ポイント:MBPはCVC実施の標準的感染対策である。

CVCを実施する際、MBP(maximal sterile barrier precautions)は常識であり必須です。MBPとは、

  • キャップ
  • マスク
  • 滅菌手袋
  • 滅菌ガウン
  • 体全体を覆う大きい滅菌ドレープ

で無菌的に処置をすることです。加えてエコーガイド下穿刺では滅菌プローブカバーが必要です。MBPはCVC実施中の感染のチャンスを減らすという意味ですが、特にセルジンガー法のCVCではガイドワイヤーが長いためにMBPがなければガイドワイヤーが容易に不潔領域に接触してしまうので、エビデンス云々というよりも、事実上MBPでなければ実施できません。MBPはこれらに加えてゴーグルを含めることがあります。これは術者が感染するのを回避するという意味になります。

カテーテルキットによっては、同梱のドレープが体全体を覆うほど大きくない場合がありますが、ドレープを追加して実施するのが望ましいでしょう。

穿刺挿入部位によってそのリスクには差がありますが、CRBSIの回避は中心静脈路の管理において非常に重要な課題です。死亡率も高く、治療に要する金銭的時間的コストもかさみます。

このリスクをできるだけ小さくする努力の一環として、穿刺挿入時のMBPの励行があります。「そういうふうに教えられなかった」「習慣としてこれまでやっていない」「経験上感染率に差はない」「ただ面倒」そうした理由付けで実施していないこともあるかもしれませんが、MBPでのCVCの実施は、患者をどれだけ大切に考えているかのバロメーターでもある、と思います。

皮膚消毒については、術野はなるべく広い範囲をグルコン酸クロルヘキシジンアルコールないしポピヨドン液で消毒します。クロルヘキシジンの場合、「0.5%を越える消毒用グルコン酸クロルヘキシジンアルコール製剤の使用を推奨する」ということがコンセンサスです。

グルコン酸クロルヘキシジンアルコールは乾燥が速く、消毒効果が短時間で最大になりやすいので、乾燥を待つことがなく手技の進行の妨げになりにくい利点があることと、グルコン酸クロルヘキシジンは乾燥すると薄い膜状に残り、消毒の残存効果が得られるといわれ、挿入後のカテーテル感染予防にはヨード剤よりも有利と考えられます。透明な製剤と色つき製剤がありますが、透明な製剤は消毒範囲がわからなくなることが欠点とされ、改善策として色つき製剤が開発されたという経緯があります。たしかに色つき製剤は消毒範囲がわかりますが、だいだい色は特に見た目が良くないので処置後にそれを水やアルコールでしばしば落としてしまうために、クロルヘキシジンの残存効果が消失してしまうというジレンマがあります。

出典:吉田製薬

一方ポピヨドン液は最大の消毒効果が得られるまでに2-3分かかり、それが待てないせっかちな術者が多いため(筆者含む)、不十分な消毒効果のうちに処置を開始する傾向があることが難点です。なお処置前にポピヨドン液をハイポアルコールで脱色するというのはさらに消毒効果を低下させる行為ですからやるべきではありません。

消毒の範囲は一般論としてなるべく広い方がよく、右鎖骨下穿刺を例にとると肩峰ー乳頭ー正中線ー頚部の範囲を消毒します。無色のクロルヘキシジン製剤による消毒の範囲がわかりにくいと言っても、厳密な範囲の設定はもともとないので、だいたい広範囲に消毒しておけばよいので、個人的には無色のクロルヘキシジンで無問題と考えています。

消毒・穿刺・固定に難渋するような体毛の密生があれば、サージカルクリッパーとロール式粘着シートなどを使用してドレシング剤貼付範囲を除毛します。かみそりでの剃毛は表皮を傷つけ、感染防御の面から不利になるので行いません。「剃毛を行うと、必ず小さな創ができ、そこに細菌感染を起こして SSI(創感染)の発生率が上昇するためである。除毛に関しても同様の 危険性があるので、創がつきにくい電気クリッパーを使用して、手術直前に行うことが推奨される」と、手術医療の実践ガイドライン( 第7章手術部位感染防止)にもあります。CVCにおいても刺入部感染予防、CRBSI予防は重要な課題なので、これにならうほうがよいでしょう。

 

穿刺部位周辺に心電図の電極や貼付剤の粘着剤がついていれば細菌増殖の温床になるので、リムーバーやアルコール綿で除去します。

実施前には手術に準じた手洗いをするかアルコールジェルやウェルパスのような手指消毒液で手指消毒します。

清掃した直後の室内での実施はほこりが舞っているので避けたほうがよいといわれています。
緊急時、蘇生時など、無菌操作の遵守が確実でない場合のCVCは、48時間以内の可能な限り早期に、きちんと無菌的操作でカテーテルを入れ替えることがCDCガイドラインでは推奨されています。CDCガイドラインの抜粋を掲示します。

Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections, 2011
血管内カテーテル関連感染防止 CDCガイドライン2011

https://www.cdc.gov/hai/pdfs/bsi-guidelines-2011.pdf

http://hica.jp/cdcguideline/bsi-guidelines-2011jp.PDF

<中心静脈カテーテルに関する勧告>等

  • 感染性の合併症を減らす中心静脈留置の推奨部位と機械的な合併症(例えば気胸、鎮骨下動脈穿刺、鎖骨下静脈裂傷、鎖骨下静脈狭窄、血胸症、血栓症空気塞栓症とカテー テルの誤留置)の起こる危険性に対してのリスクとベネフィットを比較検討してください。
  • 成人患者での中心静脈アクセスは大腿静脈の使用を避けてください。
  • 成人患者では非トンネル化CVカテーテル留置で感染のリスクを最小にするために、内頚静脈や大腿静脈ではなく鎖骨下静脈を使用してください。
  • 中心静脈カテーテル留置に超音波が利用できるならば、血管内留置試技回数や機械的合併症を減らすために、超音波ガイドを使用してください。超音波ガイダンスは、その技術を完全に訓練されたものによってのみ使用すべきです。
  • CVカテーテル、PICCの挿入またはガイドワイヤーを使用した交換時に、キャップ、マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋、大きな滅菌フルボディドレープの使用を含む高度滅菌バリアプレコーションを使用してください。
  • 無菌操作の順守が確実でないとき(すなわち医学的に緊急で挿入されるカテーテル)、できるだけ早く(すなわち48時間以内)カテーテルを交換してください。

エコープローブには滅菌カバーを装着します。装着手順はプローブカバーと長軸像穿刺用ニードルガイドの記事を参照してください。

=MEMO=

An Intervention to Decrease Catheter-Related Bloodstream Infections in the ICU
Peter Pronovost, M.D., Ph.D., et al N Engl J Med 2006; 355:2725-2732

  • 実施前の手洗い
  • 高度無菌バリアプリコーション
  • クロルヘキシジン消毒
  • 大腿静脈はなるべく使用しない
  • 不要になればすぐ抜去

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CRBSIは最大66%減少する