原因・機序

  • カテーテル先端が細い分枝に迷入するか血管壁へ接触していることで、浸透圧の差やカテーテル先端の機械的刺激と高浸透圧性輸液による化学性の刺激が血管壁のびらんを引き起こし、それにより血管外に輸液が漏出する。
  • 細静脈(腰静脈など)に迷入した状態で高浸透圧性輸液(高カロリー輸液)などをポンプを使用して投与することで、浸透圧差で血管外漏出を来す。
  • 化学療法薬、昇圧剤、濃厚電解質液、高浸透圧液などが血管外漏出の原因となりやすい。
  • 埋め込み型CVカテーテルのポートに刺した針が外れ、輸液が血管外に漏出する。
  • カテーテル先端が機械的に血管壁を穿孔し輸液が血管外へ漏出する。
  • ガイドワイヤーが血管壁にトラップされたままダイレータまたはカテーテルの挿入により血管の裂傷を引き起こす。
  • ダイレーター挿入時にガイドワイヤーごと血管を穿通することがある。
  • 内胸静脈または内胸動脈が穿通した場合は血胸となることがある。
  • 縦隔に漏出し縦隔炎になることがある。
  • カテーテルの挿入長が浅く、遠位部ポートが血管外に出ていることで輸液が血管外に漏出する。
  • 浮腫・肥満・体動によりカテーテルが皮下で抜けてしまう。
  • 輸血・輸液のポンピングで血管壁を穿孔する。
  • ステロイド内服による血管脆弱性がカテーテル穿孔に寄与することがある。
  • PICCでも同様の機序で発生することがある。
  • PICCは上肢の運動でカテーテル先端が移動する範囲が大きいため、血管壁に対して物理的刺激が大きくなりやすい。
  • 細い静脈への迷入(上肋間静脈など)から穿孔することがある。

合併症が発生したことを示す所見

  • 出血性ショックとなる場合がある。
  • 胸腔内に多量に漏出した場合、呼吸循環不全となる場合がある。
  • 皮下に漏出した場合、痛み、不快感、紅斑などが出現する。
  • 縦隔に漏出した場合、呼吸困難感、胸痛、頚部腫脹、発熱、表在静脈怒張などの症状が出現する。
  • 単純X-p、エコー、CTなどで胸腔・縦隔・心のう・皮下などに液体貯留を認める。
  • 血管造影で血管外に漏出した造影剤を認める。
  • 心嚢内に漏出していた場合、輸液負荷で循環動態が逆に悪化する。
  • 投与した薬剤の期待する効果が現れない(筋弛緩薬など)。
  • 圧測定をした場合、典型的な中心静脈圧波形がみられない。
  • 術者が血管損傷のような合併症を想定していない傾向があること、血管外にガイドワイヤー・ダイレータ・カテーテルが進んでもSVC内を進んでいるように見えることから、早期の発見が遅れる傾向がある。

鑑別・検査

  • X-p、CT、エコー、血管造影
  • カテーテルからの血液の逆流がない。

起こりうる臨床経過

  • 漏出した場所によって胸腔内輸液、縦隔水腫、心タンポナーデ、後腹膜水腫などの原因となる。
  • 部位と程度により致命的となりうる。
  • 皮下に漏出した場合、薬剤の傷害性が強く組織のダメージが大きければdebridementや皮膚移植手術が必要となる場合がある。
  • 縦隔への漏出は誤診、診断の遅れを伴いやすく、死亡率も高い。

対処・拡大防止措置

  • 漏出・穿孔部位によっては外科・血管外科にコンサルトし、外科的修復につき検討する
  • 輸液を中止し、カテーテルを抜去する。
  • 必要であれば胸腔ドレナージ、心嚢ドレナージを実施する。
  • 組織のダメージが大きければ形成外科コンサルトの上、ステロイドの皮下注や手術を検討する。
  • 重症化した場合はICUへ移送する。

合併症の重篤度

  • 4:死亡する確率は多分10%以下だが死亡する例がある
  • 動脈損傷の発生率は1%以下

予防法

  • X-pでカテーテル先端の位置異常や微妙なコイリング(分枝に迷入している可能性がある)を見逃さない。
  • 症状・バイタルサインに変化があればX-pなどで確認する。
  • カテーテル先端/遠位側ポートの位置をX-pで経時的に観察し変化がないか観察する。
  • 血管造影室などでX線透視下でガイドワイヤーやカテーテル先端が適切な位置となるように挿入する 。
  • 左側からのカテーテル挿入は、先端がSCVの壁に押し付けられやすいので右側を第一選択とする。
  • 静脈壁の傷害を防ぐため高浸透圧性輸液などは静脈壁と接する可能性がある先端のポートからは投与しない。
  • 肥満患者で鎖骨下からアプローチした場合、上肢の拳上姿勢や拳上運動で徐々に皮下に逸脱しやすくなるので注意する。
  • リスクファクターは、高齢者、女性、基礎疾患、ステロイド治療、細胞毒性薬剤、左側からの挿入、大径のカテーテル、ポリウレタン製カテーテル、長期留置など。
  • カテーテル挿入側の過度の運動は避ける(右上肢からのPICC挿入後に体操やキャッチボールをするなど)。
  • 先端がストレートになっているガイドワイヤーは細い静脈に迷入しやすいため注意する。
  • ダイレーター挿入時、ガイドワイヤーが折れて血管を損傷していないかどうか、頻繁にガイドワイヤーをスライドさせて確認する。

院内準備体制

  • 迅速な画像診断ができる体制があること。
  • 血管修復可能な診療科があること。
  • 血管修復可能な診療科がない場合、外部の診療科と迅速にコンタクトが取れること
  • ICU部門があること

参考資料

  • 血管損傷、血管外漏出:右鼡径からアプローチした透析用カテーテルが血管を損傷し血管外に造影剤が漏出した

 

  • 上大静脈穿通、胸腔内輸液

 

  • ダイレーターによる血管損傷、血管外留置の機序のモデルの一例:ダイレータが長く固いと静脈の屈曲点で穿通しやすい。

 

  • 左内胸静脈の損傷からの血栓閉塞

 

  • 左尺側皮静脈から40cm挿入したPICCが48日後に上大静脈を穿孔し右胸腔と前縦隔に薬剤が漏出した事例(岡澤佑樹, et al. “麻酔導入時の薬剤投与を契機に指摘し得た末梢挿入型中心静脈カテーテルの血管穿孔.” 日本臨床麻酔学会誌 37.2 (2017): 172-175.)

 

  • 先端が左鎖骨下静脈内にあったPICCが血管穿孔し、retropharyngeal spaceと皮下の気腫、喉頭偏位が生じ炎症と感染が生じた例(Licina, Ana. “Airway Compromise due to Retropharyngeal Emphysema–A Rare Complication of an Extravasated Peripherally Inserted Central Venous Catheter.” Case reports in anesthesiology 2019 (2019).)