ポイント:CVC実施中の体位はTrendelenburg体位にこだわる必然性はない。

体位取りの考え方と方法

CVC実施中の体位は、上半身からのアプローチであれば血管の拡張と空気塞栓予防目的で15°程度の頭低位・骨盤高位のTrendelenburg体位とするのが標準手技と以前からいわれています。しかしこの体位は、

  • 傾斜が可能なベッド(手術室等)以外ではとりにくい
  • 意識のある患者では苦痛が大きい
  • 脳圧亢進や心負荷が禁忌の患者では実施できない
  • 嘔吐した場合、誤嚥・窒息のリスクがある
  • 転落のリスクが上昇する

というデメリットがあります。

加えて、Trendelenburg体位が標準とはいっても、

  • 細径穿刺針を使用したセルジンガー法で、処置中大気圧に開放しないよう注意すれば空気塞栓は予防可能
  • エコーガイド下穿刺で実施するのであれば極端な虚脱血管以外はそれほどの血管拡張は図らなくとも穿刺の確実性は低下しない

と考えられるため、伝統的なTrendelenburg体位は現代では重視しなくてよいと個人的には考えています。せいぜい多少下半身を上げるような体位で血管の拡張を図るくらいでもよいでしょう。このTrendelenburg体位が確実な血管拡張効果を発揮するということに疑問を呈するリサーチもあります(memo参照)ので、現代では必須の手順とはいえないでしょう。

ただし、鎖骨下_腋窩静脈穿刺の場合、静脈が虚脱している場合は穿刺側とは反対側の肩と腰の下にクッションや折ったバスタオルを置き、わずかに穿刺側が下側になるような体位をとると、著明な血管拡張効果が得られるので、経験上これは非常に有用です。患者の負担もわずかです。

患者が不快になったり苦しくなったりすると、「場」が不安定になり、結果として処置上のトラブルを誘発するので、すべてにおいて極力リラックスできる環境を整備することが大切です。そのためのひとつの工夫として、支持棒を頭部付近に設置すると、ドレープが顔にかかったときの息苦しさを軽減するようなスペースをつくることができます。これで患者の不快感や不穏な動きを防止し、安定した実施環境を作ることができます。顔に布がかかると閉塞感や暑さで不穏になる患者はけっこういます。ちなみに、この支持棒は麻酔器の回路の支えを流用したものです。

頚部_内頚静脈穿刺の場合の体位は、頭部は穿刺側と反対側にゆるく傾けますが、傾ける角度が大きいと動静脈の重なりが大きくなるといわれるので、傾けすぎないようにします。患者が楽に頚部を回旋できる程度でよいでしょう。

鎖骨下_腋窩静脈穿刺の場合は、プローブをswing scanする動きで、プローブの動く範囲が大きいので、プローブがあごや顔面に接触しない程度に頭部を反対側に傾けます。肩関節を外転させて腕を横に伸ばした方が、腋窩静脈が直線化して穿刺が有利になるともいわれますが、エコーガイドで描出する範囲は穿刺部位のせいぜい3cm程度なのでこの範囲ならば直線として扱っても支障ありません。腕を伸ばすと腕の置き場所や術者の立ち位置に制限が生じてくることにもなるので、個人的には腕は体幹にぴったりつけて鎖骨下_腋窩静脈穿刺を行っています。

大腿静脈穿刺の場合は、股関節を少し外転・外旋させるような体位が穿刺しやすいと思われます。

体位がしっかりとれたら入念にプレスキャンを行います。「段取り八分」といいます。プレスキャンでいい穿刺ポイントを見つけ、まあ大丈夫だろうと思えれば、本穿刺もたいていうまくいくでしょう。詳細はプレスキャンの記事をご覧ください。

=MEMO=

The effectiveness of Trendelenburg positioning on the cross-sectional area of the right internal jugular vein in obese patients.  Ozkan Onal, et al  Pak J  Med Sci 2015 Vol.31 No.4

  • Trendelenburg体位が肥満患者のIJVの径を有意に増大させることはなかった。
  • かえって径が減少した被験者もいた。