラグをサブルーメンの接続部にはめこんでおくのが安全です。

逆流血の確認

カテーテル挿入後はメインルーメンを含めすべての末端接続部が大気圧になるべく開放されないよう注意します。次に生食やヘパリン生食で回路内の空気を抜いて逆流血を確認し、フラッシュします。フラッシュするまでに時間がかかると予想外に早く血栓で閉塞してしまうことがあるので迅速に行いましょう。逆流血がスムーズに確認できない場合は血管外留置を除外するような画像検査(CTなど)を実施するか、画像ではっきりせず逆血もない場合は、重大事故防止の観点からそのカテーテルは使用できないものとして抜去するかどうかを含め、血管外科を含め複数人で協議するのが無難です。特に透析用カテーテルでは、血管外に急速に返血することが致死的になる可能性が高く、そうした事例も報告されているため、カテーテル位置は慎重に評価しなければなりません。

この点は事故調提言でも強調されています。

提言 7

留置したカテーテルから十分な逆血を確認することができない場合は、そのカテーテルは原則使用しない。特に透析用留置カテーテルの場合は、致死的合併症となる可能性が高いため、カテーテルの位置確認を確実に行う必要がある。

出典:日本医療安全調査機構

なお、COVIDIEN SMAC プラス マイクロニードルタイプ フルキットではダイレータ挿入時に使用するものと同じく、ガイドワイヤーをカテーテルに通すのを容易にするインサータが付属しています。

 

=MEMO=

点滴ミス気付かず患者死亡 (2003.6.29中日新聞)

  • ○○病院に脳出血で入院していた○○県内の50代の男性患者が、胸の内部に点滴液がたまり、呼吸不全で24日に死亡していたことが分かった。病院側はミスを認めて遺族に謝罪。○○署は業務上過失致死の疑いで捜査している。
  • 病院の説明によると、男性は今月14日に小脳血腫の除去手術を受け、病院側は栄養補給などのため右鎖骨下から心臓近くの静脈に、点滴用カテーテルを挿入した。男性は23日に発熱し、カテーテルから菌が感染した疑いがあったため、同日午前11時ごろ、右鎖骨下のカテーテルを抜き、左鎖骨下から新しいカテーテルを挿入した。
  • ところが、翌24日午前4時ごろ、男性の容体が急変。胸の中にたまった点滴液が肺や心臓を圧迫し、男性は呼吸器不全で同6時57分に死亡した。病院は同日午前に○○署へ届け出た。
    左鎖骨下にカテーテルを挿入したのは脳神経外科の医師。男性の主治医ではなかったが、十分な経験があり、男性の手術にも参加したという。
  • 28日に会見した××脳神経外科部長は「レントゲンで(左鎖骨下のカテーテルの)挿入位置が正しいことは2人の医師がチェックした」と説明。2時間ごとに血圧や脈拍を測るなどのチェックもしたという。しかし、手術以降、意識のない状態だった男性が、カテーテルが外れるような体の動きをすることはできないことから、病院では、静脈に適切に挿さっていなかった挿入ミスか、カテーテルから点滴液が漏れた可能性が高いとみている。