原因・機序

  • 鎖骨下・鎖骨上・頚部からのアプローチで、試験穿刺針又は本穿刺針の針によって肺の臓側胸膜以深を穿刺し、胸腔内に空気が漏出・貯留する。
  • 内頚静脈穿刺で、体幹に近い部位または浅い穿刺角度で深く穿刺し、肺尖を穿刺する。
  • 鎖骨下または鎖骨上穿刺で長い穿刺針を深く穿刺し、肺を穿刺する。
  • 鎖骨下穿刺CVCで人工呼吸器管理下のほうが非人工呼吸器下よりも気胸の発生率が高くなるというデータはない。
  • 肺が過膨張となっているCOPD患者では、肺を穿刺しやすいので相対的に気胸のリスクは高い。
  • るいそう患者では体表面から胸腔までの距離が短いため相対的に気胸のリスクは高い。

合併症が発生したことを示す所見

  • 穿刺時に空気の吸引がみられる。
  • 胸痛・呼吸困難・咳・胸部不快感などの自覚症状がある。
  • 頻呼吸、頻拍、皮下気腫、非対称な呼吸音、穿刺側肺の呼吸音の減弱、打診で穿刺側が鼓音などの身体所見がある。
  • sO2低下、BGAでpO2 低下、X線透視・胸部X-p・胸部CTで穿刺側肺の虚脱所見、胸壁のエコーでsliding signの消失などの検査所見がある。ただし、臥位・胸部正面単純X-pの気胸の診断感度は低い。
  • 緊張性気胸に進展すればその所見(血圧低下、胸郭運動が非対称、気胸側胸郭の過膨張、頚静脈怒張、低酸素血症)が現れる。

鑑別・検査

  • 身体診察、生体モニター、X線透視、胸部X-p(臥位A-Pだとわかりにくく、座位、側臥位でないと診断できない場合がある)、胸部CT、エコー、BGA

起こりうる臨床経過

  • 陽圧換気下での発生は緊張性気胸に進展しやすく心外閉塞性・拘束性ショックから致死的になる場合がある。
  • 呼吸不全患者では呼吸不全が重症化する場合がある。
  • 数時間以上経過後に判明する遅発性気胸となる場合がある。
  • 両側からの穿刺を試みた場合、両側気胸となる場合がある。

対処・拡大防止措置

  • 穿刺時に空気の吸引がみられればただちに抜針する。
  • 各種検査で気胸の程度を評価し、生体モニターでバイタルサインを経時的に観察・評価する。
  • 重症化した場合、チェストチューブやアスピレーションキットで脱気・ドレナージ(前胸部から)する。
  • 緊張性気胸に進展すればただちに脱気する。
  • 陽圧換気化では陽圧(PEEP等)を減弱する。
  • 重症ならICUへ移送し全身管理する。
  • X線透視下でCVCを実施すればただちに重症度が判定でき、緊張性気胸への進展を早期に発見できる利点がある。

合併症の重篤度

  • 4:死亡する確率は多分10%以下だが死亡する例がある
  • 鎖骨下穿刺からの気胸の発生率は1%以上

予防法

  • 多数回穿刺を回避する(3回不成功なら術者交代を推奨=three out change rule)。
  • 緊急時のCVCはリスクが高いので、適応は慎重に検討する。
  • 傷害程度を抑えるため太い径の穿刺針は避ける。
  • 呼吸不全患者、陽圧換気中の患者では鎖骨下穿刺は避ける。
  • 片側肺に機能不全がある場合、傷害の深刻化を防ぐため健側からの穿刺は避ける。
  • 可能ならエコーガイド下穿刺で実施し、穿刺には基本的に短針を使用する。
  • 両側気胸予防のため、一側で失敗しても同日に対側の穿刺はしない。
  • 内頚静脈穿刺では肺尖穿刺を防ぐため、体幹に近い刺入点や浅い刺入角度は避ける。
  • 安静保持困難な患者では誤穿刺のリスクが高いためCVCは適用しないか、安静を図ってから実施する。
  • 以前の手術、外傷、放射線治療、瘢痕、変形、拘縮、胸郭出口症候群などのリスクファクターの有無を検討する。

院内準備体制

  • 生体モニター装着下でCVCを実施する。
  • 気胸の診断と治療ができる医師が常在している。
  • 気胸の診断と応急脱気処置ができる設備・資機材がある。
  • 院内急変対応システムが常時稼働していること。
  • ICU部門がある。

参考資料

  • 鎖骨下穿刺をランドマーク法で実施。カテーテルは挿入されたが、のちに気胸が判明。

  • 人工呼吸器管理中に、ランドマーク法で右鎖骨下穿刺をトライ。10回以上の多数回穿刺を繰り返した。
  • 右鎖骨下静脈のカニュレーションは結局失敗し、右内頚静脈に変更し成功。事後の胸部X-pで右気胸が判明。
  • 多数回穿刺は合併症発生のハイリスク要因。

  • 人工呼吸器管理中に左鎖骨下穿刺し(18Gの長針金属針使用)、カニュレーションは成功(カテーテル位置異常あり)したが、直後から血圧が低下傾向となり緊張性気胸を疑いPEEPを下げた。胸部X-p撮影時には左の気胸、縦隔の右方偏移、右肋骨横隔膜角(CPアングル)の深い切れ込み(deep sulcus sign)あり、緊張性気胸と判断し、緊急脱気とチェストチューブ留置を行い呼吸循環は安定した。

  • 鎖骨下穿刺で一側で穿刺に失敗し、直後に反対側から穿刺を試行した場合、このような両側気胸となるリスクが発生する。
  • 急激な呼吸不全となり短時間で致死的となる可能性がある。