2021.11.2投稿

10/15に佐久総合病院佐久医療センターの初期研修医1年次14名を対象に、CVC基礎トレーニングを開催しました。当院では初期研修医対象のCVCトレーニングは2005年から開始しています。数年前から、受講者各自の端末を持ち込んでこのwebサイトにアクセスしてもらい、スライドによる解説を聞きながら補足的にサイトを参照するスタイルで行っています。コンテンツは、午前中はプレテストの答え合わせをしながらCVCの手順や注意点、ピットフォール、リスク評価、合併症/事故事例などをひと通り解説しました。安全・確実・迅速なCVCの習得がテーマです。この分野ではエコーに目が行きがちですが、たしかにそれはコア技術ですが、もっと単純で効果的な安全対策は「短針の使用」です。そこを強調しています。

最初にアイスブレイク風に、「プレスキャンをするつもりで、寮生同士の頚部をエコーで観察してみよう」という実習を行いました。エコーガイド下穿刺はほぼエコー技術だと考えていますので、エコーの走査法は重要です。エコープローブの持ち方・当て方、エコーのセッティングの仕方などに注意を向けてもらいます。

個体差、バルサルバ手技による血管径の変化、プローブの当てる角度による見え方の変化など、寮生たちは非常に興味深く観察していました。ここで、「エコーガイド下穿刺では、エコーは左手(非利き手)で走査する」ことを浸透させます。ちなみにこの基礎トレーニングは4つのグループに分けて行いましたが、A,B,C,Dとかのグループ名だと味気ないので、G,H,R,Sのグループに「組分け」しました。そこで、各グループメンバーを「寮生」と呼んでいるわけです(笑)。

当センターではカテーテルキットはコヴィディエン マイクロニードルセルジンガ―キット®を使用していますので、そのシングルルーメンフルキットの新品を開けて、中身のパーツの名称、使い方、特性などを各寮でお互いに教えあって覚えてもらいました。最後に私が各寮をまわって口頭試問しました。使うツールの特性とか使用法を知らないで、CVCという「危険手技」を実際の患者で行うのは罪といえます。なので、このようなキットの確認の機会を作っているわけです。それに物品の名称を知らないと、ナースへの指示が全部「あれ出して」になってしまいます。こうしたことから、かならず物の名称を覚えるように指導しています。実際、こちらで当たり前だと思っていても、使い方や名称を知らなかったりすることがとても多く、こうしたチェックの必要性を改めて感じました。

午後のコンテンツはエコーガイド下穿刺の理論と実習です。リアルタイムエコーガイド下短軸像穿刺の2種(swing scan法、sweep scan法)の解説とシミュレータ実習を行います。穿刺針の持ち方、陰圧のかけ方、プローブの持ち方、プローブを操作して穿刺針を静脈まで誘導する方法などなどを、デモンストレーションしながら相当な時間をかけて解説し、学習してもらいました。もちろん、短針をデフォルトとして実習します。エコーは院内にあるSonoSite iLook25を3台と、汎用機のコンベックスプローブのエコー1台を集めて行いました。

正直、驚きました。シミュレータとはいえ、あの短時間の実習だけでここまでマスターできているとは。短針・鎖骨下穿刺にトライする猛者もいました。メンバーのアドバイスを受けることもありましたが、各寮のエースは非常に説得力のある針先の誘導で、みな短時間で穿刺に成功していました。

手技が終了した後、ほかの3つの寮生から講評をしてもらいます。良かった点や今一つの点を客観的に評価してもらうのです。これはエースの手技に対するフィードバックではありますが、もうひとつの役割としては、講評者は講評した他者を鏡として、自分の言葉で自分を講評していることになります。「自分だったら同じようにできているかな」というセルフフィードバックが行われるからです。おそらくこうした気づきは非常に高い学習効果をもたらすでしょう。

講評後は各エースの勇気をたたえて拍手がわきました。実際、相当なプレッシャーだったと思いますが、研修医同期全員に自分の手技を供覧するなんていうのも、めったにない良い機会になったのではないでしょうか。また、実際には優劣や順位はつけませんでしたが、こうしたある種の競争意識というスパイスが、初期研修医の技術習得には効果的かもしれないな、とも感じた次第です。また、各寮での結束を強め、最終的には研修医全員の結束やコミュニケーションの深度を深める効果もあったような気がしています。ちょっと盛りすぎでしょうか。

80%合格基準のポストテストを行い、全員合格を確認し終了証を配布して終了になりました。アンケートでは、かなり高い満足度と学習効果がうかがわれました。

<自由記載>

  • 今まで先生方がやっているのを何度か見たことがあり、簡単そうに見えたがやってみるととても難しかった。またとても怖い手技だなと実感し改めて勉強しなおそうと思った。
  • 実際のテクニックや手技に関し非常に丁寧にわかりやすくご教授いただき大変勉強になりました。プレテストで予備知識のある状態で、webサイトを使って分かりやすい形式で理解が深まりました。実技の時間がたっぷりあってよかったです。
  • ダイレータ―挿入後の手技をもう少し教えていただけると嬉しいです。長い時間をかけてシミュレータを使っての練習ができてよかったです。
  • 教材があってわかりやすかったです。実習の時間が長くて良かったです。
  • ハリーポッターの寮の設定が良かった。楽しく学ぶことができた。
  • 血管穿刺の瞬間の感触があまりなく、血管に入ったかどうかをエコーで見ていても不安だったので難しいなと思った。
    CVカテを挿入している場面を見たことはありましたが、自分が思う以上に注意すべきポイントがあるのだと勉強になりました。もう少し練習し、自身を付ければ、実際に患者さんにもできるような気がしました。来るべき時に備えてイメージトレーニングし、練習を行うように頑張ります!とても楽しかったです。
  • 実際のシミュレータを使って実習できたことでイメージがつきました。プレテストも事前学習がしやすくてよかったです。毎回ところどころはさんでいただける先生のエピソードが印象に残りました。
  • CVCを行うにあたって、施行前のリスク評価と実際の手順について理解を深めることができた。
  • 楽しみながら学べるように工夫されていてよかったと思います。
  • プレテストを解いた段階では知らない用語も多く何回に感じましたが、経験談や実際にあった話を交えてわかりやすく解説してくださったので流れがイメージしやすかったです。シミュレータを用いて実践できて楽しく学ぶことができました。
  • CVCという手技が多くのリスクがあり、難易度が高いが、指導医の指示のもと訓練を積み経験していきたい。

今回の受講者は特に熱心に集中力を持続させて取り組んでいた印象がありました。ただ、CVCの技術トレーニングということだけでなく、医療行為全般の安全を確保することとはどういうことか、とか、楽しく効果的な教育コンテンツ・研修方法とはどうあるべきか、というような、自分がティーチングスタッフになった時にも役立つようなヒントもつかんでくれたらなおいいと願っていますが、それは高望みというものかもしれません。