原因・機序

  • 留置カテーテル周囲に血栓が形成される。
  • CVカテーテルによる機械的刺激や血管炎から血管内膜が障害され、サイトカイン放出、血液凝固システムの活性化によるフィブリン形成を経て血栓が形成され増大する。
  • カテーテル留置による異常な血流が渦、乱流またはうっ血を引き起こすと、血液の層流が乱れ、血小板が血管壁と接触したままになる。 また、乱流は内皮損傷を引き起こし、組織因子の放出を引き起こす可能性がある。
  • 頚部など可動部からのカテーテル挿入は、血管壁に対する機械的ダメージが大きくなるため、血栓ができやすいことが示唆されている。
  • 大腿静脈アプローチではリスクが高いのでCVCの翌日でも発生し得る。
  • 男性、カテーテル位置異常、バンコマイシン投与はリスクファクターとなる。
  • 肺動脈カテーテル(Swan-Ganzカテーテル)の遠位端付近に血栓が形成され、そこから下流が肺梗塞になる。
  • 担がん患者のカテーテル関連の血栓症のリスクは高く41%以上。
  • カテーテルによる静脈血流のうっ滞により脳静脈血栓症を来すことがある。
  • PICC留置による血栓症の頻度は他のCVカテーテルデバイスと比べて高い(5FrダブルルーメンだとDVTのオッズ比は7.54、6Frトリプルルーメンだと19.50;RS Evans,  et al. Risk of symptomatic DVT associated with peripherally inserted central catheters. Chest, 138 (2010), pp. 803-810)。
  • PICCではcatheter-to-vein ratioが45%を越えるとDVTのリスクが上昇する(血管径に対してカテーテル径が45%以下が望ましい=なるべく細いorシングルルーメンが望ましい)( UpToDate Peripherally inserted central catheter(PICC)-related venous thrombosis; last updated: Apr 25, 2018)。

合併症が発生したことを示す所見

  • カテーテル留置領域の腫脹,浮腫、発赤,紅斑、疼痛、知覚障害が見られる。
  • 点滴の滴下不良がみられる。
  • 上大静脈症候群(頭頚部・上肢の腫脹、頭痛等)が現れることがある(血栓症1000件あたり1件)。
  • リンパ流の障害から乳び胸となる場合がある。
  • 肺塞栓が発生することがある(低酸素血症、頻呼吸、頻脈、低血圧などの症状が現れる)。
  • 下肢超音波検査で深部静脈血栓を認める。
  • D-ダイマーが上昇する。
  • 脳静脈血栓症となった場合、頭痛、けいれんなど頭蓋内圧亢進にともなう症状やその他の巣症状を呈する場合がある。

鑑別・検査

  • 肺血流/下肢血流シンチ、胸部造影CT、心エコー、体表エコー、下大静脈造影
  • MRIで脳静脈血栓症が指摘される。

起こりうる臨床経過

  • 下肢では静脈還流が阻害され、浮腫・疼痛・熱感の原因となる。
  • 上肢では乳び胸、肺塞栓、上大静脈閉塞からの上大静脈症候群の原因となる。
  • 上大静脈閉塞⇒乳び心嚢水⇒心タンポナーデの経過をたどる可能性がある。
  • 重症肺塞栓に進展し、呼吸循環不全から突然死する可能性がある。
  • CRBSIのリスクが上昇する。
  • カテーテルが血栓で血管壁と密着すると、血管外漏出の原因となる。
  • 右心房内に血栓の塊が形成されることがある。
  • 椎骨動脈カニュレーションから動脈血栓症となり脳幹梗塞に進展する可能性がある。
  • 脳静脈血栓症から死亡に至る場合がある。
  • 上大静脈症候群を呈する(頭頚部の腫脹、呼吸苦、咳、上肢の浮腫、赤ら顔、嗄声、失神、めまい、頭痛、混迷、脳血管障害等)。
  • 血管内の血栓は感染のリスクを高めると考えられている。

対処・拡大防止措置

  • CVC実施前に血管内に血栓がないかUSで見える範囲で検索する。存在していれば同部からの挿入は中止する。
  • 血管内の血栓がUS上どのように描出されるか、あらかじめ理解しておく。
  • カテーテルを抜去する。
  • 抗凝固療法を開始する。
  • 下肢静脈に血栓が存在している場合は下大静脈フィルター留置措置を検討する。
  • 重症例では血栓溶解療法を行う。
  • 超重症例では外科的血栓摘除術を検討する。
  • SCVステントを検討する。

合併症の重篤度

  • 4:死亡する確率は多分10%以下だが死亡する例がある
  • PICCによる血栓症の発生率は5%

予防法

  • カテーテル先端位置を正しい位置(血管壁に接触しない位置)におく 。
  • 血栓形成の頻度が高い大腿静脈からは原則として挿入しない。
  • 鎖骨下からのアプローチが最も頻度が低い。
  • CVを短期に使用する患者ではヘパリンの投与、長期に使用する患者ではワルファリンの投与を検討する。しかし推奨しないとする文献もある。
  • ルーチンの生食あるいはヘパリン生食でのカテーテルのフラッシュでは血栓症の予防には十分でない。
  • 血栓症を疑えば早期にエコーやシンチで評価する。
  • 静脈血栓症の既往、高乳酸、低HDL、低アルブミンは予測因子となる。
  • 「もやもやエコー」は血栓形成のリスクととらえ、同部からの挿入は避ける。
  • 肺動脈カテーテルの長期留置は避ける。

院内準備体制

  • 迅速に画像診断できる体制がある。
  • ICUがある。
  • 循環器内科に迅速にコンサルテーションできる体制がある。

参考資料

 

 

  • 肺動脈カテーテルから発生した血栓により肺梗塞となった症例

 

 

  • 造影された下大静脈内の巨大血栓とIVCフィルター留置

  • CVカテーテルが抜去後早期から24時間までにエコーで調べた198人(鎖骨下:139人、内頚:59人)の調査で、全体の47人(24%)にカテーテル関連の血栓症を認め、70%は内頚、30%は鎖骨下だった。内頚59人中33人に血栓を認めた(鎖骨下は139人中14人)。鎖骨下と比較した内頚からの挿入による血栓症のOR(オッズ比)は11.332だった。頚部の動きに伴いカテーテルが動くことで血管壁に機械的ダメージを与えるのが、血栓を作りやすい理由かもしれない。(Hrdy O, Strazevska E, Suk P, et al. Central venous catheter-related thrombosis in intensive care patients – incidence and risk factors: A prospective observational study. Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub 2017; 161:369373)
  • 5043件のCVラインを調査し、カテーテル関連血栓症は3.55%に見出された。リスクファクターは50歳以下、PICC留置(ハザード比7.48)、カテーテル関連血栓症の既往だった。(Ellis M et al. Catheter-Related Thrombosis Incidence and Risk Factors in Adult Cancer Patients with Central Venous Access Devices. Blood (2017) 130 (Supplement 1): 2096.)
  • PICCに関連する深部静脈血栓症のリスクとCVCに関連する深部静脈血栓症のリスクを比較した11件の研究のメタアナリシスは、PICCが深部静脈血栓症のリスクの増加と関連していることを示した(OR 2・55、1・54–4・23、p <0・0001)。(Chopra V, Anand S, Hickner A, et al. Risk of venous thromboembolism associated with peripherally inserted central catheters: a systematic review and meta-analysis.  Lancet 2013;382:311325)
  • 490例中27例(5.5%)でPICC関連深部静脈血栓症を認めた。有意なリスクファクターとして2回以上の穿刺試行(OR 2.61, 95%CI: 1.12–6.05)とフルオロピリミジンを含む化学療法の投与が検出された。(D. Jones, K. Wismayer, G. Bozas, J. Palmer, M. Elliott, A. Maraveyas The risk of venous thromboembolism associated with peripherally inserted central catheters in ambulant cancer patients. Thromb J, 15 (2017), p. 25)
  • 静脈血栓塞栓症の発生頻度は、妊娠中が非妊時より4倍高く、肺塞栓の43-60%は産褥期に発生し、先進国では母体死因の首位は肺塞栓である。左腸骨静脈は右腸骨動脈と交差し圧迫されているため、深部静脈血栓症のうち70-90%は左下肢に発生する(Marik PE , Plante LA . Venous thromboembolic disease and pregnancy . N Engl J Med 2008 ; 359 ( 19 ): 2025 – 2033 . )
  • 挿入から6日後に右上肢の疼痛と腫脹で発見された、右内頚静脈から右腋窩静脈へ迷入したCVカテーテル(Ji Su Jang et al. Right axillary vein thrombosis due to malpositioning of a central venous catheter via the internal jugular vein.  Korean J Anesthesiol 2012 November 63(5): 479-480 )。※カテーテル先端から吐出された薬液が、CVカテーテルで内腔が狭くなった血管内に高濃度で長時間滞留することで血栓が形成しやすくなるのかもしれない。このように血流と反対方向に先端が向いたCVカテーテルは、血栓症のハイリスクであるという認識が必要で、早期に発見し修正または抜去が望ましい。

 

  • 4年にわたってカフ型透析用カテーテルの入れ替えで透析を行っていた患者に発生した、上大静脈閉塞からの乳び胸と乳び心嚢水の例(Livesay, James, Isaac Biney, and J. Francis Turner. “Chylothorax and Chylopericardium: A Complication of Long-Term Central Venous Catheter Use.” Case reports in pulmonology 2019 (2019).)