原因・機序

  • 鼡径部からのアプローチで、大腿動脈や周辺の動脈(外陰部動脈など)の誤穿刺や血管損傷から後腹膜に出血して貯留する。
  • 抗凝固療法中、凝固異常、出血傾向では重篤化する場合がある。
  • 鼡径靱帯付近あるいはそれより頭側から穿刺挿入を行って出血した場合に後腹膜血種となるリスクが高くなる。特に動脈穿刺した場合は重篤化しやすい。
  • 細い静脈(ex.左上行腰静脈)に迷入したカテーテルから輸液ポンプを使用し、高浸透圧性の輸液(ex.高カロリー輸液)を投与することで血管壁が損傷し後腹膜に出血する。

合併症が発生したことを示す所見

  • 鼡径部からのCVC実施時に動脈穿刺した痕跡がある。
  • 下腹部の膨隆、疼痛(神経の圧迫症状)が現れる。
  • ショック症状が現れる(循環血液量減少性ショック)。
  • 予測外の貧血やHt低下が見られる。
  • 腹部単純CTやUSで後腹膜に液体貯留を認める。
  • 腹部造影CTや血管造影で後腹膜への血管外漏出が見られる。
  • 腹部単純レントゲン写真で腸腰筋陰影が消失、腸管の偏位が見られる。
  • 突然の尿意が現れる。
  • 直腸診でmassを触知する。

鑑別・検査

  • 血液検査、腹部CT、血管造影、エコー

起こりうる臨床経過

  • 貧血、循環血液量減少性ショック、出血死。
  • カテーテル挿入後数日以上経過してから発覚することがある。
  • カテーテル挿入後、かなりの日数を経過後にカテーテルによる血管損傷が発生することがある。
  • 大腿神経の圧迫症状
  • 血腫の感染
  • 麻痺性イレウス

対処・拡大防止措置

  • バイタルサインのモニタリング、経時的な血液検査、画像検査
  • 輸液、輸血、止血剤投与
  • 血管塞栓術
  • 血管内治療
  • 血管外科による止血術

合併症の重篤度

  • 4:死亡する確率は多分10%以下だが死亡する例がある

予防法

  • エコーガイド下穿刺による動脈穿刺の回避
  • 後壁穿刺、多数回穿刺の回避
  • 出血性合併症のリスク評価を事前に行い、リスクが大きければ穿刺挿入部位などの計画を再検討する。
  • 鼡径からのアプローチでは刺入点を体幹に寄せ過ぎない
  • 刺入角度は45°程度とし、それより小さくしない(静脈の刺入点がより体幹寄りになる)
  • 輸液ポンプを使用して輸液する場合は、細静脈への迷入を極力除外すること。特に左大腿静脈アプローチの場合、左上行腰静脈への迷入について十分注意する。単純X線写真で少しでも疑わしい場合(総腸骨静脈のラインよりわずかに外側によっているなど)は、CTで評価する。

院内準備体制

  • CVC実施時にUSが使用できること。
  • ICUがあること。

参考資料

  • 鼡径からのアプローチで外陰部動脈誤穿刺による持続的出血と後腹膜血種

 

  • 左大腿静脈損傷による後腹膜血種

 

  • 左上行腰静脈への迷入例(森田ら. 日本腹部救急医学会雑誌. Vol.28(3), 2008)