原因・機序

  • カテーテル挿入時に先端が胸腔内に留置された状態で輸液を開始する。
  • カテーテル留置中にカテーテル先端の機械的移動(内頚または鎖骨下から挿入されたカテーテル先端は、成人では頭、首、呼吸によって2cm動く)や高浸透圧・強アルカリ性・強酸性輸液の刺激などにより血管壁がびらん・壊死・穿孔しカテーテル先端が胸腔に逸脱した状態で輸液する。
  • カテーテル先端が奇静脈に迷入した場合、穿通しカテーテル先端が胸腔に達することがある。なお、奇静脈への迷入はX線透視下操作でも判定しにくい時がある。
  • カテーテルが穿通はしていないが高浸透圧輸液のため血管壁を輸液が透過することがあり、それが胸腔に貯留する。(カテーテル先端が静脈壁に近接していると血管内皮細胞障害から血小板の凝集と凝固カスケードの活性化から血栓が形成され、カテーテル先端が静脈壁に固着するようになり、高浸透圧性薬剤の持続的な接触により輸液が血管外に漏出する)
  • カテーテル先端が縦隔内に穿通した場合、両側の水胸となる場合がある。
  • カテーテル留置後数日してから発見されることが多い。
  • 女性、小児・幼児・新生児など細径の静脈ではリスクが高い。

合併症が発生したことを示す所見

  • カテーテル留置時に血液の逆流が見られない。
  • 呼吸循環動態の悪化がみられる
  • 呼吸苦、胸部不快感、頻呼吸、呼吸補助筋を使用した呼吸、呼吸音の減弱、肺野の捻髪音などの症状が出現する。
  • X-p・CT・エコーで胸腔内の液体貯留を認める。
  • CTではカテーテル先端が胸腔または縦隔内にあることが描出される。
  • 縦隔内に穿通した場合は縦隔の拡大がみられる。
  • 胸水の試験穿刺で穿刺液の組成が輸液内容と同様である。

鑑別・検査

  • X-p、CT、エコー、試験穿刺、血管造影によるカテーテル先端位置確認

起こりうる臨床経過

  • 多量に輸液が胸腔内に注入された場合、緊張性の水胸からショックまたは呼吸不全となり致命的となりうる。
  • 呼吸不全、感染性縦隔炎などに進展し致死的になりうる。
  • 輸液が抗がん剤などの刺激性薬剤であった場合、胸膜の炎症が生じる可能性がある。

対処・拡大防止措置

  • ガイドワイヤー挿入後にエコーで経路を確認し、静脈内であること、ガイドワイヤーが後壁を穿通していないこと=血管後壁に沿ってパラレルに留置されていることを確認する(プレスキャン)。
  • 胸腔内輸液を疑えばただちに輸液を中止する。
  • 多量に貯留していればドレナージする。
  • 重症であればICUへの移送を検討する。
  • カテーテル先端位置をX-pで経時的に評価し、穿通していないことを確認する。
  • CVカテーテル留置中に原因のはっきりしないショックが生じた場合、胸腔内輸液の可能性も考慮し、もしそうであった場合、既存のCVカテーテルからの急速輸液はかえって状態を悪化させうるため、注意する。

合併症の重篤度

  • 5:死亡する確率が多分10%以上

予防法

  • 上半身の左側からのカテーテル挿入では、カテーテル先端が壁当たりしやすく静脈壁を穿通するリスクが高いことに注意し、できるかぎり右側を第一選択とする。
  • カテーテル挿入後は、日常生活動作以上の過剰な上肢・頚部の運動(体操、キャッチボールなど)は避けるように患者に指示する。
  • 穿刺時、十分で容易な血液の逆流を確認する。
  • X-p等でカテーテル先端が血管壁に強く押しつけられていないことを慎重に確認する。
  • 静脈内留置を確信できないときはCTを撮影する。
  • カテーテル挿入長が容易に変化しないように固定する。
  • カテーテル先端位置を適正化するためにエコーガイド下およびX線透視下でのCVC実施が推奨される。

院内準備体制

  • 患者の状態変化に即応できる体制があること。
  • 迅速に画像検査ができること。
  • 迅速に穿刺ドレナージができる体制・医師の常在があること。
  • 院内急変対応システムが常時稼働していること。
  • ICU部門があること。

参考資料

  • 胸腔内輸液:在宅TPNの患者に対して外来で右鎖骨下静脈穿刺でCVカテーテルの入れ替えを実施。穿刺は困難で長時間の試行の末、血管内に挿入されたと誤認し帰宅。その後2日分のTPNが右胸腔に投与されショックで救急搬送。縦隔の右方偏位あり。緊急ドレナージ(約4000cc排液)で救命された。

 

  • 上大静脈の穿通リスク:カテーテル先端が上大静脈の血管壁に押し付けられることにより、時間経過とともに穿通リスクが生じる。

 

  • カテーテル先端が血管壁に当たっていると、上肢の運動にともなうカテーテル先端の動き、心拍や呼吸によるこすれ、高浸透圧性輸液/薬剤による刺激、などにより血管壁がerosionとなり、最終的に穿通するリスクが発生する。特に左側からの挿入では、カテーテル先端が壁当たりしやすいのでリスクが増大する。