ポイント:穿刺時は動静脈を確実に区別し、少ない穿刺回数で成功することを目標にする。

ここでは血管穿刺の基本的注意点に限定して解説します。エコーガイド下穿刺における具体的な穿刺部位、穿刺法、穿刺針の持ち方などはエコーガイド下穿刺のカテゴリを参照してください。

エコーガイド下静脈穿刺の特徴と注意点

エコーガイド下穿刺では目標の静脈も穿刺過程も目視しながら行うので、ランドマーク法のような試験穿刺は不要です。また、穿刺が成功したかどうか確認するために、穿刺途中で陰圧をかけながら穿刺針を進める操作も不要です。静脈壁を穿刺した手ごたえがあり、エコー画像上で穿刺されたことを確認したあとで陰圧をかけるようにします。穿刺途中で陰圧をかけると、微細な組織片や血栓が穿刺針に詰まり、画像上で血管穿刺が成功していても血液が吸引されないことがあり紛らわしくなるため避けましょう。

エコーガイド下穿刺は視認しながら穿刺する利点を活かすことと、後壁穿刺による動脈・神経・胸郭などを穿刺するリスクを回避するため、前壁穿刺で成功させ、後壁穿刺しないようにトレーニングします。

静脈壁は非常に薄く、静脈圧も低いため、穿刺針をただ押し付けていくだけだと壁が徐々にたわみ、後壁まで一気に穿通してしまう可能性があります。そこで、静脈前壁に到達するまでは穿刺針はゆっくり進めてかまいませんが、静脈前壁に到達し前壁が陥凹するぐらいテンションがかかったところで、すなわちハートサインが見えたところで、ある程度勢いをつけて一気に前壁だけを穿刺するようにします。一気に穿刺してすぐに少し引き戻すような操作をすると、穿刺針先端は内腔にピタリととどまります。そうした技術や力加減がここでは必要になります。これはやや高度な穿刺技術が必要で、トレーニングが必要です。

血管内脱水で静脈が虚脱していたり呼吸性変動が大きかったりすると、先端をとどめるべき血管内腔のスペースが狭くなるので、穿刺は一層難しくなります。その場合は輸液負荷・体位調整・バルサルバ手技(息こらえ)などで血管拡張を図ります。ただし息こらえできるのは通常ごく短時間なので、血管前壁を穿刺する直前に息こらえを指示し、すばやく穿刺を成功させる必要があります。また息こらえをやめさせたときに急激に血管が虚脱し、それで針が抜けてしまう恐れがあること、大きく吸気を再開することで強い陰圧がかかり空気塞栓のリスクが上昇することなどの懸念があり、必ずしも安全・有利な方法とは言えません。

下の動画はバルサルバ手技で拡張させた右内頚静脈です。

ここまでをまとめるとエコーガイド下穿刺では、

  • 試験穿刺不要
  • 穿刺途中の陰圧不要
  • 前壁穿刺が前提
  • 静脈穿刺技術はエコー操作とは別のトレーニングが必要

静脈穿刺成功の確認は、

  1. 静脈前壁を貫いた「プツッ」という手ごたえがある
  2. 画像上、静脈内腔に穿刺針先端の高輝度な点が描出される
  3. 静脈壁の陥凹が急激に元通りに回復する
  4. シリンジに陰圧をかけると血液が吸引される

という指標で行います。そのままシリンジが動かないようにしっかり把持してガイドワイヤーを挿入してもよいですが、ガイドワイヤーが静脈壁にあたって進みにくい場合があるので、挿入を容易にする目的で穿刺針とシリンジを倒すように角度を浅くしてもよいでしょう。

このとき、針が脱落したり後壁を貫通したりしないように常に先端が静脈内の中央にあることを確認しながら行います。血液の吸引が途絶えていないこともあわせて確認します。

穿刺針が血管前壁を穿通し、画像上明らかに先端が血管内にあように見えるのに血液が引けてこない場合は、前壁がたわんでいるだけで実際は穿刺されていないか、穿刺針内に血栓、組織片などが詰まっていることが考えられます。慎重にガイドワイヤーを挿入し、X線透視下で血管に沿って抵抗なく進めばよしとします。なんらかの懸念がある場合は血管内留置を再確認します(ガイドワイヤートラブルの項参照)。ガイドワイヤーも抵抗があって進まない場合、中枢側で血栓閉塞していることが考えられ、中止すべきでしょう。

静脈穿刺の確認指標

CVCの合併症では、動脈誤穿刺から重大事故に進展するケースが多く見られます。動脈誤穿刺を予防するのは当然ですが、血管穿刺後に動静脈の区別をし、動脈誤穿刺の場合は早期に発見することが大切です。ただし絶対に確実なたったひとつの方法は存在せず、下記のようないくつかの方法を組み合わせることで確認します。それぞれ特徴や注意点があります。確信が持てない、疑わしい所見があれば、確実に動脈誤穿刺を除外できる所見が得られるまで先のプロセスには進まないことが重要な安全対策になります。

指標1:吸引血液の色調を見る

通常、動脈血は鮮血で静脈血は暗赤色である。ただし酸素化の状態により色調は変化し、低酸素状態だと動脈血でも静脈血に見え、酸素吸入下でpO2が高値であると静脈血でも動脈血に見える。また、吸引したシリンジ内部に生食やヘパリン生食が多いと吸引血液が希釈され、動静脈の区別がつかなくなる。色調での判断は信頼度は低い。そのため穿刺時には穿刺針に接続したシリンジ内に生食やヘパリン生食は極力入れない方が良い。個人的には早期の血栓形成予防のためではあるが、ごくわずか(0.1~0.2ml)のヘパリン生食を入れて穿刺している。

出典:必ず上手くなる!中心静脈穿刺 森脇龍太郎、中田一之 編 羊土社 2007年 p136

指標2:吸引血液の拍動性逆流の有無を見る
通常、吸引した血液が拍動性に勢いよく逆流してくれば動脈と判断する。ただし、心不全などでCVPが上昇していると静脈血でも動脈のように激しく逆流することがあるため誤認することがある。逆に低血圧やショックだと動脈でも拍動性逆流が見られないため、動脈誤穿刺を発見しにくくなる。このように患者の状態と関連付けて評価する必要があり信頼度は低い。

指標3:血液ガス分析(BGA)を評価する
同時に別部位から動脈血を採取し比較する必要があり、確実性は高いが評価に時間がかかる。

指標4:圧ラインに接続する
動脈波形か静脈波形かを見ることで区別する。波形の特徴・見方をあらかじめ知っておく必要がある。専用器材の準備が必要であるため時間がかかる。きちんと評価できれば信頼性は高いが、ルーチン化、システム化しにくい。

指標5:エコーで評価する
静脈穿刺の瞬間を確実に評価できれば信頼性は高い。ポストスキャンによりガイドワイヤーの静脈内留置を確認することも有用。技術が獲得されれば確実性は非常に高い。

指標6: X線透視下操作
ガイドワイヤー挿入時、その走行から動静脈を区別できるため確実性が高い。ただし動静脈の解剖学的な走行の違いが見分けられる知識があることが前提条件となる。またX線透視の扱いに慣れていること、透視室・血管造影室が利用できる環境で実施していることが要件となる。

実録:動脈誤穿刺
急性心筋梗塞から心室中隔穿孔を起こし、緊急手術となった高齢女性です。術後経過は心不全傾向が遷延し、NPPVとハイフロー・ネーザルカニュラでの呼吸サポートからやっと離脱しましたが、ハンプとドブタミンが切れないという状況でした。右内頚からのCVは留置期間が長くなっていましたが、まだ長期にCVカテーテルが必要な状態でしたので、ICU内で右鎖骨下_腋窩静脈穿刺でダブルルーメンCVカテーテルに入れ替える計画としました。肥満・浮腫で穿刺自体難しいなと思っていると、エコー上でも右腋窩動静脈の走行がやや変わっており、静脈が動脈の真下に重なってから上に上がってきているようでした。肥満のため、圧迫では静脈は虚脱せず、カラーパワードプラでもはっきりと動静脈の脈動の違いは見極められませんでした。ただ短軸像は普通に動静脈が二つの円で並んでいたので、通常通り右尾側が腋窩静脈、左頭側が腋窩静脈と判断し、右側の静脈を短軸像で穿刺しました。1回の穿刺で成功し、バックフローもしっかりあって、ガイドワイヤーを入れようとスライダーをYサイトに接続したとたん!強い逆流が来ました。あたかも動脈穿刺したかのように・・・。心不全傾向だからCVPも高めでそれで強いバックフローになったんだろう。このままカテーテルまで入れてしまうか。と、イージーに考えてしまいそうになりましたが、「なにかしらのおかしい点があったら無理しない」という原則にのっとり、やり直すことにしました。針を抜いてシリンジ内の引けた血液をみると、やはり鮮紅色です。穿刺した血管は位置的には静脈で間違いないのに・・・?しばらく刺入点を圧迫した後、エコーで再度観察してみると、静脈の真上に1本、見逃していた動脈の枝が渡っているようなのです。これを穿刺したのか。それなら合点がいく。ならば次はこれを穿刺しないような穿刺法と刺入点にすればよいはず。と思い、再度エコーで刺入点を検索していると、どうもおかしい。下から上がってきているのは動脈で、それが静脈と交差しているようにも見える。でも拍動性ははっきりしない。壁の厚みでも区別できない。ドプラはカラーでないために血流の方向は確認できない。相変わらずカラーパワードプラでは拍動性の違いは区別できない。圧迫しても肥満のためか両方虚脱しない。どうする?動静脈の位置逆転のanomalyか?しかし確信が持てません。困りました。中止しようか。ただじっと見ていると、左の血管のほうがわずーかに呼吸性変動があるようでした。こっちが静脈じゃないか。確信は正直持てませんでしたが、ニードルガイド使用長軸像穿刺で再度穿刺してみることにしました。1回で成功し、逆血はさっきよりも暗い色調です。ガイドワイヤーの接続でも強い逆流は来ませんでした。やはりこっちが静脈か。ほかに動静脈を区別する方法は?めったにやりませんが思い出しました。シリンジ内の逆血を血液ガス分析にかけました。ほぼ同時にA lineからの動脈血も分析にかけました。数分、ガイドワイヤーを入れて刺入部を圧迫止血したまま待ちました。結果、pO2は33.3と121.6mmHg(ネーザルカニュラ3L投与下)でした。これで今穿刺した血管は静脈だとやっと確信が持てました。カテーテルは15cm固定とし、胸部レントゲン写真ではカテーテル先端位置は若干浅かったものの、良好でした。エコーの機能不足、プレスキャンの検索不足であやうく腋窩動脈カニュレーションになりそうでしたが、原則に立ち返りトラブルシューティングできた例です。ほっとしました。動脈誤穿刺というよりも、狙って動脈を刺したということになってしまいますが・・・。動脈カニュレーションになってしまったら、安全に抜去するには心外にコンサルトしなければならないところでした。こうした腋窩動静脈のanomalyは、経験上は0.3~0.5%くらいです。この地雷はホントわかりにくかったです。あやうく踏みそうになりました。というか半分踏んでしまいました。こんなトラップはまれですが、初心と基本を忘れずいつも用心すべきであることを肝に銘じました。なお、穿刺した動脈の部位は鎖骨の裏(鎖骨下静脈)ではなく、胸壁の上(腋窩静脈)なので有効な圧迫止血は可能した。穿刺針も22Gと細く、前壁穿刺であったので、実際血種形成はありませんでした。

空気塞栓予防

血管穿刺からカテーテル挿入後までのプロセスのどこかで、長時間、穿刺静脈が大気圧に開放されると空気が静脈内に引き込まれ、空気塞栓を発症することがあります。引き込まれた空気が多量であると肺循環不全から場合によっては心停止に至り、少量でもASD(心房中隔欠損)やPFO(卵円孔開存)など右→左へのシャントがあると奇異性脳空気塞栓など遠隔他臓器の血流障害を引き起こすなど、重大な合併症に進展する可能性があるため、穿刺時はなるべく大気圧にさらさない注意が必要です。特に吸気時には胸腔内圧が陰圧になり、エアが引き込まれやすくなります。

出典: New England Journal of Medicine 350(19):e17 · June 2004

大径口の穿刺針を使用するスルー・ザ・カニュラ法の場合はリスクはさらに大きくなるため、細径針セルジンガーキットの使用が強く推奨されます。

同じ16GのCVカテーテルを挿入するのに、セルジンガーキットとスルー・ザ・カニュラキットの穿刺針の径の差は歴然としています。その侵襲性の差も明白です。

穿刺回数と合併症発生率とは密接な関係があることは古くから知られており、多数回穿刺を回避することはCVC手技の重要な課題となっています。ランドマーク法よりもエコーガイド下穿刺の確実性は高いというデータが確定していますが、それでもできるだけ1回の穿刺で成功するような技術が要求されます。

一人の術者が何回まで穿刺を許されるかは自施設のコンセンサスによると思いますが、多くの施設では3回失敗すれば交代することを推奨しています。これを、「スリーアウト、チェンジ」 と、わかりやすい標語で呼んでいます。ちなみに、多数回穿刺するとそれだけで長時間の処置になりやすいことも大きなマイナスポイントです。

=MEMO=

Complications and Failures of Subclavian-Vein Catheterization
Paul F. Mansfield, et al N Engl J Med 1994; 331:1735-1738

  • 合併症発生率:穿刺回数1回 4.3%, 2回10.9%, 3回以上 24.0%
  • 最も強力な合併症の予測因子: カテーテル留置の失敗(成功した場合7.2%,失敗した場合63.5%)